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第492話 F級の僕は、なぜかとても疲れてしまう
第492話 F級の僕は、なぜかとても疲れてしまう
6月19日 金曜日7
結局、大筋としてはユーリヤさんが考えている方向で動く事になった。
「さて、硬い話はこの位にしておいて……」
ユーリヤさんが、
そして改めてアリアとクリスさんに声を掛けた。
「お二人は、今日の午後……
「特に何も無かったよね?」
アリアがクリスさんに声を掛け、クリスさんがそれを肯定した。
「別に予定は無いよ」
「では、せっかくこうして知り合えたのですから、午後もう一度お会いして、お茶でも楽しみながら、今度はのんびりお話してみませんか?」
「そうだね……」
クリスさんが僕に視線を向けて来た。
「タカシ君は今日の午後、何か予定入っているのかい?」
午後……
確か日本時間の午後6時半、こっちの時間だと、午後2時半から、高級ホテルで井上さんにイスディフイの事を伝えて協力を求めるって企画が入っていたはず。
「すみません、ちょっと出掛ける用事が……」
アリアが何かに
「あ、チキュウに戻るんでしょ?」
「チキュウ?」
耳
「タカシ殿、チキュウとは?」
「あ、え~とですね……」
この場に同席しているのは、僕、ユーリヤさん、クリスさん、アリア、ララノア、ターリ・ナハ、そしてボリスさん、ポメーラさん、スサンナさん、それから僕達の会話に全く関心無さそうな雰囲気で、窓辺でふわふわ浮いているオベロン。
この中で、ボリスさん、ポメーラさん、そしてスサンナさんの三人は、僕が地球とこの世界を行き来している存在だという事をまだ知らない。
仕方ない。
この三人はユーリヤさんにとって、腹心中の腹心って感じだし、この際、説明しておいた方がいいのかな?
そう思った僕が口を開きかけたタイミングで、ユーリヤさんがボリスさんに声を掛けた。
「タカシさんが時々物品を取りに行かれている“倉庫”の事ですよ」
「そうでしたか」
ボリスさんは、どうやら納得してくれたようだ。
と、その様子を目にしていたアリアが、僕の耳元に顔を寄せて来て
「もしかして、チキュウの事、秘密だった?」
「まあ……ね」
「ごめんね。でも皇太女様は知っているんだよね?」
「うん。ユーリヤさんには説明したからね」
コソコソ話していると、ユーリヤさんが僕等に声を掛けてきた。
「何か相談事でも?」
「あ、いえいえ、大した話はしていないので」
僕はそう言い
「ふふふ、でもお二人とも仲良さそうですね」
「いやそんな、別に……」
慌てて言葉を返す僕の隣で、アリアがなぜかにやけていた。
「仲良いってそんな……えへへ」
そしてなぜかユーリヤさんの目が細くなる。
「なるほど。やはりライバルは多そうですね……」
……うん。
何の話していたんだっけ?
そうそう、午後もう一度集まって、今度はのんびり世間話でも楽しもうとか、そんな話をしていたはず。
僕はとりあえず、話題の軌道修正を試みた。
「とにかくその……先程もお話しましたように、お昼ご飯が終わったら、ちょっと“倉庫”に行ってこようかと考えているので……」
話しながら、頭の中で午後の予定を再確認してみた。
予定通りなら、井上さん絡みの企画は、2時間もあれば終わるだろうから……
「午後4時半過ぎなら、戻って来られると思います」
「それじゃあ……」
クリスさんが、ユーリヤさんに視線を向けた。
「折角だから、ルーメルに来てみないかい?」
ユーリヤさんが、一瞬キョトンとした表情になった。
「ルーメルに?」
クリスさんが
「
クリスさんは、ユーリヤさんの母親がアールヴの王族出身である事を
ユーリヤさんの目が輝いた。
「それは……とても魅力的な提案ですね」
と、それまで静かに話を聞いていただけのスサンナさんが、慌てた感じで声を上げた。
「ユ、ユーリヤ様? ご不在中に火急の事態が発生して、ユーリヤ様のお姿が見当たらないとなれば、大騒ぎに……」
「それでしたら……」
僕は“助け舟”を出してみた。
「ユーリヤさんがルーメルに行っている間、これ、スサンナさんにお預けしておきますよ」
そう口にしながら、僕は右耳に装着している『二人の想い(右)』を指差した。
「ご存知かもしれませんが、これを使えば、対になる『二人の想い(左)』を装着している相手と、念話で通じ合う事が出来ます。何かあったら、それで知らせてもらうって事でどうでしょう?」
ユーリヤさんは帝国のあるこのネルガル大陸から出た事が無いはず。
そんな彼女に、この国では“
それに何より、彼女自身がこんなにもキラキラ目を輝かせている。
自身の
二つの重荷を四六時中背負わされ続けているとは言え、彼女もまだ19歳。
少しくらいは、息抜き出来る時間が有ってもいいはずだ。
スサンナさんが、ふぅっと息を吐いた。
「私達はお供出来ませんが、タカシ様がユーリヤ様を必ずお守り下さる、という理解で宜しいでしょうか?」
「それはもちろん、お任せ下さい」
そう口にした僕に、ユーリヤさんがすっと身を寄せて来た。
そして悪戯っぽい笑顔で僕を見上げて来た。
「頼りにしていますね、私の名誉
「ユーリヤ様!」
スサンナさんが、わざとらしい咳払いをしてくるのと同時に、アリアが焦ったような様な声を上げた。
「ちょ、ちょっと、皇太女様?」
「なんでしょう?」
「えっと……」
アリアの眼がなんだか泳いでいる……気がする。
「なんか距離感、近くないですか?」
「そうですか?」
わざとらしく小首を
しかしそれは、一足先に僕の腕に自分の腕を絡めてきたユーリヤさんに阻止されてしまった。
彼女の柔らかさと体温が
自然、心拍数が急上昇するのと同時に、顔が赤くなっていく。
僕はさりげなく彼女の腕を
アリアが僕に向けて来る視線の温度が、なぜか氷点下に向けて急激に低下していくのが伝わってくる。
僕はユーリヤさんに
「あの……離れてもらってもいいですか?」
「あら? お守り下さるとお聞きしたのですが?」
「確かにお守りしますけど、こんな風にされていると守りにくいと言いますか……」
というか、彼女を守る事と、彼女と腕を組む事は全く関係ない……はず、だよね?
「ユーリヤ様!」
スサンナさんが、再びわざとらしい咳払いと共に声を上げた。
「いい加減になされませ。タカシ様もお連れ様も困ってらっしゃるではありませんか?」
バツの悪そうな顔になったユーリヤさんは、ようやく僕を解放してくれた。
そしてなぜかアリアに声を掛けた。
「ごめんなさいね。誤解させたかもですが、この国では護衛して頂く時、腕を組むという
アリアが露骨にホッとしたような表情になった。
「そうだったんですね」
……いや、僕が言うのも何だけど、それ絶対今、ユーリヤさんが勝手に作った“
だって、スサンナさんとポメーラさんが、明らかに“やれやれ”といった表情を浮かべているし。
とりあえず、夕方、僕が戻ってきたら、ユーリヤさんをルーメルの『暴れる巨人亭』に招待するという事で話は
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