第21話 道具屋さんは『教育』する
「魔族側の動きに何か変化はありましたか?」
「そーれっがでっすねぇ! よっく分からないんでっすよぅ。というのも斥候として放った者たち全てが殺されちゃってますゆえぇぇぇぇぇぇぇいっひ」
戦術都市マリュケイカ。前回の作戦で一度は魔族に明け渡すことになってしまったため、現在復興作業が行われている。現在僕はグン・シーさん達と会議室のような場所で作戦タイムだ。円卓には僕の頼れる優秀な部下たちが腰かけている。
グロウス率いる魔族軍を撃退して二週間が経過した。
すぐに魔族が攻めてくるのかと警戒していたのだが、そういう事もなく、平和な二週間がここ戦術都市マリュケイカでは流れていた。
「そうですか。仕方ありませんね。ではこちらはこちらで出来る事をするとしましょう。グン・シーさん。この前の傭兵を雇うという件、あれはどうなっていますか?」
「うまーくいっていますっよう! オレも傭兵には何度もお世話になっていますから交渉なんてお茶ちゃのこサイサイサイぅぃぃぃぃぃぃ! でございまっすよぅ!」
グロウス率いる魔族が攻めてくるよりも前から僕は兵の数をとにかく集めていた。数は力だ。とくに僕の軍の場合は特にね。
「カフテルさんはどうですか? 山賊の伝手などなにかあるのでしょう?」
「ああ――じゃなくて……はい。それに俺も山賊になる前は傭兵でしたからね。グン・シーには及ばねぇがそれなりに数は集められるぜ」
「それは何よりです。さて、お姫様はどうですか?」
「私の方でも順調に兵を集められています。私の名と勇者であるイービル様の名を使い、悪の根源である魔王を倒すのだと呼びかけているのですが、正義感溢れる方がたくさん討伐に名乗りをあげてくれています。グン・シー様とカフテル様、さらにアリィヤ様が多くの兵を集めてくださっているおかげで今回の魔王討伐はかなりの期待が寄せられているという事もあって後が絶えない状態です」
「素晴らしいですねぇ。さすがはお姫様です。今回、兵が多すぎて困るという心配は要りません。上限など設けないので集まられるだけ集めてください」
「畏まりました」
「さて、アリィヤ。君の方はどうかな?」
「集まった兵にはきちんと『教育』を施しているわ。イービルも最近は良く来るのだからおおよその事は把握できているでしょう?」
「そうなんだけど情報の共有は必要でしょ? 僕だけが全部知っていればいいってわけじゃないんだからさ」
「ふふ、たくさん隠し事をしているくせに良く言うわね」
「くく、アリィヤには言われたくないとだけ言っておこうかな」
さて、順調に兵は集まっているし、『教育』もきちんと出来ているみたいだ。後は軍としての動き……かな。
「アリィヤ、もう『教育』はいいよ。後は僕がやる。グン・シーさんとカフテルさんももう傭兵を集めるのはやめていいです。三人には集まった兵たちの調練をお任せします。グン・シーさん、あなたの好きなようにしてくださって結構です。補佐にアリィヤとカフテルさんをつけます」
「かっしこまりましたぁ!!」
「イービルがそれを望むなら」
「了解しやした」
グン・シーさんならきっと理想的な兵士たちを用意してくれるだろう。それに、アリィヤも付ければ僕好みの軍団になりそうだ。
「お姫様は引き続き戦える者を集められるだけ集めてください」
「畏まりました」
お姫様にが兵の調練などは期待できないが、その求心力は素晴らしい。彼女が少し呼びかけるだけで兵士希望の人たちが集まってくる。彼女にはこのまま兵力増加の為に尽力してもらおう。
さて、これ以上何か出来る事はあるかなぁ。
そろそろ敵の兵糧も尽きてくるだろう。だからこそ、こちらから攻めることはせず、あちらが攻めてくるのを待つ事は確定だ。しかし、向こうも後がないだろうし必死だろう。おそらく魔王も参戦するだろうし、用心するに越したことはない。
グロウスさんから魔王については少しだが聞き出せた。
人前に出る事を嫌う魔王。
グロウスさんのような魔族の中で力を持つものでないと、謁見する事すら出来ない存在。一般の魔族は魔王の事を知らない者の方が多いとか。
おそらく、人前に出ない理由は自身の情報を引き出されない為だろう。
事実、僕はグロウスさんの口から魔王の事を聞き出せたが、魔王について分かったのは人前に出る事を嫌うということのみ。
どのような戦術を好むのか? 単体の戦闘力は高いのか? それらが何も分からないのだ。
「まぁ、後はなるようにしかならないか」
考えたけれど、やはりこれ以上出来ることはない。もう余計なことは考えず、後は兵士たちの『教育』に力を注いだ方がよさそうだ。
「さて、そうと決まれば今日もお仕事頑張ろうか!」
そうして僕は『教育』の準備を始めた。
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