不老不死
悪魔と契約した。
「お前を不老不死にしてやろう。代償はお前がこれから先、最も欲するものだ。」
悪魔は意地悪く笑った。欲しいか、と。私はその契約を受け入れた。その瞬間、悪魔は目の前にはいなかった。最初は夢か幻覚とでも思っていたが、何年たっても変化しない自分の見た目で、あれは本当のことだったんだと、気づいた。
気づいた私は早速仕事を辞め、旅に出た。死ぬことはない、そう思うと晴れやかな気持ちだった。失敗したって、死ぬことはない。飯を食わずとも、死ぬことはない。何が起きても、死ぬことはない。いろんなことに手を出した。楽しかった。それまでの自分が嘘のようだった。
長い年月が流れた。時の流れは人々を進化させ、変わらない私を浮き彫りにした。何年たっても私は変われなかった。いつの間にか、私は時代に取り残されていた。私は一人になった。
さらに長い年月が流れた。とっくに地球上に人間はいなくなっていた。戦争によって数を減らした人間は、ボロボロの地球を捨てて新天地を宇宙に求めた。私もその船に乗せてほしいと頼んだが、彼らから見た私は人間ではなかったので当然拒否された。何もない地球で私は一人になった。
悪魔が現れた。
「死にたいか?」
「ああ、頼む。殺してくれ」
「だめだね」
「なぜ!」
「それが代償だからだ」
悪魔はケタケタ笑って消えた。私は絶望した。ずっと忘れていた、他人との会話がこんなに楽しいものだったなんて!もう一人ではいられなかった。人間を創ろう。私そっくりの、私の会話の相手を。
どれだけ経ったのかわからない。時間に制限はなかった。私は、死ぬことはないのだから。私は作り続けた。たくさん、たくさん。この地球が私の作った人間であふれるまで。私は死なない。
思いつき短編 メタロ @metaroo
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