『大奇跡天才作家と超奇才作家の対談』【再掲載】

 ※この作品は「入間の間」に過去掲載された小説の再掲載になります。



「えぇ、はい録音開始しました……本日はよろしくお願いします」

「はい」

「どうも」

「今回はお二人の対談ということで、好きに話して頂けたらと思っています」

「好きに、と言っても」

「今更なにも話すことがありません」

「え……(二人揃ってこっち見るな)あー、そうですね……お二人は同じ大学に在籍されていたことがあり、その頃から切磋琢磨しあう、いわゆるライバル関係と」

「はぁ?」

「あ、いえそう……ではないのですか?(話に聞いていたとおり美人だな、目のクマ酷いけど)」

「まったく違います。当時から私は大々作家で、こっちは陸から上がる前のミジンコです」

「……貶めているのかもよく分からない例えだ。あんたの作風そのままだな、分かりづらい比喩表現と過剰な文体で、こう、濃いというか。まぁそこがファン層に受けているのか……」

「あ、はは……(ミジンコ)そうでしたね、入学当時はまだ投稿を」

「はい、続けていました。何度投稿しても一次選考も通らなかったので、もう諦めようかと迷っていたところもありましたが……まぁ色々あって、続けていこうと思ったんです」

「なるほど……(その色々を話してほしいのだが、記事にできないし)」

「すべては師匠たる私のお導きと言えるでしょう」

「あ、そうなんですか。お二人は師弟関係……(張っているけど胸うっす)」

「小説の書き方はなんにも教えてくれない師匠だけどな」

「私は放任主義なんです」

「それ、師匠の意味あるのか?」

「早くポテト買ってこい」

「無理矢理作るな! しかもあんたが得する方だけ!」

「(小説の話をしてくれ)あの、少しよろしいですか。××××さん(ミジンコさん)は奇才という評価を世間から受けて、近年頭角を……」

「奇才? じゃあ私はなんですか」

「えぇと、そうですね……(単純なおだてが好きそうだし)美人天才作家というところで」

「……美人は特に関係ないでしょう」

「あ、すみません(でも容姿の関係でインタビュー多いと思うけど)」

「そして足りません。見出しは大天才作家にしてください」

「……は、はぁ」

「じゃあ僕は超奇才作家にしといてください」

「……え(小学生かこの人たち)」

「だったら私は大奇跡天才作家にします」

「あの、えぇ、はい(奇跡って褒めてるのか?)……それで、そうですね……(だからこっち見ないで二人で話してくれ、対談なんだから。それでもって小説の話をしてくれ)」

「あぁそうだ、私が師匠であるお陰であなたも対談に呼ばれたんです、分かりますかこれ」

「逆じゃないのか? あんたの特集なんてもう嫌になるほどやったじゃないか」

「何度でもやる価値があるのが私です。ので今回も私が主役です、そうですね」

「はぁ、まぁ掻い摘んで言えば……(本当は甲斐抄子の単独インタビューだったけど、普通のインタビュー飽きましたということで対談形式にした、はず)」

「ほらほら」

「はいはいあんたはすごい、おめでたいよししょー」

「語彙力は一向に増えませんね」

「……そういう弟子の至らぬ所を、師匠が教えてくださってもいいんじゃないですかねぇ……」

「過保護は嫌いです」

「あんた未だに実家の両親に食べ物の差し入れねだっているじゃないか」

「家族愛を否定するとか、あなた頭大丈夫ですか?」

「あのぉ、少々脱線しているような……(これ小説家じゃなくて友達の会話だろ)」

「好きに話せと言ったじゃないですか」

「……そっすね(話すことないんじゃなかったのかよ)。あーっと、今家族のお話が出ましたが、お二人はどちらにお住まいに(話題を振らないとまた好き勝手話しそうだ)」

「大学の近所に借りたアパートです。結局そのまま居着いています」

「そちらと同じく。もっとも私はマンションですが」

「……あ、一緒に暮らしていないんですか(あれ?)」

「……? そんなわけないでしょう」

「一緒にって、なぜ?」

「いえまぁ、そうなんですねはい(週刊誌になんかそんなことが書いてあった気もするのだが)」

「そうそう、記事を掲載するときは私の台詞だけ太字でお願いします」

「……足がむくんで太くなった影響かな」

「あなた次の作品に登場させて殺します」

「それ前にやった」

「あれは似た眼鏡。今回は別の眼鏡です」

「眼鏡以外、僕と共通点ないぞ」

「大体あってりゃあいいんですよ」

「……これからあんたの小説を読むときは、眼鏡かけていたらこいつ死ぬなって思うことにするよ」

「大体あなたいつから眼鏡しているんですか。会ったときしていた覚えありませんが……」

「あの、小説の話……(諦め気味)」

「今しているじゃないですか」

「……そっすね(眼鏡の話じゃねーか)。あ、あー……そうだ、お二人は初対面の頃、お互いにどういった印象をお持ちになったでしょうか」

「彼にですか?」

「そうですね」

「キチンとしたガイだと思いました」

「ほぅほぅ(なぜか英語混じりだが意外な返答だ)」

「略すと」

「雑誌に載せられません」

「残念です」

「(それが言いたかっただけかい)えぇ、そちらは……(渋い顔しているけど)」

「……いるもんだなぁって、思いました」

「はい?」

「天才ってやつが」

「おぉ……(初めてまともなやりとりを聞いた気さえする)」

「随分と殊勝な発言ですね。弟子としての心構えに開眼しましたか」

「僕はあんたと違ってわりかし素直なんだ」

「できておる」

「いやぁまったく……(ここまで照れないで得意げにできる人初めて見た)」

「でも性格の方はキ○○イだと思いました」

「本で殺すのは止めました。今殺す」

「うわっ(いきなり椅子から飛び跳ねて掴みかかりに行ったぞ)」

「僕はー! こんなキチンとしたガーリイじゃないと作家になれないなら難しいとー!」

「私はー! 最初に見たときからこいつはきっとー!」

「あの……ムリして対談続けなくていいですよ……(もう知らん)」



「……これ、活字にして文芸雑誌に載せるのか……なんだった、大奇跡天才作家と……」

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