3日目

 昨日、警部とあんな別れ方をしてしまったために顔を合わせにくい。

と思ったが、少ししてから今日が月曜日なことに気づく。羽場は一応学生なので学校がある。羽場の両親は息子に対してあまり興味がない。

ご飯を一緒に食べたのはいつだったか。家に帰って親が反応したのはいつだったか。遊園地に行こうと誘ってくれたのはいつだったか。思い出すことすらできない。最後に会話をしたのはいつだったか。羽場が「おはよう。」と話しても無視をする。小学生ぐらいのときはあった返事も、5年ぐらい前から返事がない。最初は戸惑ったが、なれたもんだ。いつものように、鞄をとり「行ってきます。」という。もちろん返事はしない。

 ここだけの話、羽場は高校時代いじめられていた。彼は両性愛者であった。最初、彼は同じ性別を好きになることに違和感を覚えていた。男なのに男を好きになるのはおかしい。ぼくが好きなのは絶対女だ。実際に俺は恭華と付き合っている。これは、なにかの病気だ。と、何度思っても頭の中には男のことも多少あった。違和感が当たり前に変わったのは、7年前だ。偶然、つけたテレビでLGBTについてふれていた。彼は少数でありながらも自分と同じ体験をしている人をしり、自分が病気ではないことをしり安堵した。それと同時に男の人を見る目が変わった。ある時、高校の青春の1ページをめくるべく、男子生徒に告白した。生まれて初めての同性への告白だった。結果は分かっているが、心音は止まることを知らない。生命活動をする呼吸のように、当たり前に振られた。羽場は告白現場をあまり見られたくなかった。失敗するのが怖かったからではない。世の中に両性愛者がいるとはいえ、少数派だ。こんなとこを見られたら人生終わったもんだ。本気でそう思っていた。その光景を偶然みたものがいた。今回殺された伊藤るかだ。伊藤は、すぐに人に言いふらしからかい手をあげるタイプだった。対し、羽場はおとなしい生徒だった。例外もなく、羽場も同じことをされた。その日から、上履きを隠される、大事な情報が自分だけ伝わらない、トイレで水をかけられる、蹴られる、パシられるは日常となった。面白いもので、誰も無視はしてこない。そんな中、話しかけてきたのが筒森恭華だ。

「大丈夫?大変だね。」

声はか細かったが、はっきり聞こえた。 

きれいな人だな、ぼくが傷つけていいわけがない。それに、伊藤さんたちの仲間に決まっている。こんなこと言ってほんとは馬鹿にしてるにきまっている。

「まぁね、、これで伊藤さんたちが満足するならなんでもいいよ。」

気持ちとは裏腹に声がでていた。羽場は自分が痛い思いをして、他の人が傷つかないんだったらいいと思えるほど心の優しい人間だった。同じように筒森は優しさに包まれたような人だった。伊藤は今まであったことを全て筒森に話した。信じてはいけないと思っているのに話してしまった。全て聞き終わったあと、筒森の目から光が。

「今まで辛い思いをしてたんだね。私が今までの君の辛さをわかることはできない。でも、ほんとに辛かったら頼ってね。」

いつになく、真剣な目で筒森がいった。人間とは楽なもんだ。あれだけ信じないと決めていたのに、心優しい言葉をかけられると信じてしまう。その後、筒森を好きになるのにそう時間はかからなかった。

筒森と付き合い、たまにデートをする。クラスの奴らにいじめられる。そんな日々を過ごしながら2年、ついに無視され始めた。きっと、自分に構うのに飽きたのだろう。それと同時に筒森がイジメのターゲットになったという話をきいた。ぼくと付き合ってるのがばれたらしい。いじめられていた側だからこそ、辛さがわかる。助けに行かなくれば、と頭では分かっている。でも、体が動かないのだ。

「君、あの子を助けようとしてるの?やめときな。」

少し力の強そうな子がぼくの目を見てそう言った。


高校時代の懐かしい思いにふけりながら、ぼくは登校する。


学校はこんなに遠かったっけ。こんなところにコンビニなんてあったっけ。そもそもこの道は高校への道ではないか?

大学ヘ行かなければ行けないのに、高校ヘ行こうとしてしまった。道を引き返したとき恭華らしき人を見つけた。恭華にしては少し大人びていた。羽場はその人にことが気になりあとをつけ始めた。

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囚われの1週間 うらら @urara_0621

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