俺は銀河の端で召喚された そう、宇宙船の中に

MASK⁉︎

俺たちの戦いはこれからだ!っていう短編

 それは桜の散りゆく晴れた日の事だった。

 この俺、須藤航平すどうこうへいはいつものように学校から歩いて帰っていた。河川敷を歩けば麗らかな陽気の中、野球で汗を流す子供たちがいる。ランニングやサイクリングをしている人たちともすれ違い、俺も運動しないとだめだろうなどと考えていた。



 ・・・・・・そこまでは覚えている。


 がんっと頭に衝撃が走ったかと思えば、俺は知らない場所にいた。


 足元には魔法陣と思しき幾何学模様。周りを見渡せば6畳ほどの大きさの部屋がよくわからない機械で埋め尽くされ、窓からは漆黒の闇の中にぽつぽつと星の光が見える。

 目の前には青い髪をした勝気な顔の少女が薄い胸を張って立っている。


 もっと慌ててもいいものだが、不思議と気分は落ち着いている。

 様々な疑問が溢れ出すが、その答えを俺はもう既に知っていたのだ。最初から知っていたかのように頭の中に入っている。


 その知識のおかげでこういう時、何を問えばいいのかわかっていた。


「君が俺を召喚したということで間違いないかな?」




$$$




「召喚」それは燃料となる膨大な魔力を触媒として、霊的存在を使い魔として呼び出す儀式。


 ここ、ウラノス星系連邦共和国では人々は一生に一度だけ召喚をする権利を持っている。しかし、実際に召喚できる人は稀だ。一般人には召喚に必要な膨大な魔力を集めることが出来ない。


 出来るのは魔力リソースを買い集められる一部の富裕層か、運よく手に入れることが出来た者だけだ。他国では王侯貴族などの支配者層が何度も召喚を行っている場合も多いらしい。


 では使い魔は何のために召喚されるのか。実体はあるものの食事は必要なく、魔力だけで体を保っていられるので都合の良い使用人にすることもあるが、そんなことをするのは極稀だろう。


 大多数の使い魔に求められるのは宇宙船、それも戦闘機の電脳体としての働きだ。




$$$




「やったー!召喚成功よね。良くやったわリアーノ・ネモフィリア。一番の鬼門だと思っていた召喚にあっさりと成功しちゃうなんて流石私ね。

 ちょっと顔はぱっとしないし、着ている服も見たことないけど使い魔だって事には変わらないわ。もうこれで私の夢を妨げるものはないわね。うふふふ。」


 俺を召喚したと思しき人物は、声をかけたとたんに後ろを向いてぼそぼそと何かを呟いている。あっ、小さくガッツポーズした。

 せっかく最初だからと格好つけたつもりなのに。なぜだろう、放置されてすごく悲しい。


「あっそうだ、あんた名前を言いなさい。」


 ひとしきり小さく喜んでいるところを見ていると、ふと思い出したように青髪の少女がこちらを振り向いて命令してきた。明らかに年下なので特に気負う必要も感じなかったが、命令するのが妙にこなれているので評価を改める。


「なかなかなご挨拶だなぁ召喚者マスター。俺は須藤航平すどうこうへい。そういう君の名前は教えてくれるんだろうね?」

「も、もちろんよ。名乗るのは基本だもの。私の名前はリアーノ・ネモフィリア、呼び方はあなたに任せるわ。いいわねスドウ。」


 あれ?もしかして言う順番・・・・・脳内検索中・間違ったみたいだな。まぁ大した問題じゃない。こういう事を起こさないようにする必要があるとわかったというのが重要だ。


「了解、リアーノ。早速で申し訳ないけどいくつか質問させてもらっても良いかな?」


 しかし、リアーノはまた背中を見せる。


「リアーノって、リアーノって言った。……デュフフフフ。」


 女の子がデュフって言ったらだめでしょ。それにしてもいちいち反応が大きいせいで話が全く進まない。俺この子に召喚されたの大丈夫か不安になってきた。悪い子ではなさそうだけど。


「なぁリアーノ。話を進めてもいいか?」

「あっごめんなさい。ちょっと聞いてなかったわ。それで何かしら?」

「いくつか質問があるんだが、まずはそうだな。ちょっとした確認で、どうして俺が知らないはずのことが頭の中に入ってるんだ?」


 するとリアーノは口を開け信じられないものを見るかのような顔をした。


「はぁ?そういう現代に馴染むための知識って召喚時に補完されるんでしょ?知らないの?」

「いや、知識としてはある。だけど俺からすれば馴染みのないものばかりだから確認させてほしい。召喚者マスターからすれば無駄な時間かもしれないが付き合ってくれないか。」

