気取ってられるわけ
「あ、ごめん。そろそろ仕事に戻らなきゃ」
二時間ほどたっぷり子供達と話した話したアオが時計を見て声を上げた。
もっとこうして話していたいけど、仕事もちゃんとこなさなければならない。<親>の辛いところだ。
けれど同時に、やりがいがある部分でもある。これがなければもしかすると自分はただ惰性で<蒼井霧雨>を続けることになっていたかもしれないとも思う。
そういうのも悪くないかもしれないとは思いつつ、今が楽しいのだからそれでいい。
「パパはママと結婚して幸せ?」
仕事部屋へと戻った母親を見届けて、
「うん。もちろん幸せだよ♡」
ミハエルが笑顔で応える。
すると
「あ~! やっぱ幸せになれる相手を見付けられるかどうかで決まるか~!」
手を頭の後ろに組んでソファーの背もたれに思い切り体を預けた。するとスカートがめくれあがって下着が丸見えに。
「こらこら、パンツ見えてる!」
これにはさすがに
「あ~? 何を今さら。ここにいる全員、お風呂だって一緒に入った仲じゃん。パンツぐらいでオタオタすんな」
今、履いているのは、ボクサーブリーフに近いタイプの、しかもピンクと紫の花柄という、元々<見せパン>と言われるものに近いということもあって、それこそまったく気にならない。
加えて、恵莉花が言うように、エンディミオンに遠慮して、蒼井家の子供達は
「私も入る!」
と言いながら恵莉花がお風呂に入ってきたことも何度もあった。
「僕は、恵莉花に無理矢理付き合わされただけだけどね」
秋生は少し不満気だ。
でも、照れがあっただけで、一緒にお風呂に入るのが嫌というわけではなかった。みんなで一緒に入るととても楽しかった。
ちなみにエンディミオンも、恵莉花や秋生のことはちゃんとお風呂にも入れてくれていたし、二人とも、父親とお風呂に入るのも好きだった。高校に上がる直前までは、さくらも含めて家族四人で一緒にも入っていた。
恵莉花が言う。
「裸とかパンツとか、エロい目で見るからエロく見えるだけだろ。女湯とかだって、あれをエロい目で見られるってのが分かんないよ。<色っぽいお姉さん>とか、リアルにいると思ってんの? リアルにはいないよそんなの。男の視線を気にしてるのがそういうポーズ取ってるだけだって。
風呂に入る時まで気取ってられるわけないじゃん。くっそだらしないのが普通だよ。油断して緩み切るのが風呂の醍醐味だよね。男のオカズになるために風呂に入るんじゃねーっての」
下着を丸出しにしたままで恵莉花は半ば不貞腐れたように言った。
けれどこれは、ここにいるのが<家族>だから。気取らない自分のありのままを晒せる相手だからだった。
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