3 ギルドと情報
「
情報屋を使わないとなれば、当事者に聞くのが一番であるが……セイルにとってあまり接触はしたくない相手だった。
神盾聖騎士団に訊くのはハイリスクハイリターン、情報屋に訊くのはローリスクローリターン。どっちも一長一短なので選ぶのが難しい。
まあ、セイルはそこまでのリスクを負ってまで情報を得たいとは思わない。少し待って、向こうから接触してきた場合のみ行動を起こすことにした。
自分の行動方針を決めたセイルは、リーレの方をちらりと見る。リーレは魔法があまり得意ではないと言っていたが、憧れがあったようで夢中になって本を読んでいる。その横顔はキラキラと輝いており、実に楽しそうであった。
「俺は少し外に出てくる。夕方までには戻るから、くれぐれも余計なことはしないでくれ」
今のリーレなら好奇心で最大威力の魔法をぶちかましそうだ、と思ったセイルは、さっきも言ったがもう一度釘を刺しておく。
(……自分で言っていて怖くなってきた。……やらないよな?)
そんなセイルの心中を知ってか知らでか、リーレは一瞬だけ顔を上げてセイルの方を確認し、すぐに視線を本へと戻して「いってらっしゃい」と告げた。そんなに魔法が好きなのか、少し声が明るくなっていた。
♰
さて、そうして街に出てきたセイル。
彼がすべきことは情報収集と脱出に使う魔導具を手に入れることだが、今回は自分の用事を優先させてもらうことにした。
セイルは宿のある裏通りを歩いて抜け、街のメインストリートに出る。この街は堀や壁など、魔物対策はしてあるが、人に攻められることを考えていない。街の中央に広場があり、そこに東、西、北の門から延びる大通りが集まっている。北から南へ縦に走る通りが中央通りで、南端の領主館まで一直線である。戦争になったら一気に攻められてしまう。
そんな中央通りの広場近くの一角に、この街の冒険者ギルドがある。
セイルは歩いて広場まで行き、その中に入っていった。
♰
冒険者ギルドとは、危険を冒して目的を達成する職業『冒険者』を支援する国際組織だ。同系統の組織として、商業ギルド等がある。
主な役割は冒険者への依頼斡旋と酒場である。一般人から貴族まで、様々な人物から依頼される案件を、難易度別に
セイルは銀級中位の冒険者なので、それなりに高位の冒険者だ。
彼の持つ『
セイルは称号からも分かるように、主に
そんなセイルが昨日の夜遅く、リーレを拾うまで何をしていたかというと、もちろん依頼だった。この街の近郊の森に死霊術師がいるかもしれないので調査してきてほしいという内容の依頼だったのだが、少しヘマをしてしまい、やむを得ず討伐してきてしまったのだった。
今回ギルドへ行くのはその依頼の報告である。ギルドには嘘発見器的なものがあり、依頼にも『できるならば討伐してもよい』とあるので依頼は達成扱いになるのだが、ちゃんと討伐依頼として受けた方が報酬は高くなる。
セイルは初め、(しまったな……討伐の方で金がとれなくなった……)と思ったのだが、今の状況では追加の依頼など受けられないので、結果オーライと思うことにした。そもそも討伐せず調査のみで終えていたら、リーレと出会うこともなく、普通に依頼を受けられたのだが。
ギルドに入ったセイルは、依頼報告窓口の列に並ぶ。ギルドは要件別で窓口が分かれており、依頼受注窓口と依頼報告窓口はいつも長蛇の列ができている。番号札などで管理すればいいのにと常々思うセイルだが、それを提案する方が面倒なので言わない。
特に何も起きることなく十分ほど経過し、列が消化されてセイルの番になる。
「三日前に受けたこの依頼なんだが……」
特に何かトラブルが起きるわけもなく、普通に報告と報酬の受け渡しが済んだ。ついでに数日中に出ていき、他の街へ向かう旨を伝え、いくつか質問をした。
「この街にある魔導具屋を教えてくれ」
自分で探すのも面倒なので、セイルは脱出用の魔導具が売っていそうな店を教えてもらう。全部で七件あるので、今日中に探し終えるのは無理そうだった。
ついでに何か吸血鬼の情報はないかとセイルが訊くと、神盾聖騎士団が一つの吸血鬼の団体の部署を潰したという情報と、その部署所属の隊長格が一体逃亡したので神盾聖騎士団が捜索しているという情報が得られた。
リーレから訊いた情報とあまり変わらないが、別視点というだけでもだいぶ違ってくる。裏切り者の半吸血鬼は協力者でただの人間(どうやら貴族の三男らしい)ということになっており、リーレを捜索しているという情報もあるが向こうもあまり情報は集まっていないようだ。
やることは済ませたので、セイルはギルドを後にし、魔導具屋へ向かうことにした。
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