「そ、そういうことなら付き合ってあげる。何でも言ってみなさい。全部答えてあげるから。」


 なかなか頼りになりそうなことを言うなぁと少し感心。

 リアーノは腕を組みつつ挑戦的な目をして質問されるのを待っている。


「じゃあ聞くぞ? まず、俺はリアーノに召喚された使い魔である。ということでいいんだよな。」

「そうよ、契約が破られない限りスドウには私の使い魔として働いてもらうわ。」

「ちなみにその契約って?」

「細かい所は色々とあるけど、ざっくりとまとめると3つね。

 ひとつ。

 あなたは私の使い魔ではあるけど、健康で文化的な最低限度の生活を送る権利が保証されているわ。」


「憲法かよ!」


つっこまずにはいられなかった。しかし話を止めたのがお気に召さなかったようで、リアーノの視線が痛い。


「ごめんごめん。それでどういう保証が?」


「召喚のための魔法陣に組み込まれているのよ。一種の契約魔法みたいなものね。

健康で文化的な最低限度の生活が送れていないと術式が判断すると、召喚者の生命力を全て吸い尽くして使い魔に送るように出来ているわ。」


「怖っ。それってもしかして召喚者は……」


「そうよ、確実に死ぬわ。」


「あぁ、そりゃそうですよねー。それで使い魔はどうなる?」


「そこも合わせて二つ目の説明ね。

使い魔は基本的に召喚者からの魔力供給がある事でこの世にとどまっていられるわ。でもそれ以外に魔力を得る方法があれば消滅する事はないの。例えば召喚者から魔力を吸い尽くすとかね。」


「なるほど、それがさっきの話に繋がるわけね。」


「そういうことよ。それで契約っていうのは使い魔への魔力供給を怠らないようにという内容なの。

 魔力が使い魔に供給されなくなると一つ目と同じ結末を辿ることになるわ。」


 そう言ってリアーノは苦虫を嚙み潰したような顔をする。


「どうした、不満そうじゃないか。」


「そりゃそうよ。こんな契約は魔法陣に直接組み込まれてなかったら絶対に結ばないわよ。使い魔のくせに生意気。」


「おいおい、俺のことが必要だから呼び出したんだろ?大切に扱ってくれてもいいじゃねぇか。」


 口では軽く返事をしているが内心では冷や汗をかいていた。

 リアーノが契約を結んでいなかった場合の事が頭の中に浮かんでは消えていく。自分が悲惨な目に合うのは間違いないだろう。なにかとんでもないことをさせられる予感がした。


 だが契約があるうちは安心だ。そう考えると次第に安堵感が広がっていった。


「それで3つ目なんだけど・・・」


 そう言いながらリアーノが腕を伸ばし、空中で何かを押さえつけるような動きをする。


「えっ?なに急にいいいぃぃてててててててて!痛い痛い痛い!」


 唐突に頭の中で激痛が走る。膝から崩れ落ち頭を抱えて転げまわる内にすっと痛みが消えた。

 何が起きたのか分からず呆然とリアーノを見ると得意げな顔をしている。


「解ったかしら。召喚者は使い魔に対して唯一痛みを与えられる存在なの。だから使い魔であるあなたは召喚者である私に絶対服従よッ!良いわねスドウ!」


「ああそうかい。」


 この子は自分に出来ることを俺に示しただけなんだ。これぐらいの年齢にありがちな傾向だと理解してる。別にちょっとくらい痛めつけられたからといって俺が反抗出来ない訳じゃないんだぞ、なんて言って脅すような事はしないさ。


