第4話 激闘?福引会場?(2) 三つのテント

 何か紙のようなモノがはみ出ていたのだ。

 ――なんだこれ?

 それをつまみだそうとした瞬間、オッサンが怒鳴り声を上げてタカトの手からシースーを奪い取った。

「小僧! これに触るな! 今見たものは絶対に内緒だぞ!」

 って、まぁ、その紙の全貌を見ることはできなかったのですが……

 でも、ちらりと見えたのは幼女のM字に曲がった素足と裸の半身……もしそれが想像通りのモノなら、さすがにそれは犯罪だろ!

 俺なんてアイナチャンの健全な写真集を見てんだぞ!

「エビフリャイ! 最高ぉぉぉぉ!」

 それなのにこいつらときたら……犯罪者か! 今は単純所持だって捕まるご時世!

 絶対にあのNHKが黙っていない!

 奴らに見つかりでもしたら……ワンワンの着ぐるみを着せられて……365日24時間、常にかつ丼を作らされているところを撮影され続けるのだ。

 暑い! 熱い アツすぎるぅぅぅう!

 やかましい! このチンコロ! 黙って働きやがれ!

 お前たちのような変態は、この世で一番の害悪なのだァぁぁぁ!

 だがしかし! 喜べ!

 かつ丼を作るたびにお前たちの心が浄化されていくのだ!

 さぁ! 叫べ! ロリコンどもよ! 

 今のお前たちが求めるモノを!

 心の赴くままに叫ぶのだァぁぁぁぁ!

 「「「かつドン! 最高ぉぉぉぉ!」」」

 かくして、ロリコンどもは隠れキリシタンのように地下で活動を続けることを余儀なくされたのである。

 ちなみに作者も隠れキリシタン…………の家系とは全く関係ございません!

 あっ! そうそう!

 分かってると思うけど、NHKは某放送局の事ではなくてノー・エッチ・カツドんのことだからね!


 というか、源さんの人気って……もしかしたら、このご禁制の紙のせいなのか?

 いつの世の中もランキングに乗り続けるために不正に手を染める……まるでどこぞのweb小説界隈のようである。

 そんなタカトは一瞬、源さんのことを疑った。

 だが、ビン子は素直に源さんの事を創作アート料理界のレジェンドとして慕っている。

 この事をビン子に伝えるべきか……伝えざるべきか……

 どうする……タカト……どうする……

 ――まぁ、別にどうでもいいや!

 そう、今のタカトにとって大切なのはロリロリの写真よりもアイナちゃんの写真なのだ!

 ――アイナちゃぁん~待っててねぇ~

 だが、タカトよ! 安心しろ! 急がなくともお前の目指すアイナちゃんの写真集「狆ころと酢豆腐」は1万本もあるのだ! 絶対に当たるって!


 まぁ、このような屋台以外にもいろいろなイベントが用意されていた。

 例えば、運動場ほどもある広い会場の奥に設置された一つのステージの上では、一番の人気イベント、アイスダンスショーが繰り広げられる!

 夏なのにアイスダンス?

 まぁ、夏だからアイスダンスなのだ!


 そんなステージの上では司会者が声を張り上げていた。

「イケメンアイドル! セレスティーノですッ!」

 待ってましたとばかりにステージの前に群れを成す観衆から黄色い歓声が巻き起こった。

 きゃぁぁぁぁっぁあ♥

 セレスティーノさまぁ♥

 どうやら、このアイスダンスショーの司会は第八の騎士セレスティーノが行うようである。

 というか、コイツ……いろんなところにマメに顔を出すよなwww

 まぁ、もてる秘訣はこういうマメさなのである。

 もてない童貞タカト君はよく見習うように!

 ……って、当のタカト君、アイスダンスショーには全く興味が無いようで、福引の会場をキョロキョロと探していたのだった。

 なので……そんな彼の目にはイケメンアイドル!セレスティーノの姿などアウトオブ眼中!


