地震

彼女に続いて僕は深く潜った。

どこまでも続く海をひたすら。

しかし、不思議と息の苦しさもないし、深海のはずなのに目はよく見える。

気味の悪い、黒色の口の多いな魚がすぐ横を泳いでいった。


彼女に手招きされて降り立ったところに確かにバルブはあった。

 「ゔっヴェーぼーぜ」

掛け声とは思えない掛け声がかかり、僕はバルブを思いっきり回した。

くぐもった音がして、あたりから土煙がぼわっと立ち上った。視界が不明瞭になり少し息が漏れた。


 彼女が僕の手を引いて上へと上がっていく。

 海面から顔を出すと海が激しく揺れていた。

 「ありがとう。これで終わり。帰ろっか」そう彼女は言って、泳ぎ始めた。


 海岸につくとここでもまだ、波は激しく上下していて、僕の服はびしょびしょになっていた。ゴミの山にひっかかって流れていなかったことは不幸中の幸いだろう。


 びしょびしょになった彼女と僕はまた駅に向かって歩いた。

 「こうやって、ちきゅうのメンテナンスをしてあげないと、たまに地球が耐え切れなくなって地震が起きちゃうんだ。さっきよりももっと強い揺れが起きるんだよ。君と私は今日、一日だけ、世界のヒーローなんだよ」

 そう言って彼女はにこっと笑った。

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空想癖 タケノコ @nanntyatte

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