 心の大きな俺でも少しばかりむかっとした事は否定しないが、そう俺は心が広いから。


「そうなのよ!なら私に対して相応しい態度というものがあるのだと思うのだけれど。」


 使い魔に相応しい態度ね、しらねぇよそんな事。

 ……いやでも待てよ、姫を守る騎士ナイトみたいな感じなら良いかも。男なら少なからず憧れるし、それは俺も例外じゃない。よしその線で攻めよう。


 俺はリアーノの足元で膝をつき手を取る。


「マスター、私はこの身を掛けて貴方を守ると誓いましょう。」


 そう言うとそっと手に口付けをした。


 しばらくその体勢のままで待つが一向に返事が返ってこない。

 ……あれ?俺何かやっちゃいました?いやいや、わかりましたとかよろしく的な事を返してくれるのが普通だと思ったんだけど。


 恐る恐る顔をあげてみるとリアーノは完全な無表情で俺を見つめていた。怖っ。


「あのー、マスター?リアーノさん?おーい、聞こえてますかー?」


 それからカップ麺が優に出来上がるくらいの時間リアーノは動かなかった。



$$$




「あーっと、そろそろ質問に戻ってもいいか?」

「はっ! ええっと、ごめんなさい。……少し考え事をしていて、質問よね私に任せて頂戴。」


 リアーノは少し頬を赤く染めると小さくうなずく。ずっとそんな態度なら可愛くて楽なのにな。

 なんて事を考えているうちにキリッとした顔に戻り俺を睨みつけてきた。


「あなたは使い魔なのよ、調子に乗らないことねッ!分かったらさっさと質問を続けなさい。」


 急に態度変えやがって、一体何を考えているのやら。


「へいへい。それじゃ俺を呼び出した魔力リソースは何なのか教えてくれないか?

 魔力を貯めていた物に関係ある奴が召喚されるんだろ。俺なんかを召喚する物には興味がある。」


「無いわそんな物。」


「……は?」


 自信満々に繰り出されたリアーノの言葉が1ミリも理解出来なかった。


 今そんな物無いって言ったか?聞き間違いだと思いたいがハッキリ言ってたし。

 いやでも魔力リソースが無いなんてあり得ない!召喚に必要な魔力が足りる訳ないし、もし本当に無しで召喚していたら召喚者はとっくに死んでるはずだ。

 リソースがあったとしても物によっては危険を覚悟しなきゃいけないくらい膨大な魔力が必要になるんだぞ?冗談で言ってるようにも聞こえないし……。


「……はぁ?」


「ちょっと、なんで2回言ったのか知らないけど嘘はついてないわよ。」


 いやだってあり得ないry


「だからスドウを召喚するのに使ったリソースなんて存在しないの。まぁ強いて言うならこの船かしら。」


 うんうん、そういうことだったのかー(棒)。なるほど分からん。


「どういう事だ?」


「今私達がいるのは銀河の端、魔素が溢れる霊脈の出口なの。ここにある魔素を宇宙船で吸収して出来た魔力は全て召喚に回したわ。

 それ以外の大部分は私の貯蔵魔力で賄ったの。魔力が半分以下になるまで削られて少し疲れはしたけど。ま、ここまで来てよかったわね。

 それで、そろそろ理解できたかしら?」


 宇宙船が吸収した魔力が多かったのかリアーノの魔力容量が人よりも桁違いに大きいのか、それとも俺を召喚するのに必要な魔力がめちゃくちゃ少なかったのか知らんけど。

 銀河の端に来て1人で召喚するっていう覚悟だけでも……。


「あははははっ!すげぇ、すげぇよ!

 俺が認めようリアーノ、お前は凄い奴だ。」


「何よ、急に褒めても何も出ないわよ。」


「俺はすげぇ奴はすげぇって認める事にしてるんだよ。そうしないと嫉妬してるみたいでカッコ悪いしな。」


「急に笑い出して、一体何なのよあなた。はぁ、……まぁ少しでも私の凄さが分かったのなら良い事にするわ。

 それで?まだ質問はある?」



 最初に一目見た時からだろうか、それとも話をしてみてからか?

 いつの間にか俺は、この小さな体をした勝気な召喚者の事をかなり気に入っていたらしい。

 自然と口角が上がっていくのを感じる。


「さてマスターに最後の質問だ。

 俺は何をすれば良い。」


 リアーノも獰猛な笑みを浮かべると静かに手を握り締める。


「私が目指すのは宇宙一の船乗りよ。スドウ、使い魔は使い魔らしく私に付いてきなさい!」


「おう!」


 なんだか楽しくなってきたな!







