恵莉花の日常 その19
再度言うが、
それどころか、<親代わり>でさえあるかもしれない。
恵莉花にだったら何でも話せる。親とは話せないことどころか、同年代相手だとウザがられるような、真面目で面倒臭い話だってできる。
それが千華にとってはどれほどのことだったか……
以前、千華は、『両親に対していつか復讐してやる』というような話をしたことがある。
その時、恵莉花は、頭ごなしに千華の話を否定はしなかった。
こういう時、フィクションではよくある、
『復讐なんてダメだよ! 千華が不幸になる!!』
的な言い方をしなかったのだ。
それどころか、
「そっか……それくらいなんだね……」
と応えただけだった。
しかもその上で、
「じゃあ、具体的にどんな風に復讐するの?」
と突っ込んだ話を振る。
すると千華は、
「え…と……そうだな。あたしがファッションブランド立ち上げてそれで
少し戸惑いながらもそう応える。そこで恵莉花は、
「すごいじゃん! チカ、服のデザインとかできるの!?」
食い気味に身を乗り出して尋ねた。けれどそれには、千華は、
「え…あ、え~と……ゴメン、服のデザインとかって、どうすんだっけ? 絵とか描くのかな」
頭を掻きながら訊き返す。それに対して恵莉花も首をかしげながら、
「あ~、どうなんだろ? 私は花とか植物のことなら少しは分かるんだけど、チカのお母さんはどんな風にしてんの?」
改めて問う。なのに千華はますます困ったような表情になって、
「いや、あいつ、家じゃ仕事しないから。服のデザインとか考えてるところ見たことないんだ。あたしも、顔を合せたくないから近付かないし」
大きくトーンダウン。
そして、
「……ダメだな、これは。あたしにゃムリだ」
自分から<復讐案>を取り下げる。
「あ~、復讐はしてやりたいけど、具体的にどうするって考えるとダメなもんだな」
冷静になってしまった。
そこで恵莉花が、
「これは私の知り合いが言ってたんだけどさ、その人も親のことが嫌いで、何とか復讐しようって考えてて、でも、ヤバい方法以外でってなったら、『親が高齢になったら施設に放り込んで後は知らんぷり』ってくらいしか思い付かなかったって言ってた。
だからさ、千華もそれでいいんじゃない?」
と提案した。ここで言う<知り合い>とは、もちろん、アオのことである。
そんな恵莉花に、千華も、
「う~…やっぱそんくらいかなあ……マジでヤバいのとかだとあたしまで捕まるかもだし、あんな奴らのために捕まるとか、それもムカつくよなあ……」
冷静になっていたのだった。
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