大切なもの

「社長!」


 俺が足早に近づいていくと、彼女は犬を迎えるように顔に花を咲かせた。


「斬!なんだ?」




 これは、いつかあなた方が見た物語。




 それが嫌ではない自分に驚きつつ、業務を遂行する。


「プラス会社に向かわせた江藤という者ですが……」


 彼女は俺の話に耳を傾けながら、甘酸っぱい不思議な顔をしている。




 彼女が何を選択したのか、果たしてわかっていただけたのかどうか、そんなのはどうでもいい。


 彼女の首には、もうその効力を失った祖父の形見がかかっている。


 彼女の祖父は、その恐るべき兵器を、自分が死んだら無効化するべく、ちゃんと設定しておいたのだそう。


 要するに、総理大臣たちの目論見など、まったくもって無意味な、ただの日常だった。


 つまらんな。平和というものは。

 なんてつまらなくて、ありきたりな、そんな生活。


 お前達は、何を選ぶ? どれを捨てて、どれを手に入れる?


 選ばせてやるよ。そら、手にとれ。


 これから、お前達が主役だ。せいぜい、生き延びてみせろ。

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天変地異〜宇宙の人類史物語〜 碧海雨優(あおみふらう) @flowweak

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