【コミカライズ版】最底辺であがく僕は、異世界で希望に出会う~自分だけゲームのような異世界に行けるようになったので、レベルを上げて、みんなを見返します【発売中】
第355話 F級の僕は、ブラックサラタン達を撃破する
第355話 F級の僕は、ブラックサラタン達を撃破する
6月15日 月曜日13
「君には、アルラトゥを監視してもらいたいんだ」
僕の言葉を聞いたララノアが小首を傾げた。
「監……視?」
「うん。僕等が出撃している間、彼女がまた魔力を使って何かをしていたら、あとでこっそり教えてほしいんだ。こんな事頼めるの、君しかいないからさ」
どうだろう?
今思いついたにしては、我ながらなかなかいい感じの理由付けだ。
それにもし本当にアルラトゥに何かウラが有るのなら、彼女の監視は当然必要な事のはず。
ララノアはもじもじしながら問い返してきた。
「わ、私にしか……出来……ない?」
「そうだよ。それにこれはとても大事な役割だ。分かるでしょ?」
ララノアが顔を上げた。
彼女の頬がほんのり上気している。
「お……お任せ……下さい! か、必ずや……ご期待に……」
留まってくれる事には納得してくれたようだけど、なんだか随分前のめりだ。
「あくまでも監視だからね? もし彼女が何か危険な事をしようとしているのに気付いたとしても、自分だけで何とかしようとせずに、ユーリヤさん達にすぐ知らせるんだ。いいね?」
「は、はい!」
準備を終えた僕等はユーリヤさん達と一緒に城壁を降り、城門前へと向かった。
城門前には、冒険者や兵士、戦闘奴隷、それに街の衛兵等、総計数百人がいつでも出撃できる態勢で僕等を待っていた。
皆の視線が一斉に僕等――というより、ユーリヤさんに対して、だと思うけれど――に集まった。
僕の傍を離れ、街の有力者達と並んで城門脇の少し高い所に登ったユーリヤさんが、皆に向けて声を張り上げた。
「勇敢なる諸君と遥か遠方より来たりしルーメルの勇士の活躍により、敵の運命はもはや風前の
―――おおおおお!
歓声が上がった。
「皇太女殿下万歳!」
「帝国万歳!」
城門が押し開けられ、皆が一斉に飛び出して行った。
召喚したオロバスに
「適当に駆け回るから、MP回復ポーション、見付けたら教えてね」
「わかりました」
皆がモンスター達と激しく戦う中、僕はオロバスを駆けさせ、ターリ・ナハが見つけ出してくれたMP回復ポーションをひたすら拾い集めて回った。
20分弱かけて、神樹の雫を6個、月の雫を10個回収した。
思ったよりは集まらなかった。
この量だと、魔導電磁投射銃だけでブラックサラタンを斃すのは、難しいかもしれない。
僕は改めて遥か
距離にして、2~3kmといった所だろうか?
4体のブラックサラタン達の周囲に、他のモンスター達の姿は無い。
そしてあらかじめ皆には伝えてあったので、彼等に近付く冒険者や兵士達の姿も無い。
僕はオロバスをメダルに戻してから、それをターリ・ナハに差し出した。
「これ、君に預けておくから、君がオロバスを召喚して」
「私が? ですか?」
「うん。実はブラックサラタン達を効率よく斃せそうな作戦を思い付いたんだけどね……」
僕は自分の考えを彼女に伝えた後、彼女が召喚したオロバスに
「じゃあ、行こうか」
4体のブラックサラタン達に向けて疾走するオロバスの馬上で、僕は『アルクスの指輪』を装着した左手の中に陰陽の弓、フェイルノートを召喚した。
そして弦を引き絞りながら念じた。
「死の矢……」
途端にMP100を代償に、対象のHPを9割削る事の出来る死の矢が出現した。
そのままステータスウインドウを呼び出してみると、僕のMPが166から66に減少しているのが確認出来た。
急速に接近して来る僕等に気付いたらしいブラックサラタン達が咆哮を上げた。
彼等が一斉にこちらを向き、大きく口を開いた。
彼等までの距離は100mを切っている。
僕等の世界では絶滅した恐竜、アンキロサウルスにも似たその巨体が大きく迫って来た。
僕はそのタイミングで、その中の1体に狙いを付けて死の矢を放った。
そしてその瞬間に、僕はオロバスから飛び降りた。
受け身を取りながら、地面を数回転がる僕の耳に、ブラックサラタンが苦悶の声を上げるのが聞こえて来た。
―――ギィオオオオオオオ!
どうやら狙い通り命中したらしい。
起き上がった僕の視線の中、ターリ・ナハはオロバスを駆り、急速に戦場を離脱していく。
そして仲間を傷付けられ、激昂しているらしい3体のブラックサラタン達が、僕目掛けて白く輝く力の奔流――ブレス――を放とうとしているのが見えた。
僕はスキルを発動した。
「【置換】……」
発動対象は、当然、死の矢を受け、苦悶の声を上げながら身を
エレンのバンダナの効果で120まで回復していた僕のMPが70に減少するのと同時に、僕の視界が切り替わった。
同時に、僕の後方――先程まで僕がいた位置――で凄まじい閃光と爆発、そして断末魔の悲鳴が上がった。
―――ギオォォ……
振り返ると、そこに僕とその位置を入れ替えたブラックサラタン1体が光の粒子となって消えていくのが見えた。
僕は素早く月の雫を1本飲み干した。
MPが142まで回復して、その後も1秒間に1ずつゆっくりと今のMAX166へと数値を増やしていく。
誤って仲間を
間近で見る彼等の巨体は、優に10mを越えていた。
ろくな防具を身に付けていない現状、激突されればただでは済まないだろう。
「【隠密】……」
途端に自分が周囲の景色に溶け込んでいくのが感じられた。
僕の姿を見失ったらしいブラックサラタン達は突進を停止し、再度咆哮を上げている。
エレンのバンダナによるMP回復と【隠密】維持のためのMP消費は、共に1秒につきMP1。
つまり、今の僕のMPの数値は、153で静止している。
その状態で僕は急いで彼等との距離を取った。
但し、100mを超えない範囲内で、だけど。
そして再び左手の中にフェイルノートを召喚して、死の矢を
僕のMPは53に減少した後、1秒間に1ずつゆっくり回復していく。
僕の姿に気付いたらしいブラックサラタン達が咆哮を上げた。
その中の1体に狙いを定めて再び死の矢を放った。
―――ギィオオオオオオオ!
死の矢を受け、HPの9割を削られたブラックサラタンが絶叫を上げた。
同時に、他の2体が先程同様、僕目掛けて口を開け、ブレスを放つ準備を始めた。
そして……
「【置換】……」
続いて断末魔の絶叫!
―――ギオォォ……
僕はすかさず月の雫を口にした。
一気に123まで回復したMPが、さらに1秒間に1ずつゆっくり増加していく。
ブラックサラタンは残り2体。
そして……
―――ギオォォ……
【置換】と【隠密】、月の雫、そしてフェイルノート召喚からの死の矢という流れで、さらにブラックサラタン1体が光の粒子となって消えて行った。
とうとうブラックサラタンは残り1体となった。
僕はすっかり身体に馴染んだ動きでその残る1体に死の矢を打ち込んだ。
―――ギィオオオオオオオ!
HPを9割削られ、苦痛と怒りの咆哮を上げるブラックサラタンに、僕はあえて肉薄した。
そしてそのままスキルを発動した。
「【影分身】……」
【影】1体が僕の影から滑り出て来た。
そして再び消費と回復の天秤が釣り合った僕のMPは、75で静止した。
武器をヴェノムの小剣(風)に持ち替えた僕は、【影】1体とともに、ブラックサラタンに切りかかった。
しかし事前に聞いていた通り、やはり物理攻撃では大したダメージを与える事は出来ないようであった。
彼我の距離が近過ぎるためか、ブラックサラタンは、ブレスを使ってくる気配を見せなかった。
その代わり、その巨体を生かして何度も突進しては僕等を踏み潰そうと試みてきた。
実際、何度か盾に使った【影】が犠牲になり、消滅させられた。
その度に僕は【影】1体だけを召喚し直しては、ブラックサラタンに斬りかかり続けた。
そのまま街の方へとじりじり後退し続け……
城壁からの距離が1kmを切った。
戦場にユーリヤさんの
「「勇士よ! 東に跳べ!」」
僕は反射的に東、つまり城壁を左手に見る方向へと跳躍した。
そして、その直後、閃光と音圧が周囲を圧倒した。
―――ピロン♪
ユーリヤ=ザハーリンが、ブラックサラタンを倒しました。
戦闘支援により、経験値60,984,176,630,282,300を獲得しました。
こうして夜明け前に始まったトゥマ防衛戦は、正午を待たずして僕等の完全勝利で幕を閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます