第8話「浮田の仕掛」

何もしなければ俺の活動場所がなくなってしまう。ジャズダンス部がモダンダンス部と一緒になることで一応の活動場所は確保されるのだろうけど、そこで安心して活動できるかどうかはまた別の話だ。それだったら二つのダンス部を廃部に追い込めば良い。ダンス部設立の経緯などがはっきりしていないのであれば、必ずそこには重大な欠点が隠されているはずだ。


この江澤という顧問が私腹を肥やすために存在しているのではないだろうかという疑問にすぐに行き当たった。最初はダンスに興味があって入ったジャズダンス部についても過去の歴史を調べてみると胡散臭い流れがあることが判明した。先輩の伝手を使って当時を知る人物に話を聞きに行ったりもしたし、宿泊先の施設についてもわかる範囲で調査を行った。


今でもダンスは好きだけれど、何も部活動でなくともいくらでもやりようがある。年下だけどダンスが上手い奴と同じ空間に並べられても自分が惨めになるだけだ。のびのびダンスがしたいだけなのにどうしてそんなに複雑な流れに組み込まれなくちゃいけないんだ。



汚物を排除するヒーローになりたかったわけではないし、ある程度の利益を考慮しないと長く存続したり、強豪で居続けるというのは難しいということはわかるのだけど、そういった中で気楽に活動ができるとは思えない。



うちのジャズダンス部員が今後どうするのか、そしてダンスで食べて行こうと考えていたモダンダンス部に所属するたくさんの生徒がどういった道を歩んでいくのかもわからない。


俺自身が関係者から恨まれるようなこともあるのかもしれない。それでも俺は自由を手放したくなかった。


今日はグラウンドから聞こえてくる声がいつもより静かだ。

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弱小ダンス部の憂鬱 鷓鷺 @syaroku

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