秋生の日常 その9
と、それぞれ事情を抱えた三人の<ハーレムごっこ>に付き合わされていること自体は、
けれど彼は、この世が自分の思い通りにいくものじゃないことを知っているがゆえに、まあ、こうして同じ高校に通っている間くらいならこの茶番に付き合ってもいいと思っていた。
どうせいずれは解消されるだろうから。
その間に受けるストレスについては、家に帰れば癒される。そういうことも含めてちゃんと受け止めてくれる家族がいる。
だけど、
『学校の方で何とかしてくれる』
と思っているくらいだったから。
しかし、学校はあくまで教育機関であって養育機関でもなければ医療機関でもない。
ある意味では、秋生がその尻拭いをしているとも言える。
そして、
それどころか、彼女の父親は、<男児>を望んでいたにも拘らず
つまり、
『跡継ぎも産めないような女は要らないし、娘などそれこそ見たくもない』
と考えていたのだ。
幸い、<手切れ金>のおかげで経済的には苦労しなかったものの父親から人間扱いされなかった母子は世間から隠れるようにして内にこもるようになった。
そんな中で三人は出逢い、お互いに、
『他の人よりは優しかったから』
という理由で<友人>となった。
互いに支え合うことで気遣い合うことでなんとか正気を保っている状態だったかもしれない。
そこに秋生が現れたということだ。
こうして秋生に依存することになった。
しかし、そういう他人からの一方的な依存を受け止めきるには秋生はまだ幼かったとも言える。
彼も頑張ってはいるものの、さすがに三人は負担が大きかった。
しかも一方的に依存してくる他人の疎ましさを思い知らされもした。
だから彼が、
『結婚とか面倒くさいかな』
と思ってしまうのも無理はないだろう。
彼女らのことは、少なくとも今は、
<人生のパートナー>
とまでは思えなかったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます