家庭環境
美千穂とのやり取りも、僕達にとってはとても気持ちいいものだった。吸血鬼やダンピールとの関係性について希望を抱かせてくれる。
たとえそれが例外的なものでしかないとしても、少なくとも人間に対して絶望せずにいさせてくれるのも事実だ。
それから一時間ほど話をして、
「ごめんなさい。今から仕事だから」
「おう! 頑張れよ!」
美千穂と
「いい子だね」
セルゲイが声を掛けると、
「まあね」
安和が応える。彼女も美千穂のことを認めてくれているんだというのがそこからも分かる。
その後はゆっくりと寛いでから睡眠をとり、
二人の学力は、もうすでに、難関国立大学を除けばおおむねどこにでもすぐに合格できるレベルだった。ダンピールは元々知能が高い上、何十人もの生徒を均等に学ばせないといけない学校と違って、完全に二人に特化した形だからね。
それに、日本の大学は入学するのは難しくても、卒業するには講義さえきちんと出ていればそれほど難しくない傾向にあるけど、海外には卒業するのが難しいという形の大学も少なくないから、そちらにも対応できるように、<勉強の仕方>というもの自体を学んでもらわなくちゃと思ってる。
もっとも、悠里については生物に関する造詣が深くなりつつあって、その方面に進むならもう何も心配要らないと思うけどね。
とは言え、セルゲイが科学技術から生物学へと進んだように、経験を重ねることで興味が移っていくことも十分にあるだろうな。だけどそこについては本人に任せる。これについても心配はしていない。
勉強が終われば、あとは自由時間。何をしてもいい。
悠里は、生物に関する論文を読み漁り、安和は日本のアニメの配信を見ていた。それが終わると今度はゲーム。そのあとで自身が運営しているサイトの管理。
「……」
相変わらず、悪態ばかりを並べている利用者がいて、安和は悲しそうな表情になった。
「こいつ、何のために生きてるんだろ……」
確かに。こうやって日がな一日、中学生の女の子(という設定の)が運営するサイトに入り浸ってただ悪態を吐くだけの時間を過ごさなければいけない理由というのは、何なんだろうね。
悠里や安和や椿や
他人をストレス転嫁に利用しないといけない家庭環境なんて、本当に悲しいよ。
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