$$$





「それで、この船を自由自在に操縦出来るようになれば良い訳だな。」


「だからこの船には"フィンド"って名前があるの、ちゃんと呼びなさい。」


「すまんすまん。んで俺がフィンドを乗りこなせるようになってから船乗りの学校に行くと。

 えっ、乗れるようになってるのに学校行くの?」


「正規の船乗りになるためには必要な事なの。2年間は研修期間が必須らしいわ。

 使い魔がいる船乗りしか入れない学校だから、無駄になるなんてあり得ない。……私の目標の1つだったんだもの、絶対に行くからね。」


 いや、そもそも反対したんじゃないんだが。涙目になるって、そんなに行きたかったのか。


「分かってるよ。資格が必要とかそんな所だろ。

 それでいつまでに乗りこなせるようになれば良いんだ?」


「出来れば1日でお願い。どんなに遅くても48時間以内に出発しないと入学試験に間に合わないからそのつもりでいてね。」


「はぁギリギリだな。もう少し余裕持たせられなかったのか?」


「仕方ないでしょッ!使い魔がいない状態でフィンドを動かすのって凄く難しいんだから。

 基本真っ直ぐに飛ばす事しか出来ないし、魔導兵器も使えないから賊に見つからないようにしないといけないし。」


「そうだったのか。そんな難しい事をやってのけるなんて流石リアーノだな。」


 その時ふとリアーノの俯いた頭が目についた。自然と体が動き出す。


「……はっ!急に頭を撫でるのはやめろッ!」


 ふふっ、そう言いつつも最初は受け入れてたじゃないか。なんて野暮を言うのはやめておこう。

 頑張った奴には称賛と報酬があって然るべきだと思わないか?



 そう、だからこれから使い魔として頑張る俺にもリアーノのさらさらヘアーを触る権利があっても良いと思う。

 ちょうど手が伸びやすい位置にあるんだもの、仕方ないよねッ!


「まぁまぁ、そんなに怒らないで欲しい。

 でだ、時間もあまり無い様だし早速フィンドを動かしてみて良いか?大丈夫、最高の召喚者に呼び出された使い魔は、これまた最高だって事を証明してやるよ。」


「ふんっ!自動操縦の方がマシなんて事にならないように気を付ける事ね。」


「はいはい善処しますよ。」



 早速試してみようと思うのだが、体が覚えているとでも言うのだろうか。どうにもフィンドを動かすのが難しいとは思えなかった。


 まずは自分の体を魔力に変換し、コア(機械に埋まっている青い宝石)と同化させる。そこから全身で手足を伸ばすイメージでフィンド全体に魔力を巡らせ全てを掌握していく。


 ただ流石宇宙船と言うべきか。いかんせん必要とする機械が多く、その機能も多岐に渡っている。

 例えば運行に関するエンジンや推進機の類や、船員の命を守る生命維持装置。更には通信機器やMAP、武装の数々なども掌握していく必要がある。


 どんどん入ってくる情報に使い魔の責任の重大さが身に染み渡る思いだ。


 フィンドを飛ばすためにもやらなきゃいけない事が多くてかなり大変だが、ゲームを嗜む現代人としてはマルチタスクは必須技能。

 ひっきりなしに情報を届けてくるセンサーからは一時的に目を逸らしつつ、移動方法について確認してみると多少の慣れは必要になるが問題なく飛ばせる気がした。ゲーマーを舐めるな。


 簡単に言えばメインエンジンで推進力を作ってサブエンジンで方向転換って感じかな。

 もしかしてこれってヘリコプター的な動き?そう考えると難しい気もしてきた。

 いや、物は試しだ!


 ・・・っとその前に心配性なマスターを安心させるとするか。

 船室のスピーカーをいじって自分の声を出せるようにする。


「あー、テステス。こちらスドウ、聞こえてますかリアーノ。」


 その声で呑気に椅子に座って欠伸をしていたリアーノは急に立ち上がる。


「なにッ!賊の襲撃が来たの⁈」


「ちゃうちゃう。どうしてその結論に至ったのかは気になるところだけどフィンドを飛ばすよってお知らせに来ただけだから。」

 

「早くエンジンをー、ってスドウ?あなたどこにいるの?」


「え?コアの中だけど。」


「こんな時に冗談はやめて。コアの中から声なんて出せる訳が無いじゃない。

 エンジンきらなきゃいけないんだから少しは手伝いなさいよ。」


「は?何言ってんだお前。」


「は?あんたこそ何言ってんのよ。」


 話が全く噛み合っていない。どうやらまだ認識に差があるような。


「あーすまん、一度情報を整理しようか。慌てなくても大丈夫だとだけ言っておこう。

 一回深呼吸してくれるか?俺も……ってここじゃ呼吸なんて出来やしないけど落ち着くからさ。」


「チッ、ふざけてるわけじゃなさそうね。スドウはどういう状況なのか簡単に説明なさい。」


「ねえ深呼吸って知ってる?大きく息を吸って吐くことを言うんだけど。」


「うるっさいわねッ!とっとと説明して。これは命令よ。」


 リアーノは腕を組み目をギラギラさせながらも不安そうにきょろきょろしているので俺は笑いそうになったがセンサーに組み込まれた優秀な演算機が驚きの結果を導き出した。


 睡眠不足



 ああ確かにそうだ。ここまで1人で来たようだし操縦も見張りも1人でこなさなければならない。しかも宇宙空間にたった1人なんてどんなに気丈に振る舞っていたとしても心細かっただろうし、ゆっくり眠れなくてもおかしくない。


