ちょっと落ち着こうか
下着丸出しのまま、ソファに寝そべったままバリバリとスナック菓子を貪る
「
すると恵莉花も、手にしたスティックタイプのスナック菓子で安和を指しながら、
「あ~! いるいる! クラスの男子だけじゃなくて、女子にもいんだよ、そういうの! あんたが男に媚び売るのは勝手だけど、他人にまで押し付けんなっての!」
興奮したように声を上げる。
と、ミハエルが、
「安和、恵莉花、ちょっと落ち着こうか」
笑顔で声を掛けた。
瞬間、二人は、
「あ…」
って顔になって、
「ごめん…」
「ごめんなさい。ちょっと興奮しすぎた……」
姿勢を正した。ミハエルに言われて、自分達の言い方が罵るようなそれになってきていることに気付かされる。
そんな風に言われて素直に聞けるのは、二人がミハエルのことを信頼しているからだろう。そしてミハエルが二人から信頼されているのは、普段から彼が自分達を敬ってくれてるのが実感できるからだった。
『相手を敬う』
という姿勢をちゃんと目の前で示してくれてきたから、その真似をするだけでよかった。
けれど同時に、気持ちが高ぶってくるとどうしても態度が雑になりがちなのも事実。この辺りはまだ幼くて未熟な所為というのもあるかもしれない。
もっとも、アオを見ても分かるとおり、気心が知れた人間だけのところではつい気が緩んでしまうというのも含んでのことだろうから、ミハエルもあまり煩くは言わない。ちょっと促す程度という感じだろうか。
自分達しかいないこの閉じた場であれば少々のことは大目に見るといういう意味でもある。
なので、だらしない格好をしている程度ではそれこそ滅多に注意もしない。
なぜなら、ここは、家族がこの世で最も油断できてリラックスできて安心できて寛げる場所だから。ここで全力で脱力できるから、外ではそれなりに気持ちを引き締めることもできる。
人間は常に緊張し続けていることはできない。どこかで気を緩めてだらしない瞬間を作らないと、肝心な時にプッツリと緊張の糸が切れたりもするだろう。
恵莉花と安和が言ってるのも結局はそういうことだと思われる。
『自宅で寛げないならどこで寛げばいいの?』
という。
これはアオ自身もさんざん言ってきたことなので、それが恵莉花や安和にも受け継がれてるだけだろう。
そして二人は、自分の家でだらしなく寛ぐことも許さないような相手と付き合う気は一ミリもなかった。
それでいいのだと思われる。
家でだらしなく寛ぐことを認めてほしいなら、それを認めてくれる相手を探せばいい。
ということなのだと。
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