5

 依頼人は喜んでくれるだろうか、納得してくれるだろうか。ぼくたちはいまここに生成されつつあるテクスト、そういう存在だ。ここから情報を持ち帰る。それが課された仕事だ。明確な役割だ。そのことをどこに感謝すればいいのかわからないけれど、ぼくは確かにいまここにある。

 任務は達成された。帰還する。帰還と同時にぼくは役割を失い、この軌道は終わりを告げる。そういう風にできている。願わくは依頼人が、ぼくたちの持ち帰った回答に納得してもらえるといいのだけれど、それはぼくたちの預かり知らない、また別の物語になるのだろう。きっと軌道ストーリーは幾度となく繰り返され、問いかけはこれからも続けられるのだから。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

検索代行者の軌道 川口健伍 @KA3UKA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説