地震

 彼女から、とつぜんメールが届いた。彼女からなんて珍しい。というか、初めてのことではないだろうか。

 「10時に士仁駅集合。

  水着を忘れずに」

 あいにく、断る理由がない。彼女に返信を送ったところで帰ってこないだろうから疑問は水着と一緒にリュックに押し込んだ。


 「ちゃんと来たわね」

 「ああ、突然だね。今日は何をするの?」

 「海に入って地球のメンテナンスをするの」

 「メンテナンス?」

 そう言いながら彼女は海岸のほうへ進んでいく。


 「説明するのは難しいんだ。君はただ私についてきて、作業を手伝ってくれればいいの」


 彼女についていった先にあった海岸はあまりきれいとは言えず、快晴であるのに、人はまばらだった。しかし、彼女はお構いなしに、着ていたワンピースを脱いで水着になり、海の中に入っていく。スクール水着であるところが彼女らしい。しかし、今日はまだ、5月なんだよ。例年より暑いとは言え、海に入れるような気温ではない。


 「ほらついてきて」

 そういう彼女に断ることができなかった僕は服を脱ぎ棄てて、あらかじめはいておいた海パンだけになって海に飛び込んだ。


 「あれ、寒くない」

 驚く僕の様子を彼女は楽し気に見つめていた。


 「ええそうでしょう。まあ、気にしないで、ついてきてね」

そう言って彼女は海に潜っていった。

 彼女はどんどん進んでいってしまう。

 

 とても長い間、彼女は猛スピードで泳ぎつづけていた。どこまで来たのだろう。さすがに僕も彼女の水着が見飽きてきた。


 ふいに彼女がスピードを落とし、海面へと向かっていく。


 プハッ、久しぶりの空気が体に入る。彼女も隣で同じように大きく息をしていた。


 しかし……、陸が見えない。

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