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第491話 F級の僕は、ユーリヤさんの覚悟の言葉を聞く
第491話 F級の僕は、ユーリヤさんの覚悟の言葉を聞く
6月19日 金曜日6
約30分後、シードルさんの屋敷、僕に割り当てられた部屋の中で、ついにユーリヤさん達とクリスさん、そしてアリアとの対面が実現した。
そしてお互いの自己紹介を含めた簡単なやりとりの後、ユーリヤさんが今後どう行動するべきか、自身の考えを披露した。
「私は
モノマフ卿との面会が実現した場合、
『“エレシュキガル”
自分と共に戦ってくれたルーメルの名誉
州都モエシアの地下にて、禁呪の
を伝え、同時に州都リディアにて、大々的に凱旋式を挙行したいと申し出る。
クリスさんが口を開いた。
「つまり、“エレシュキガル”討滅の功をモノマフ卿に譲るって事かい?」
ユーリヤさんが
「そうです。同時に、キリルの名誉回復も申し出ます」
「なるほどね……」
クリスさんが
「皇太女殿下って、顔に似合わず、結構、いい性格しているよね?」
ユーリヤさんが澄まし顔で
「お褒めに預かって光栄です」
二人で
「あの……ちょっといいですか?」
僕は思わず二人の会話に口を挟んでしまった。
ユーリヤさんが笑顔を向けて来た。
「どうしました?」
「すみません、途中から話が見えなくなりまして……」
「あら、どこからですか?」
「具体的には、凱旋式がどうってあたりからなんですが……」
僕の最初の理解では、ユーリヤさんは人に先んじて“エレシュキガル”を討滅する事で、自分の威信を高め、
実際に州都モエシアに向かう直前、周辺の帝国関係者達に見せつけるかの如く、『“エレシュキガル”征討軍』結成の式典を大々的に
それが急に凱旋式を(ここトゥマではなく)州都リディアで行うという話が出てきて、なおかつ、クリスさんによれば、それは“エレシュキガル”討滅の功をモノマフ卿に譲る事を意味するのだという。
凱旋式と功績を譲る事がどう結びつくというのだろうか?
そもそも、“エレシュキガル”関連で、
「功績は、そのままだと単なる自己満足の産物で終わります」
ユーリヤさんが、微笑みを浮かべたまま言葉を続けた。
「出来るだけ高く売らないと」
「高く売る? もしかしてその功績を譲るから、ユーリヤさんの味方になって欲しい、と交渉するって事でしょうか?」
首を傾げていると、クリスさんが僕等の会話に加わってきた。
「恐らくそこの皇太女殿下は、凱旋式を州都リディアで行う事で、今回の『“エレシュキガル”征討軍』を全面的にバックアップしていたのが、実は
「そうなんですか?」
僕の問い掛けに、ユーリヤさんが微笑みを浮かべたまま
「でもそれだと……」
ユーリヤさんは、本当に功績を奪われ、
心配顔の僕を見たクリスさんが、大笑いをした。
「はっはっは、だから僕はそこの皇太女殿下は、いい性格しているって言ったんだよ」
「?」
「ほら、僕達
揉めたというか……
まあ、その件については、ユーリヤさんにも
「要するに、皇太女殿下は、功績と一緒にその揉め事もモノマフ卿に押し付ける気満々って事だよ。
ようやく僕にも話が見えてきた。
モノマフ卿としては、功績を譲られ、長男の罪を赦され、さらに凱旋式まで挙行してしまえば、引っ込みがつかなくなる。
その状態で、実は
なぜなら、ユーリヤさんが疑われるという事は、“神輿”として担いだ(という事になっている)自分が疑われるという事を意味するし、さらにもし、ユーリヤさんを切り捨てなければいけない事態になれば、それは棚ぼたで手に入った(と思っていた)大功を自ら放棄し、面目も丸つぶれになる事を意味するからだ。
結局、好むと好まざるに関わらず、モノマフ卿は“ユーリヤさんの味方”として動くしか道が無くなってしまう。
「話を続けてもいいですか?」
ユーリヤさんは、僕達が
「全てが思惑通りに進めば、という前提付きですが……」
凱旋式が終わった段階で、
同時に、ヴォルコフ卿への対処はモノマフ卿に“一任する”、とお墨付きを与える。
なんとなれば、確かな証拠も無く“言いがかり”を付けてきたヴォルコフ卿には隠居してもらって、より穏健な考え方の息子――例えばゴルジェイさん――に跡を継いでもらい、その彼にモノマフ卿の親族の女性を
その間に、ユーリヤさんは当初の計画通り、クリスさんの転移魔法で帝都に転移して、病床に伏しているという皇帝陛下への面会を試みる。
クリスさんが質問を投げかけた。
「面会が
珍しく言い
「既に意思表示できる状態ではなくなっているかも? ですよね?」
「ま、そういう事なんだけどね」
恐らくユーリヤさん自身ですら抑えきれなくなったのであろう、激情が
しかしそれは彼女が大きく息を吐くのと同時に消え去っていた。
「私は父に会うためなら、手段を選ばない覚悟です。なんとしても父に会い、生きてさえいて下されば、タカシさんの持ってらっしゃる『賢者の小瓶』による奇跡に
ユーリヤさんの両の瞳に、確かな覚悟の色が宿るのが見えた。
「戦います。膿を出し切らなければ、この国は決して変わる事は出来ないでしょうから」
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