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第344話 F級の僕は、冒険者達と協力してコボルトの群れと戦う
第344話 F級の僕は、冒険者達と協力してコボルトの群れと戦う
6月15日 月曜日2
宿まで急ぎ足で戻って来た僕は、ユーリヤさん達に、冒険者ギルドで聞いた話をそのまま伝えた。
僕の話を聞き終えたボリスさんが少し怪訝そうな顔になった。
「コボルト数十匹?」
「はい。正確にはタレン山地でスタンピードを起こしたモンスター達って表現でしたが、冒険者達はコボルトだと推測しているみたいでした」
「確かにタレン山地でスタンピード起こしそうなモンスターと言えば、コボルトが真っ先に頭に浮かぶが……」
「何か気になる点でも?」
「いや、スタンピードの主体が本当にコボルト数十匹なら、緊急招集掛けなくても、郊外に駐屯するキリル中佐の部隊だけで十分対処できるはずなんだが……」
ボリスさんはそのまましばらく考え込む素振りを見せた。
「本当はもっと強力なモンスター達が街に接近している、とかでしょうか?」
コボルト、冒険者達はレベル50程度と話していたけれど、地球風に言えば、C級モンスターだ。
彼等の姿を“最後に”僕が目にしたのは、あの田町第十で
レベルの上がりにくいこの世界の人々にとって、レベル50のモンスター数十体は確かに容易ならざる敵だとは思うけれど、キリル中佐の率いる駐屯軍は、800人の兵士達で構成されていると聞いている。
ボリスさんが口にした通り、駐屯軍の兵力で簡単に対処出来そうな気もする。
なんなら僕一人に任せてもらえれば、1分かからずに殲滅出来る自信がある。
「しかし緊急招集を掛けておいて、敵戦力を過少に告げる必要性は感じられんし……もしかすると、キリル中佐が単に“楽をしたい”だけなのかもしれんな」
「楽を、ですか?」
「つまり、スタンピードを起こしたモンスター達の対処を冒険者達と戦闘奴隷どもに丸投げして、自分達は幕舎の中で優雅に
なるほど。
キリル中佐、見た感じ
「今のところ、街の住民達にも避難命令は出ていないようだ。本当にコボルトどもが押し寄せてきているだけなのかもしれんな」
なんにせよ現時点では、
「とりあえず街の外に向かいますね」
一応、
手柄を独り占めにするつもりは無いけれど、2~3体は斃しておこう。
「ああ、だが油断はするなよ?」
「大丈夫ですよ」
僕はすぐ傍に立つターリ・ナハとララノアに視線を向けた。
「彼女達もいますし。終わったらまたここに戻って来ればいいですか?」
ユーリヤさんが微笑んだ。
「はい。お待ちしています」
街から出た僕等冒険者の集団は、帝国軍兵士と思しき人物の誘導で一ヵ所に集められた。
「偵察兵の報告では、敵はコボルトファイターやコボルトシャーマン等数十匹だ。恐らくあと10分程でここに押し寄せて来る。しかし恐れる必要は無い。我等帝国軍の精鋭800、それに戦闘奴隷どもも100匹投入する。今こそ冒険者としての気概を見せる時だ! 存分に戦え!」
そして彼の指示のもと、僕も含めた冒険者達は、持ち場についた。
最前線が僕等冒険者の集団、その背後に駐屯軍所属の戦闘奴隷達、さらに街の城壁ぎりぎりの位置に、駐屯軍の兵士達。
布陣を見る限り、ボリスさんの先程の推測通りかもしれない。
空が白み始める中、遠く、街から見て南の方角に土煙が上がるのが見えた。
そして事前の情報通り、犬頭のモンスター、コボルト達が姿を現した。
―――うぉぉぉぉぉ!