「元気ですかぁァァァァ!」

 セレスティーノが大きな声を上げると、歓声もまた負けまいと大きな声を張り上げる。

「「「でんきですぅぅぅぅ!」」」

「電気があれば何でもできる! レディースあんどジェントルマン! お待たせしました!」

「「「おおおおおお!」」」


「さぁ恒例のアイスダンスショー決勝戦! 行くぞぉぉぉぉぉ!」

「「「おおおおおお!」」」


「1! 2! 3!」

「「「ダーぁぁぁぁぁッ!!!!!」」」


「前回チャンピオンの登場だぁぁぁぁぁッ!!!!!」

「「「わぁぁぁぁぁぁぁ!」」」

 どこからともなく聞きなれた入場曲が流れてくる。


「そのにらみは子供の金玉をも縮こます! 孤高のソリストにして無敗の女帝! ホテルニューヨークお登勢とうじょうッ!」

 ♪Otoseオトセ! Bom-Ba-Yeボン-バ-イエ

 ♪Otoseオトセ! Bom-Ba-Yeボン-バ-イエ

 ♪Otoseオトセ! Bom-Ba-Yeボン-バ-イエ

 ♪Otoseオトセ! Bom-Ba-Yeボン-バ-イエ

 ♪fightファイッ!!♪フンフン♪fightファイッ!!♪フンフン♪

 ♪fightファイッ!!♪フンフン♪fightファイッ!!♪フンフン♪

 ちゃぁ~ ちゃぁらぁ~ ちゃら~ チャラぁ~♪

 ちゃぁ~ ちゃぁらぁ~ ちゃら~ チャラぁ~♪

 ステージ脇から右手を突き上げたお登勢が堂々とステージに飛び上がった。

 しかも、首にタオルをかけて。

 ヨシモトぉぉぉぉ!

 って、なんで吉本? 普通、ここは「猪木ぃぃぃぃい!」だろうが!


 だって……首に巻いているの……タオルじゃないもん!

 そう、あれは裸の上半身から垂れ落ちているしなびた乳だったのだぁぁぁぁ!

 って、新喜劇の桑原和男さんですか……

 カズオぉぉぉぉ!


「続いて挑戦者の登場だぁぁぁぁ! 予選から連戦連勝! そのすべてを秒で勝ち上った猛者! まさにその姿は新劇の青い巨人!」

 再びステージの上のセレスティーノがひときわ大きな声でシャウトをかましながらステージの左側を指し示した。

 またまたどこからともなく聞きなれた音楽が流れてきたではないか。


 ♪こんなこといいなぁ~ できたらいいなぁ~♪

 ♪あんな夢! こんな夢 いっぱいあるけどぉ~♪

 ♪みんな! みんな! みんな! かなえてみせる~♪

 ♪不思議なユッケで かなえてくれるぅ~♪

 ♪チ●コを自由に食べたいなぁ♪

 ♪「ハイ! ビックリマンチ●コぉ~」♪

 ♪あん♡あん♡あん♡ とっても大好きぃ~ミルクぅチ●コ~♪


 ちなみに、●に何を入れるかはアナタの感性次第!

 作者は決して卑猥なことをかいているわけではないぞ!

 その証拠に最後のフレーズのゴロが合わないだろうがwww

 だ・か・ら! くれぐれも勘違いしないように!

 というか、そもそもこれは新劇ではなくて旧劇バージョンや!

 もう! セレスティーノの旦那はそんなことも知らんのか!

 まぁ、セレスティーノはお子様向けの仮面ダレダーを見ているビン子やタカト達と違ってアニメオタクではないのだ。

 そう大人の男! 一皮むけた大人の男なのだ! って、まだ皮は残っていますけどね……火性チ●コだけにチョコっとねwww

 だからまぁ、知らなくて当然!

 でも、確かに……もうこの曲を知っている時点で逆にオッサンであることが確定なのである……


 だが、まだオッサン セレスティーノのシャウトは続いていた。

 そう、まだ彼女の名乗りが終わっていなかったのだ!

「ホストがよいの金目当て‼ チ●コクリーム大好き女! ヨシ子=ザブットキャップ! とうじょうッ!」

 観客たちの大きな声援にこたえるかのように、ステージのわきから小太りの女がゆっくりと上ってきた。

 うん? ザブットキャップ? どこかで聞いたことがあるような……

 もしかして、この女、ギリー隊長の別れた元嫁か!