 その上召喚してすぐに俺の相手をしてと疲労は計り知れない。

 少し考えれば分かることなのに、全くそんな事考えなかった俺を許してくれ。


「了解、説明する。」


 魔力的なパスを繋げたままでコアの外に出る。


 コアからフッと浮き上がってきた所を見てリアーノは小さく跳び上がり、目をしばたかせる。


「端的に言えばインストールが終わったから声を掛けたって所だな。お分かり?」


「は?そんな訳ないでしょ。最初はどんなに早くても数時間はかかるって、しかもフィンドの容量なら1日がかりでもおかしくないってーー。」


「何に聞いたんだか知らないけど終わっちまったもんは仕方ないだろ。」


「でもたった30分って何か間違ってるとしか思えないじゃない。」


「いやまあ確かに説明書は読まずに始めるタイプだけど命が掛かってる状況でそこまではしないよ。

 インストールするのが早過ぎるって?早くて悪い事なんてないでしょ!良いじゃん1つくらい長所があったって。」


「まあ良いわ。それより、索敵警報器は鳴ってないんでしょうね。聞こえた気がしたのだけど。」

 

「あっ良いんだ。

 じゃなくて警報機か。鳴ってないぞ。多分寝ぼけてただけだろ。

 周囲に別の宇宙船も敵性生物も確認されてないから安心して寝ていてくれ。」


「ちょちょちょっと待って。私寝ぼけてなんていないわよ!」


「いや、おっきく欠伸して今にも寝そうだったの見てるから。でもさ、それだけ疲れが溜まってるってことだろ?

 色々考えてるのかもしれないけどマスターは1人じゃない。出来る事は俺っていう使い魔に命令すれば良い。

 つまり何が言いたいかっていうと、今は休息が必要なんじゃないの?」


 インストール終わったって納得してくれたなら休んでもらわないと。


 リアーノがどんなに顔を真っ赤にして否定しても使い魔スドウ的には女の子が頑張っているという微笑ましい光景にしか見えない。




「ああもう、そんな事わかってるわよ。誰かさんがこんなに早く出てくるとは思わなかったの。」


「さてどうだか。ずっと椅子に座ってて声かけた瞬間立ち上がった奴が休んでいたとは到底思えないね。

 休憩する場所はあるようだし一度横になった方がいい。

 というかもう良い子だから休もう?」


「ハイハイもう十分伝わったから。……でもそうね、あなたは私の物ってとっても良い響きだわ。

 私のスドウはちゃんとフィンドを、ひいてわ私のことを守れるのかしら。」


「それはもう十全に。敵に指一本たりとも触れさせやしないさ。」


「そう。なら私は休ませてもらうとするわスドウ、あなたのその自信を信じる事にします。

 でも必要ならすぐに私を起こしなさい。この宇宙では僅かなことが命取りになるのを忘れないように。」


 それだけ言い残すとリアーノはベッドに向かって行った。

 バフッというベッドに飛び込む音の後すぐにすやすやと寝息が聞こえてくるのをセンサーが捉えた。



 リアーノが寝たのを確認すると俺はコア内に戻る。とりあえず索敵警報機とやらを確認しないとな。


 まぁ確認したところで索敵範囲内には敵どころか小惑星すら無かったんだが。

 後、警報音が《テステステス》っていう間抜けな音だった事を追記しておこう。


 ……うん、悪いの俺だね。



 それにしても宇宙というのは本当に静かだ。

 エンジンや機械が唸る音だけが船内に響く。また船外も星が瞬いて見える以外の変化がない。


 自分が動かなければ変化が生まれない。その事実に多少心細くもなるが今の俺は使い魔としての働きが求められている。


 唐突にこんな所に呼び出されて分からないことも多いが宇宙船の操縦なんて面白そうな事を逃す手は無い。

 ああ、ワクワクが止まらない。



 後にこの2人を中心に大騒動が巻き起こるがそれはまた別の話





END



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最後まで読んでいただきありがとうございます!

この話何回も読み返した作者の感想↓


コレシュキガル (_・ω・)_バァン



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俺は銀河の端で召喚された そう、宇宙船の中に MASK⁉︎ @castlebreak

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