そんなの自立じゃないと

「自立とか自活ってさ、家族といがみ合うことじゃないと私は思うんだよね。


だって、あきらは今もさくら達と一緒に暮らしてるけど、ちゃんと自立もしてるし自活もしてるじゃん。エンディミオンのことでもし自分の力が必要になったりしたらすぐに力になるために一緒に暮らしてるんでしょ?


それで何が悪いのさ?


自分の大好きな家族の力になりたいというのがそんなに変?


恵莉花えりかももうそうだよね。<フラワーショップ・エリカ>は、確かにエンディミオンが好きな花いじりを仕事にするための隠れ蓑として設立したものだけど、今じゃ恵莉花が育てた花も、エンディミオンのに負けず劣らず売り上げに貢献してるんでしょ? だったらもう、自活できてるようなもんだよね。


前提が逆なんだよ。『家族と一緒に暮らしてるから自立できてない、自活できてない』じゃないんだ。『他人が思ってるあれこれに振り回されて自分を貫けてない』状態は、たとえ一人暮らししてたって自立なんてできてないよ。体裁を気にして形だけ一人暮らししてるように見せかけてるのなんて、そんなの自立じゃないと私は思う」


アオのその言葉に、恵莉花えりかは思い当たることがあった。


「あ~、それで思い出したけど、私が一年だった時の三年の先輩でさ、今は大学中退してニートしてるのがいるんだよ。


で、その先輩、今、ネットで、


『エリートニートの人生バラ色~♡ 自分は働かず親の金で食うメシ美味うめ~♡』


とか発信しまくってて、絶賛炎上中なんだ。


んでもって、これがその人の発信してる動画」


そう言いながら動画を表示させたスマホをテーブルに置く。


するとそこには、いわゆる<汚部屋>で、美少女キャラのお面を被って、


「は~い、エリートニートのシュバちゃんで~す♡ 今日も必死で小銭のためにあくせくしてる社畜のみなさ~ん、息してますか~?」


などと、完全に他人を嘲り倒そうという意図が丸出しの口上を述べている若い男が映っていた。


「こいつさ、<シュバ>って名乗って、あ、<シュバ>ってのは、ドイツ語で<豚>って意味の<シュバイン>から取ってるらしいんだけど、自分の家が裕福でなんの苦労もなくニート生活満喫してる様子を配信して、一日で万単位の罵倒を集めてるってんで、最近、話題になってんの」


恵莉花のその説明に、


「あ! それ見た! <イキリヒキニート>ってんで叩かれまくってる奴だよね。恵莉花の知ってる奴だったんだ?」


安和アンナが反応する。


安和までが知ってたことに、恵莉花は苦笑いを浮かべたのだった。


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