冒険者達が
僕等の背後に陣取る戦闘奴隷達も、魔法や遠距離攻撃で援護を開始した。
たちまち
「ターリ・ナハ、ララノア、僕の傍から離れないで」
二人に注意喚起を行った僕は、【影】を1体呼び出した。
そして少し先で魔法の詠唱を開始していたコボルトシャーマンを斃すよう指示を出した。
【影】は滑るようにモンスターに近付くと、一撃でその首を刎ねた。
―――ピロン♪
【影】がコボルトシャーマンを倒しました。
経験値95,643,225,000を獲得しました。
Cランクの魔石が1個ドロップしました。
魔導士の杖が、1個ドロップしました。
あと、もう1体位斃しておこうかな。
大分離れたところで弓を引き
僕の指示を受けた【影】がモンスターに忍び寄り、あっという間にその首を刎ねた。
―――ピロン♪
【影】がコボルトアーチャーを倒しました。
経験値63,762,150,000を獲得しました。
Cランクの魔石が1個ドロップしました。
コボルトの弓が、1個ドロップしました。
まあ、こんなものかな。
【影】が拾い集めて来たアイテムと魔石をインベントリに放り込んだ僕は、
黄銅色の金属板に、僕がコボルトシャーマンとコボルトアーチャーとをそれぞれ1体ずつ斃した事が、いつの間にか刻み込まれていた。
周囲ではなお激戦が続いていたけれど、全体的には冒険者達が、コボルト達を圧倒しつつあるように見えた。
あとは見える範囲内で、危険に陥っている冒険者がいたら適当に手助けして……
ふと気が緩みかけた瞬間、ララノアが上ずった声を上げた。
「あ、新手が……」
「新手?」
ララノアは何かに集中しているような素振りを見せるだけで、言葉を返してこない。
仕方なく、僕は隣に立つターリ・ナハの方を見た。
しかし彼女もまた、こわばった表情で戦場の向こう側、南の方角を一心不乱に見つめている。
僕も同じように視線を向けてみたけれど、騒然とした戦場の向こう側は見通せない。
「ターリ・ナハ、どうしたの?」
彼女の頭部に生えている狼の耳がせわしなく動いている。
「……モンスターの大群が……」
ターリ・ナハが何かを探るような雰囲気で言葉を返してくる中、ララノアが僕の服の裾を
「ご……ご主人様……撤退……」
彼女の口にした“撤退”という言葉に、一気に緊張感が高まった。
僕はオロバスのメダルを取り出した。
「様子を見てこよう」
オロバスを召喚した僕は、二人と共に戦場を南へと突っ切り、コボルト達の背後に出た。
戦場の遥か後方、南の方角に、異変が生じていた。
目をこらすと、霞のように地煙が巻き上がっているのが遠望出来たのだ。
それは、今交戦中のコボルト達とは比較にならない程大量の“何か”が、こちらに向かって接近してくる
僕は目をこらしながら、思わず
「あれは……?」
「モ、モンスター……す、数千……」
「数千!?」
ララノアのとんでもない発言に、声がひっくり返った。
「モンスターのレベル、分かる?」
数千のモンスターと言っても、低レベルの集団なら、僕一人で何とか出来るかもしれない。
ララノアが言葉を返してくる前に、ターリ・ナハが切迫した雰囲気のまま口を開いた。
「複数体の地上性のドラゴン種、ジャイアント種、ゴーレム種……いずれもレベル80を越えるモンスター達の姿が確認出来ます」
獣人特有の視力の良さに起因するものだろうか?
僕には霞のような地煙しか見えないこの距離からでも、ターリ・ナハにはモンスター達の姿が見えているようであった。
それにしてもレベル80オーバーが数千!?
今の僕はレベル105。
カロンの小瓶を使用すれば、最大、レベル210相当程度までステータスを底上げできる。
単体相手であれば、レベル80程度のモンスターに
しかし……
数千は多過ぎる。
『
となれば、後方で戦う冒険者や駐屯軍、或いは街の住民達にも甚大な被害が生じる可能性がある。
「直ちに皆に知らせましょう!」
ターリ・ナハが鋭く叫ぶのと
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