地震

 頭上で、

 「カー」とカラスが鳴いた。

 彼女はそれをじっと見つめている。


 「どうしたの?」

 「いや、昔ね…、ピアノ教室に行くときにレッスンかばんを忘れたことがあったの

 で、行く途中にそのことに気が付いたんだけど、その時、頭上でアホーって鳥が鳴いた気がしたの」

 「アホウドリはつかまりやすくてアホだからアホウドリなのであって、アホー、アホー……

 とは鳴かないんだよ」


 彼女は僕の顔を目を丸くしてみている。

 「そんなこともしらなかったの?」

 「いや、知ってるよ。それくらい」

 「嘘が下手だな」

 「いや、君みたいな鳴き方だったら私は恥ずかしくならなかったのかなと思っただけ」

 これは…分がわるい。


 「それで、ここに何をしに来たの?」

 慌てて、話題を変えた。

 「ああ、アホウドリに鳴かれてしまうところだった」

 しっかりしているんだか、していないんだか…


 「ここの下にバルブがあるの

 それを右回転させると海溝がひろがって、左回転させると海溝が狭まるの」

 そんなことができるのだろうか…

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