『Eternal15』
「みーくんは遂に15周年を迎えました~」
「そ、そうなのかい?」
いきなり諸手を上げてお祝いされたので面食らう。唐突に十五年がんばってきたことになってしまった。十五歳なんてとっくに通過していたと思っていたのだが、実はそんなことなかったのかもしれない。自分がどう生きてきたのかもまともに把握できない、情けない生き様を恥じたいところだ。
嘘だけど。
「そうだったぜ!」
十五歳と十五周年は少し違う。一歳の子供が十六歳になっても十五周年ではある。あるのか? ある、あるのだ。でもこの理屈だと毎年十五周年を迎えてしまうのだがいいのだろうか。
まぁいいかぁ!
「はいお祝いのケーキ」
「わぁハリネズミみたーい」
ロウソクが四方八方からケーキに突き刺さっている。どこから食べればいいのだろう。しかもロウソクは丁寧に全て点火しているので、さしずめ火だるまケーキといったところか。田舎のヤンキーの花火より大胆かもしれない。斜め下から突き刺さってるやつが特にヤバい。
ロウソク君が少しやる気を失ったらテーブルの敷物が燃え上がるだろう。
「火がゆらゆらしてるね~」
「そうねー、僕らの命もちょっとゆらゆらな感じぃ」
相も変わらず無垢な笑顔でめちゃくちゃやってるなぁ、まーちゃんは。
いい笑顔でケーキに顔を近づけているのはなんでだろうねー。
「吹いちゃ駄目だよ?」
「ふー」
「こらこら~」
僕の前髪が燃えちゃうぞ~。怖いので流石に仰け反った。
いやまったく、本当に油断できない。まーちゃんといると、生きることの難しさを味わえる。
そしてだからこそ、最高に生きているって感じがする。
……そう、思えるくらいになりたいものだった。
「あははは……」
頬杖をつきながら、笑い声がくるくる、中身なく回っては固まる。
僕は嘘、きみも嘘、お祝いも嘘、世界も、嘘。
嘘を何重も塗り直して、味のしないケーキのような毎日を作っていく。本物はそんな僕たちを見て憐れんだり、笑ったり、太陽みたいに遠い場所で安全に笑っているのかもしれない。
それもいいさ。
本物だって言うくらいなら、逃げないで、ずっとそこで輝いていてほしい。
積み重ねた嘘の果てに、いつか辿り着くから。
そうしたら、温かく出迎えてほしいものだ。
嘘も本物も区別がつかなくなるくらい、光って、輪郭をなくしてしまえばいい。
いつかそうなることを、僕はただ祈った。
……それもまた、嘘なのだけど。
まぁ、こんな感じに。
ぼくたちはわりかし、元気に十五周年を迎えているのであった。
というわけで、来年の15周年にまたお会いしましょう。
……あるのか?
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