ある村で起こった大量殺人

とある田舎の村で起こった「八つ墓村」を思わせる大量殺人。その真相が書かれた小説を著者の「私」が編集部に持ち込みそれを編集者と共に読んでいくという構成になっていますが、本作に登場する寝訃成と呼ばれるゾンビ的な存在の設定が面白いですね。いびきをかき歯ぎしりをしながら襲ってくる姿が不気味です。しかもゾンビと違って武器を使い連携を取りながら組織的に襲ってくるので非常に厄介ですね。何処にでもいる田舎の村の住人といった格好の姿で襲ってくる様はゲーム「サイレン」を彷彿させます。そのなかで複数の登場人物の視点でサバイバルが語られますが、どのキャラも非常に人間的で感情移入できますね。結末は最初に提示されていますが、それでも彼らに生き延びてほしいと手に汗握りながら読めますし、終盤になるにつれて次々と退場していく姿に悲しみを覚えます。
また、一種のミステリーにもなっていて幕間にも本編と幕間にもトリックが仕掛けられているのも面白いですね。終盤の種明かしによってそれまでの本編の価値観が一気にひっくり返される所は小説「地球最後の男」を彷彿しました。
非常に楽しめたミステリー・サバイバル・ホラーでした。