夢の世界と現実の世界が何らかの形でリンクしており、そこに生じる歪みを主人公が解決する、という筋立て自体はそこまで珍しいものではありません。しかしながら、この作品ではそこにRPG的な要素と推理小説的な要素がうまく溶け込んでいるので、筋立ての陳腐さが目立たず、面白く読める代物になっています。
RPGと推理小説はかけ離れたジャンルのように見えますが、いかにプレイヤー(読者)に「次はどうなる?」と思わせられるかが成功のカギになる、という点ではある意味似通っているといっていいでしょう。
この作品では片方に主人公の冒険物語があり、もう一方に現実世界に悪影響をもたらしているかもしれないMMOゲームの謎があります。いわば、読者のページをめくる速度を上げさせる仕掛けが二つ用意されているのです。
とはいえ、こうした物語を書く際には諸刃の剣と言いますか、面白さが逆につまらなさにもなりえてしまう、という現象が起こりえると思います。
というのも、この作品では夢世界と現実世界が交互に描かれています。まず主人公がギルドの依頼を解決したのち、次なる課題を見据えて眠る。そして目覚めた先の現実では、着々とMMOゲームにハマっていく人々が増えていき、おかしいと思った主人公は夢とのつながりがないか調べ始める……といった具合に。
こうなると読者は二つの事柄を整理しながら小説を読んでいかなくてはいけません。夢の世界で起きていることを読みながら、現実世界では今この辺りまでゲームの攻略が進んでいる、ということを頭に置かなくてはいけないのです。もちろん逆もしかりで、現実世界で起きていることを読んでいる間は、夢の世界でどんなことが起きたかを記憶にとどめている必要があるでしょう。
これは読者に負担をかける物語の進め方です。片方のタスクをこなしながら、もう一方のタスクのことも頭に入れておく、ということができる人はあまり多くありません。中には夢の世界の話が一旦区切られた後で、現実世界でどんなことが起きていたっけ、となかなか思い出せない読者もいるでしょう。
気に入ったキャラがいたので、星3です。今後に期待したいです。
ファンタジーのような定型(ギルド)がありつつも、少年達の人間関係や自分が経験した世紀末思想的な不安定な何かがここには詰まっている気がしました。少しづつ自分たちの経験に対するなぞが深まっていき、それが何かを引き起こす感じを読者は体感できると思います
基本的に、道具や動作に対する表現が非常に的確にわかりやすくできている。ファンタジーに詳しくない人にとってなじみがない道具に対しても、わかりやすく説明がなされているので基本的に道具そのものがよくわからなくても、すいすい読んでいけるのではないでしょうか。さらに驚いたのは、RPGや普通の小説では省略されがちな宿の質について、多少述べられていること。実際に、バックパッカーや旅行経験が多い人は結構共感できる部分じゃないのだろうか。
私自身、オンラインゲームや現代ファンタジー小説に詳しくないので自分が知っている限りの表現で一言紹介を書きました。恐らく、もっと現代オンラインゲームに詳しい方はもっと適切な表現を見つけることができるでしょう。