賭博王ブレイバー

アリエッティ

勝てないから剣を置きました。

 勇者学校なるものに通っていた。

大都市グレイミルでは魔王を倒す逸材となる勇者を育成すべく教育期間をつくり日夜そこで剣の鍛錬や魔法学、魔物の基礎知識を教え込まれた。


「いくぞ、一発勝負だ。」

かくいうオレもそこに通わされ、一応は卒業もした。だがいざ街の外に出てみれば魔物が強いのなんのって。成績はそこそこ良かった筈だがいかんせん剣筋ってのが悪いらしい。

「いいか?

でかい魔物ってのはそれほど隙が広いってことなんだ、ならそれを突いて押し広げていきゃあ...」

説教を垂れる奴もいた。

「それでも立ち向かえ」「諦めるな」

どこで覚えたかわからない根拠のない〝勇気〟とやらを剣よりも高く掲げて吠え散らしてきた。

「ほら、大当たりだ」

だがオレは剣を置いた。向いてない事はしなければいい、直ぐに悟った。


「凄いっスよ旦那!

全的大当たりじゃないっスか、オレたちにも教えてくださいよ!」

「ダメだ、素人がやれば大赤字だぞ?

特に海賊なんて連中にはな。」

持ってた剣を売ってやけくそで入ったカジノでまさかの大当たり、競った相手が偶然手を焼くイカサマ師だった事もあって店からも感謝された。

「魔法の成績は言うほどだった筈なんだがな。」

魔物は嫌いだが、バトルって感覚は嫌いじゃねぇ。常にヒヤヒヤしてるがな


「さて金も入ったし、良い酒でも呑みにいくかぁ。」

 酒場は基本的に仲間集めの集会場だがオレにとってはただの憩いだ。血相をかいた勇者の顔を肴に酒を愉しんでる。今日も人が大勢いるなぁ。

「やぁカジノマスター、今日も勝ち試合だったかい?」

「まぁな、なかなか楽しかったよ。」

「普通はギャンブルなんて身を滅ぼすものだけど、アンタは違う。勇者だったときよりも良い顔してるよ」

「そうか?

なら本望だ、天職だからな。」

 勇者は報酬として、倒した魔物に応じてゴールドを支給される。魔王を倒せばそりゃ莫大な資産になる訳だが正直オレはその額を一つ目の街で既に手に入れてる。かといって豪遊する事は無い、こうして酒場で馴染みの酒を呑んでゆっくりするくらいの余暇が丁度一番落ち着く。


「それじゃオレは行くぜ?

また呑みにくる、同じ酒をな。」

「へへ、待ってるよ」

慣れたもんだ、カジノに飽きたらバーテンでも始めてみようか。


「あの..。」「ん、なんだ?」

珍しいな、オレに話しかけてくる奴は

「一緒にパーティを組んで下さい。」

「......」なんだ、勧誘か。

「悪いな兄ちゃん。オレは勇者じゃないんだよ、他をあたって貰えるか?」

「…知ってます、だけど他の人は組んでくれなくて。修行も積んだし、魔物を倒してみるんですけど、装備が弱いし武器もガタガタで役に立たないからいらないって..。」


「……。」

なるほどな、力を借りたいってのはそういう事か。...なら協力できるかもな

「坊主、ついて来い。

とびきりのアーマーを揃えてやる」

「え?」

「武器も身素晴らしいな、強い武器を買おう。それにいい鍛冶屋を知ってる何本か打って貰え。」

「いや、でも..」

「気にすんな、金ならある。それも魔王レベルの財力だ」

「..協力してくれますか?」

「ああ構わねぇ、力貸してやる。」

要は考えようだ。

金も力も剣も全部、使い方によって側面を変える。悪いがバーテン、お前の後を継ぐのは無理だ。

「喜べ坊主、近々防具や武器は取り寄せ放題になるぞ。」

「本当ですか!?」「ああ、マジだ」


剣を持たなくとも、魔王を倒す方法を見つけてしまったからな。

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