人と同程度の意思や思考能力を持つロボットを、世間でロボット小説を書いている人々の大半が所有していない以上、現在までに書かれた自律思考型ロボットのほとんどは人間をモデルにしており、それ以外の幾らかは犬か猫かインコ辺りをモデルにし、残りは完全な妄想で書かれています。
そうしたロボット小説が結果として人間(あるいは犬/猫/インコ)を描き出してしまうのはよくある話ですが―――アシモフ+ディケンズの明示的パロディである本作において、その要素は支柱の1本を担いながらも「敢えて見せつけるべきテーマ」ではなく「前提的な事実」となっています。これが作中で幾つも交錯する対称性を支えている。
人のよい人間とトボけたロボット、対称性の妙、それらを綴るテンポの良いザッピング。非常に纏まり良く面白い短編小説です。