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 体育館に戻った俺は、櫻井について、そしてかつての自分について考えている。

 結局のところ、俺はただ飲み込まれていたのだと思う。

 あの傲慢な青空の下では、どれだけ強い星の輝きも塗り潰され、青く均されてしまう。その健全さを疎むことはできても、逃れることはできないと思っていた。そうした閉塞感こそが春の病理だった。

 だからこそ俺は失敗した。櫻井のように正面から対峙することも、かつてのクラスメイトや教え子の大多数のように安易な正解に流されることもできずに、ただ消耗してしまった。でもそれも、もう今の自分が気にすることではないと思っている。

 春は終わる。春などなくても夏は来る。夏の病理は、すこしだけ怠いけれど、それほど深刻ではない。夜空に輝く星群だって、特に意味もなく輝いているわけだから、それに倣ったっていいだろう。そうしてまたいつしか遠く過ぎ去っていったこの季節に、自分の記憶はどんな染色を施すのか、それを見届けてからでも、何ひとつ遅くはないのかもしれないと思う自分がいる。

 だから、とにかくひとまずは、この校史に残るだろう文化祭の後始末が明日からの多忙さを加速させることについても、できるだけ楽しんでやろうと、薄暗い体育館の中、一人そう思っている。



 その日、体育館に星が降った。

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夏と星群 遠原八海 @294846

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