第14話 道具屋さんはおもちゃで遊ぶ
「はっ! そんな薬があるわけ……いや、待て。まさかそれは八年前に王都で出回っていた『悪魔の薬剤』では……」
「おや、知っているならば話が早い。その通りです。いやぁ、あの頃は僕も若かったですからねぇ。『表』に少量ではありますが流通してしまったんですよねぇ。まぁ昔の話です」
薬を売っていた客の一人が『表』に流したと知った時は焦ったなぁ。もちろん適切な処理はしたけど危うく僕の所まで被害が及ぶところだった。
「『悪魔の薬剤』……常習性のある呪われた薬。服用した人間の誇りも……尊厳も奪いつくしてただ薬の事しか考えなくさせるという。製造元がどこなのか長い間捜査されたが結局判明しなかったと聞いているが……貴様が作っていたのかぁ!!」
「ええ、その通りです。本来ならば一回百ギールの所を今回はお友達価格っていう事で無料にしてさしあげますよ。ふふふ、あはははははは!」
そう言って僕は注射器の針を拘束されているグン・シーさんの腕に押し付ける。
「例え『悪魔の薬剤』だろうとワタシの意思を変えることなんて出来ない! ワタシの信念を甘く見るなぁっ!!」
この状態になっても諦めないグン・シーさん。往生際が悪いなぁ。
「はいはい。では、良い夢を」
「ぐっ、くぅ」
僕はグン・シーさんへと『お薬』を注入する。
「さて、アリィヤ。僕はこれから少し長い間グン・シーさんと【お話】するから軍の事をしばらく頼んでいいかな? あぁ後、僕がさっきグン・シーさんに提案していた作戦は聞いていたかな?」
「もちろんよ。私がイービルの言葉を聞き逃す訳がないでしょう? とても良い……素晴らしい作戦だと私は思ったわ」
「それは良かった。それじゃあ実行に移しといて貰えるかな? グン・シーさんにもうまく行くだろうって太鼓判を押してもらったからね。ああ、それと作戦を遂行するにあたって人数が足りないと思うんだ。だから傭兵でもなんでもいいから雇ってくれると嬉しいな。いくら払う事になっても構わない。手段は任せる。必要なら僕がみんなに渡している『プレゼント』の余りをいくつかアリィヤに貸しておこう」
「人使いが荒いわね。長い間イービルの傍を離れないといけないじゃないの。嫌ねぇ」
「ははは、そう言わずに頼まれてくれないかな? ああ、それと僕とグン・シーさん、二人分の食料と水を定期的に持ってきてくれないかな? まぁこれは他の人に頼んでもいいんだけどさ」
「そんなの嫌よ。それこそ私がやりたい仕事だわ。――はぁ、分かったわよ。でもイービル。一つだけお願いを聞いてもらっていいかしら?」
「なにかな?」
「この仕事が終わったら――私を抱いて」
「……へぇ」
僕はグン・シーさんから目を離してアリィヤを見つめる。アリィヤは笑っているが、冗談などではなさそうだ。その深紅の瞳が僕を見つめている。
「問題ないともアリィヤ。なんだったらこのグン・シーさんの家に来るたびにアリィヤを抱いてあげるよ。どうせ薬を打った直後はグン・シーさんも意識が朦朧としているしその間なら僕も暇だからね」
「それだとそこのゴミくずに見られてしまうじゃない」
「何か問題があるかい? ああ、それと良くないなぁアリィヤ。グン・シーさんは僕のお友達だよ? 親友だよ? 仲間だよ? それをゴミくずだなんて良くないなぁ」
「くっふふふ。アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
またまた狂ったように笑い出すアリィヤ。相変わらず笑いのツボが分からないなぁ。
「くっふふふふ。ええ、そうね。問題なんてないわね。彼――グン・シーだってお仲間だものね? イービルの親友だっていうのなら私の親友でもあるって事だものね? ごめんなさいグン・シー。さっきはゴミくずだなんて言って。反省しているわ」
そう言ってアリィヤはまだ薬の効果で意識が朦朧としているグン・シーさんの頬へと口づけをした。うんうん、仲が良い事は良い事だねぇ。
「――さて。それじゃあ私はイービルの作戦の準備をしてくるわ。食料は……今日の夜に持ってくるけど構わないかしら?」
「ああ、構わないよ。もし僕が寝ていたら起こしてくれて構わない。焦らずゆっくり作戦の準備をしてくると良いよ」
準備を怠って作戦自体が失敗するのは僕の本意じゃない。時間がかかってでも準備はしっかりするべきだ。
「ふふ、イービルが他人が居る空間で無防備に寝る訳がないじゃない。それじゃあ、行ってくるわ。ご褒美、期待してるわよ?」
そう言ってアリィヤは部屋から出ていった。
「ふぅ。まったく。便利だけど得体のしれない女だなぁ。まぁ、僕のいう事を聞く限りはこっちから何かする気はないけど」
反抗心を抱かずに僕に尽くしてくれるアリィヤは貴重な存在だ。無駄死にさせる気は全くない。もちろん、僕を裏切ったらその瞬間に爆死してもらうけど。
「さて。グン・シーさんが目を覚ますまで爆弾の製作にでも取り掛かろうかな。幸い部品ならある程度あるし。あぁ、しまったなぁ。アリィヤに部品も持ってきてもらうべきだったか。まぁいいか。夜に来た時に伝えるとしよう」
そうして僕はグン・シーさんが目を覚ますまで爆弾を作り続けた。
グン・シーさんが目を覚ましてからは【お話】をずーーっとした。暴れることもあったけど拘束されている彼は自分の体を傷つけるだけだ。
薬の効果が完全に切れたら少し時間を空けてまたお薬を注入。それからしばらくしてからアリィヤが来たから彼女の望む通り、僕は彼女を抱いた。
最近は女性を抱いていなかったかせいか、僕もついつい夢中になってしまった。グン・シーさんが目を覚まして暴れだすまでひたすらアリィヤを抱いていた。
そんな日々を……僕は一か月の間過ごした。
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