◇その5.おたのしみはおあずけだ

 あの隊長の来訪から一週間が過ぎた。

 あの時もらったいくつかのスキル(?)のおかげで、俺達──というか主に俺の苦労(変身場所探し)が多少なりとも軽減されたのは、なかなかありがたかった。


 ちなみに、昨日は、背中の甲羅に2本のバズーカのようなものを背負った亀型妖怪獣、通称バズーガメが出現した。


 隊長にハッパかけられたのもあってか、『こういう相手こそ、遠距離からの撃ち合い、つまりわたしの出番ですね!』と張り切っていたメイデンには悪いが……。


 俺はマイクロ状態の光の巨人♀に変身したまま、バズーガメの背後にテレポートして巨大化、そのまま蹴たぐりを入れてひっくり返し、腹部を見せてジタバタしている妖怪獣相手にストンピングから喉元への手刀でアッサリとどめをさした。


 『がーーーん!! わ、わたしの出番がぁ……』

 意気込みが空振りに終わってショックを受けるメイデン。


 「いや、相手の得意戦術につきあってどーするよ。流れ弾が出たら周辺地域の被害も甚大だし」


 俺としては極めて正論のつもりだったんだが、アッチはそうは受け取らなかったらしい。

 落胆のあまりぷち引きこもり(精神の中でそう言うのも変だが)状態になってやがる。


 「ふむ……ま、ちょうどいい機会か」

 不貞寝(?)中の彼女をヨソに、俺はちょっとした実験を試みようとしていた。


 幸いにして本日は日曜日、さらに好都合なことに家族も各自がそれぞれの理由で出かけていて、この家には夕方まで俺しかいない。


 ──となると、若い男(ただし彼女無し)がヤることと言えば、アレに決まっているだろう?


 ここんとこしばらく、コイツ(メイデン)の横槍があって、そのテの事にはご無沙汰だったからな。

 それに、個人的にも試したいことがあるのだ。


 あの時、ゾッさんが俺を民間協力者として正規登録してくれたおかげで、俺は人間体♂の時だけでなく、光の巨人♀状態でも(本来の持主たるメイデンの許可なしに)、身体の主導権を握ることができるようになった。


 そうなってから初めて変身して気づいたのだが──身体のフィット感が段違いなんだよ、これが。

 たとえるなら、今まではGガ●ダムのモビルトレ●ス方式で動かしてたのが、今度は某ナ●ヴギアを使って普段の自分の体同様、違和感やタイムラグなしに動かせるようになった感じ? 五感伝達の正確さも完璧だ。


 とは言え、いくら「主導権がある」と言っても、本来の持ち主とひとつ身体の中、精神同居している以上、あんまし無茶なコトは("同居人"の目もあるし)できない。


 ──が!

 裏技的なモンがあったんだよ、コレが。


 さて、改めて考えてもらえば分かると思うが、人間体の時の主導権は俺が持つ(ただし睡眠中など意識がない時はメイデンも動かすことは可能)ということは、「人間から光の巨人♀への変身」を行うのは、当然俺なワケだ。


 で、現状、光の巨人モードになっても、そのまま俺は身体の主導権を握れる。しかも、そうやって俺が主導権を握ってる時は、メイデンの意識を一種の睡眠状態にしておくことも可能なのだ。


 これは、戦闘中横からゴチャゴチャ言われて気が散らないようにという隊長さんの配慮なんだろうが……フッフッフッ! 

 (性的)好奇心旺盛な地球人の若い男としては、ヤるしかないでしょう。


 すなわち……Mなんたら星雲人の女体探求を!!


 というワケで、今俺は、身長160センチくらいの等身大にマイクロ変身したうえで、姉貴の部屋の姿見の前に立っていたりする。


 ふぅむ。巨人状態だったから、今までじっくり「自分の身体」を見たことがなかったけど……こうやって間近で見つめると、想像以上にエロいな!


 銀色の地に赤いラインの入った肌は、歴代の光の巨人ヒーローとほぼ同様とは言え、身体のラインがまごうことなく「女性」を主張している。


 巨乳というほどではないが、掌サイズに形よく膨らんだバスト。

 ウェストは女らしくくびれつつも、甘い物好きなせいかちょっとだけポッコリしたお腹。

 人間なら間違いなく「安産型」と揶揄されるだろう大きめのヒップと、ムチムチした太腿。


 敢えて言おう。「こりゃ、たまらん!」

 そのまま床に座り、足を肩幅よりやや広めに開いた俗にM字開脚と言われる状態で腰を下ろす。


 逸る気持ちを抑え、まずはその形の良い乳房(?)に手を伸ばしてみたのだが……。


 「あれ? 想像してたほど気持ちよくないな」


 無論、絹ごし豆腐のようなバストを揉んでいる手触り面の気持ちよさはあるのだが、触られている側としては、性的快感というよりむしろマッサージによる心地よさに近い。


 ちょっとガッカリしつつ、今度は後回しにした股間の方を「探索」してみたのだが……。


 こちらも、ピッタリ閉じているせいか小指すら第一関節の半分くらいまでしか入らないし、当然快感とは程遠い。せいぜい「ちょっとくすぐったいぞ」くらいのものだ。


 (あ! そう言えば……)


 昔、何かの本で読んだ記憶があるな。Mなんちゃら星雲人は、大昔は俺達地球人と酷似した容姿をしていたのだが、ある時、特殊な人工太陽を開発して惑星上に設置したことで、徐々に現在のメタリックな質感の身体に何万年かかけて進化したのだと。


 で、その進化の過程で、消化器官その他が退化したらしい。「退化した器官」の中には、どうやら性器や性感帯も含まれていたようだ。


 飲み食いする必要がないから食道楽が廃れ、裸でいても平気な身体だから衣裳道楽が廃れ、性的欲求がないから風俗関連の文化も廃れたわけか。道理で光の巨人にストイックな正義漢が多いワケだ。


 ともあれ、こうして俺の「第1次ウルトラメイデン女体探索プロジェクト」は、はなはだ不完全燃焼な結果に終わった。


 (まがりなりにもヒーロー、悪いコトはできんって話なんかねぇ)


 ま、痴的好奇心(誤字にあらず)が満たされただけで、今回はヨシとしましょうかね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

巨大ヒーロー(♀)に変身できるようになったけど、コレジャナイ感がひどい 嵐山之鬼子(KCA) @Arasiyama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