 そして、最後にセレスティーノはかっこよくポーズを決めながら正面に振りかえると

「このアイスダンスショーは悪徳商会ルイデキワ家の提供でお送りいたします!」

 キラッ!

 と、定番のコマーシャルを流した。


 ルイデキワ家といえば、ベッツや弟のメキャベッシ、その父親であるモンガがいるところ。

 そして、その家を牛耳るのは家長であり「おでん組」のプロデューサーでもあるペンハーンなのである。

 そんなペンハーンが先ほどから観客席で怒鳴り声をあげていた。

「こらぁ! お登勢! 多額の賞金がかかってんだからね! そんなクソ青い豚に負けるんじゃないよ! 負けたらアドリア海どころか安楽世界に飛ばしてやるからね! 分かってるんだろうね! お登勢!」

 なんと! このアイスダンスショ―の賞金は大金貨5枚500万円!

 それが提供元であるルイデキワ家から支払われるのである。

 これだけあれば……ホストクラブで生チ●コクリームが絞り放題! 飲み放題!

 ヨシ子は、ゴクリと生唾を飲み込む。

 だが、一方、お登勢はフンと鼻で笑っていた。

「安楽世界……上等じゃないかい! 飛ばせるものなら飛ばしてみなよ! 自分で死ぬことすら許されない私たち! 死ねない豚はただの豚さね!」

 そう、お登勢がこの勝負に勝ったとしても、その賞金はお登勢の元には一銭も入らない。

 お登勢はモンガの奴隷……すなわち、ルイデキワ家の奴隷なのだ。

 奴隷が稼いだ金は主のモノ!

 お登勢が稼いだ賞金はモンガのモノになるのである。

 そして、モンガのものはペンハーンのモノ!

 ペンハーンのモノはペンハーンのモノ!

 ということで、お登勢が勝ち続ける限りペンハーンはびた一文も払う必要がないのである。

 というか、そもそも、今この時点でそんな金など用意すらしていない。

 だが、この賞金はアイスダンスショーの必要経費として帳簿にしっかりと記載されるのであった。

 そして、この事によって騎士アルダインへの上納金の計算においてその額が減額されるのである。

 まさに架空経費! 

 ……せこい……せこすぎる……

 それゆえに、ペンハーンはお登勢を必死で応援していたのだった。


 そんな頃、広場のはずれのはずれでタカトはようやく福引を行っているテントを見つけた。

 だが、テントは三つある。

 さらに、その三つのテントからは、地面という茶色い画用紙の上をウネウネと這うかのような、まるで長き蛇にも似た人の列が伸びていたのだった。

 ――さて……アイナチャンの写真集が当たりそうなのはどの列だ?

 って、4等は1万本もあるんだから、どこに並んだって当たるってwww

 だが、タカトはテントの梁に突っ込む蛇の頭を一つずつ念入りに確認しはじめた。


 一番右端のテントの下ではモンガがガラポンの受付をしていた。

 どうやら、経費節約のためにペンハーンにこき使われているようなのだ。

 そんなモンガの脇には食べ残したシースーの山が。

 その数、500個以上……

 先ほどから何やらぶつくさとぼやき続けているモンガは、なぜか左手でズボンの前を押さえ続けていた。

 当然、空いた右手だけで客をさばいているのだが、これがどうにもかなり遅い。

 そのため、モンガのテントの前にはひときわ長い列ができていたのであった。

 だがしかし、よくよく見ると、その列に並んでいるのはオッサンばかり。

 しかも、口の周りには先ほど食べたであろうシースーの米粒がついている。

 そして、どいつもこいつもズボンの前を押さえているのだ。

 って、オイオイ……こいつらみんな犯罪者かよ!

 どうやら、このおっさんたち、ガラポンそっちのけで縦筋たてすじ露里ろり万札まんさつエイの写真をトレーディングしているようなのだ。

 そのエイの中には大金貨5枚以上もするレアものもあるらしい。

 ――見てみたい……いやいや、俺はアイナちゃん一筋だ!

 というか、こんなところに並んでいたら、絶対にNHKノー・エッチ・カツドんに目を付けられる。

 そして、拉致されて365日24時間カツ丼を作らされるのだ……

 アカン……

 オカン……

 絶対にイカン!

 この列に並ぶのは絶対に無しだな……



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