第12話 混沌の未来
一日が経ち、ハルタは朝食をとる為に食卓に来ていた。
「アリーはこの後何か予定あるのか?」
「あるよ。それがどうかしたの?」
「そっか。アリルと観光にでも行こうと思っていたんだけどな……。」
「ごめんね。明日なら行けるはずだから。」
「わかった。約束な?」
「うん。約束。」
約束は出来たが、今日は何をして過ごせばいいのだろうか。屋敷にこもるのも暇だし……。
「エレナ。今日も一緒に出かけるか。」
「はい。デート。ですね?」
「否定はしねぇがここでは言わないで!」
焦りながらそう言うとアリルとアルミナは「でーと」と言う初めて聞く単語に首を傾げていた。
「アリーもアルミナさんも気にしないで……。それより食事に集中しよう。」
「会話を始めたのはハルタだけどね。」
「………」
痛いところをつかれ、黙り込む。ハルタは聞いていないふりをして食事に集中する事にした。
***
食事を終え、ハルタは出かける準備を整え、今はエレナの支度を待っていた。
「お待たせいたしました。」
「おっ、終わったか。」
さすがに二回目のエレナの私服姿には驚かなかった。何回も驚いていてはこの先、やっていけないと思ったのだ。
「よし、それじゃあ行こうか。」
ハルタとエレナは屋敷を出て、昨日行けなかった観光場所へ足を運ばせる。
「すげーでかい橋だな。」
「えぇ。この橋はネルエルの観光地としてとても有名らしいですよ。」
「へー。この橋がねぇ……。」
そう言い、ハルタとエレナは橋を渡ろうとする。が、
「がっ!?」
突然の頭痛がハルタを襲う。
たくさんと観光客がいる中、ハルタはその場に座り込む。
「まじ……かよ!!」
この頭痛の正体はオートフィールだ。つまり、一時間後、ハルタ達に何かが起こる。
ハルタは怒りに歯を食い縛りながらも、未来を確認するため、目を閉じる。
––––––人々の怒声が。悲鳴が。絶望に満ちた声が聞こえてくる。
町はたくさんの魔獣により蹂躙され、人々の死体が目に映る。
それなのに。それなのに何故、騎士や衛兵がいないんだ……。
「ああああぁぁっ!?」
意識が戻され、ハルタは頭を抱える。抱えるしかなかった。
見た時間は短かったが、今まで見てきた未来の中でトップクラスに入るほどの絶望だった。
「人が死んでた……。いっぱい………っ!」
「ハルタ君!?」
エレナもしゃがみ、ハルタを支える。
「大丈夫ですか?」
「––––––あ、あぁ。大丈夫だ。」
ハルタはなんとか力を振り絞り立ち上がる。
「何を見たんですか?」
「……町で人がたくさん死んでた。」
「–––––それは本当ですか?」
「あぁ。こんな冗談言うわけないだろ?」
「そうですね。ごめんなさい。」
エレナの反応を見て、ハルタは今のは言いすぎたと反省する。
「……とにかく、この事をみんなに言わないとな。」
「えぇ、そうですね。」
ハルタは拳を握りしめ、橋の上を走りだす。
不死王の器 カイザ @kanta7697
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