君のいない世界

@amy1112

第1話 みぃが最強能力者に!?

この世界には能力と言うものがある。

所謂(いわゆる)異能の力ってやつだ。

それが使える人間もいれば、何も使えない人間もいる。

というよりも、使えない人間の方が多いのが事実だ。ゆえに、能力者は貴重なのだ。

だが、少し問題がある。もしも、その貴重な能力を得た人間がどうしようもない人間だったら、そしてその人間が暴れたりしたら、その時はもう大体の人間が止めることが出来ない。そう、同じ能力者以外止めることが出来ないのだ。

そんな二種類の人間が入り交じるこの世界で僕こと、龍恩寺(りゅうおんじ) 望來(みらい)は今を生きている。




「なんでお金を増やす能力が私には無いのかしらねぇ〜」

「そんな能力あったら終わるぞ」

と、僕は友達の東雲(しののめ)霊奈(れいな)とそんな会話をしながら街を歩いていた。

「どう考えてもこんな妙な能力あっても金にならないんだからさぁー、だったら、そういう能力が欲しかったもんだわ。」

「・・・また今月ピンチなのか?」

「あたりまえじゃない、金持ってたらこんなこと言わないわよぉ」

「確かにな、少なくとも金持ってる奴の発言じゃないことは確かだ。」

「でしょ?つまりそういうことよ。なーんで私には空を飛ぶ程度の能力しかないわけー?意味わかんないでしょ。」

「・・・能力を貰ってるだけ感謝だろ。この世界には能力を持ってない人間なんてざらにいるんだからな。」

「けど、あんただって口癖のように愚痴を言ってるじゃない。こんな能力いらなかったってさ。」

「いやお前、僕の能力ならそう考えたって当然だろ。」

「それでも、能力貰えてるんだったらグチグチ言わない方がいいんじゃないの?」

「お前は空飛べるっていう利点のある能力だからいいじゃないか。それに対して僕なんて、」

ため息をつきながら、

「確かに能力としてはめちゃくちゃ強いけどさぁ」

「強いんだったらいいじゃない。能力を使ってしまえばあんたが最強なんだからさ。ま、そんなこと言ってたって意味ないし、この辺でやめときましょうか。」

「だな、無駄な議論だしな。」

「というかさ、なんか中途半端よね、」

「何がだ?」

「能力者ってさ、そんなに少ないわけじゃん?けど、全然いないわけじゃない。1000人のうち1人くらいいるレベルってわけじゃん?」

「まぁ、割合的に見たらそんくらいだろうな。」

「なんかそれじゃ特別感ないわよねぇ、」

「・・・お前、そんなの求めてたのか。」

「あたりまえじゃない。10万人に1人ならまだしも、1000人に1人ってねぇ・・・

なんか、結構希少価値が薄れてるわけじゃない?」

「そうかなぁ、1000人に1人でも十分希少価値高いと思うけどな。」

「あんたはそう思っても私はそうならないの。つまり、あんたはその程度の人間だってことよ。」

「あれ、なんで僕馬鹿にされたんだ?」

流れるように馬鹿にされてしまった。何故だ。

「子供の頃はテレビとかに出てたりしてチヤホヤされてたけどさぁ、今となっては私の能力も薄れてきちゃってるし、チヤホヤされなくなっちゃったのよねぇ。」

「所謂過去の栄光ってやつだな。」

「悔しいけどそういうことなのよねぇ。私の能力なんてただ空飛べるだけだし。それに、ありがちな能力だしね。」

「だが、僕からしたらその能力めっちゃ便利と思うけどな。だって空が飛べるんだぞ。ロマンしかないじゃないか。」

「あんただって同じことできるじゃない。」

「いや、出来ねぇよさすがに。空を飛ぶのは絶対無理だ。」

「そうかしらねぇ、私は案外いけなくもないと思うんだけど、あんたってテレビにも出たことないし、チヤホヤもされてないし、認知もされてないわよね。」

「まぁ、僕がそういうのバラしてないってのもあるけど、」

「ま、あんたのその能力がバレたは確実に引っ張りだこでしょうからねぇ。そんなヤバい能力、正直羨ましいわよねぇ。」

「じゃあお前僕の能力が欲しいって言うのか。」

「正直要らないわね。一日貸してくれる程度でいいかも。」

「・・・はぁ、なんで僕はこういう能力になったんだろう。」

と、僕が肩を落としながら歩いていると、その瞬間、甲高い絶叫と共に轟音が響き渡った。

「・・・おっと、ややこしい事が起きちゃってるみたいねぇ。」

音がした方向に視線を向けてみたら、なぜか建物が倒壊してしまっていた。普通の人間だったらこんなことが出来るわけないし、、

「能力者が暴れてるっぽいなぁ。」

「んじゃ、あんた頑張りなさいねぇ。」

「なんで僕に任せるんだ。」

「だって私は空を飛ぶ程度の能力よ。戦闘ってよりサポート的な性能をしているんだから勝てるわけないじゃない。それに対して、あんたは完全に攻撃に特化してるんだから、どう考えでもここはあんたが対処すべきでしょ。」

「なんだけどなぁ、わかるだろ?僕は能力を使いたくないんだ。」

「知ってるけど、じゃあこのままこの騒ぎをほっとくっていうの?そんなことしたら被害もっと出るんじゃないかしらね。」

「痛いとこ突いてくるな。お前。」

「あたりまえの正論を述べているだけよ。少なくとも私が強かったら対処してるけど、私弱いもの。だから私もあんたに頼るしかないってこと。やってくれるわよね?」

「わかったよ。対処してくればいいんだろ?大事になる前にパパッと終わらせるさ。後の始末的なものは任せたぞ。」

「ま、そんくらいはしてあげるわよ。ほら、さっさと止めて来なさいって。能力者は能力者にしか止められないんだからね。けど、あんたの能力は能力者でも止められないヤバい能力なんだから。」

「止められるやつは止められるだろ。んまぁ、これまでの人生の中で僕を止められた奴なんていなかったけどな。」

予め(あらかじめ)宣言しておくと、僕の能力は多分最強だ。最強だし、誰にも手をつけられない。そういうもんだと思う。だからこうやって能力者が暴れていても自信満々に介入することが出来る。

故に僕はその暴れている能力者に告げた。

「こんばんは、少し手合わせをお願いしてもよろしいですか?」と。

そっと一言、笑みを浮かべながら、僕は能力を発揮するのだった。

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