いつから日本は恋愛至上主義の国になったのだろう
恋愛を人間における最高の価値と位置付ける、このシステマティックな思想もどきは、社会のあらゆる面から、絶えず思考停止するよう同調圧力をかけてくるようになった
この薄気味の悪さにどれくらいの人が気づいているのだろう
この優れた作品の筆者は、そのことを『不純異性交遊ヲ禁ズ』というタイトルで、アンチラブコメという表現形態で、見事に喝破してみせてくれた
もちろんそこに従来の簡単便利なテンプレはない
表現者として筆者は終わりなきチャレンジを続けねばならないのだ
パターン通りに書くのがどれほど楽か知っていながら、あえて予定調和を拒絶し、キャラクターのリアルにかける、読者にすらその葛藤はヒリヒリと伝わってくる
あくまで小説という虚構の中で、表現することにとことん真摯でいようとする筆者の創造者としての姿勢は比類なく素晴らしい
この作品がアンチラブコメという、アヴァンギャルドなジャンルの星となることを願ってやまない
完全にプロの作品だと思いました。
小説の舞台は男女の交際を徹底して取り締まる校則に厳格な学園。そこに繰り広げられる物語は、決して派手なものではなく、常温で生きている十代のドラマでありながらも、筆者の透き通った真っ直ぐな表現力によって、ぐんぐん物語に引き込まれ、気付けば夢中で読み進めていました。その文才にはただただ脱帽です。敵わないと思いました。
青春小説というとラブコメがメインですが、この作品は誰もが通ったことのある何気ない日常の風景が細やかに描き出され、ストーリー展開も無理がなく好感が持てました。
大恋愛も大事件もない、平凡な普通の高校生活だって、それぞれにとっては色々生きづらさや切なさがある、自分が送ってきた青春時代とは全く違うものであるにも関わらず、共感し、懐かしく感じることの出来るこの作品は、間違えなく書籍化される価値のあるものだと思います。
作者の想いが優しく伝わってくる珠玉の短編集です。是非多くの方に読んでもらいたいと思い、レビューを書かせて頂きました。