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第254話 F級の僕は、D級相手に奮戦(?)する
第254話 F級の僕は、D級相手に奮戦(?)する
6月6日 土曜日8
「今から10分上げるよ。あっちで待ってるお仲間も合わせて、皆で全力で僕を攻撃してきなよ。僕のHP、1でも削れたら、土下座して、一生タダで荷物持ちしてあげるからさ」
僕の言葉を聞いた鈴木の顔が、文字通り茹でダコみたいに真っ赤になっていく。
「てめぇ! ぶっ殺す!」
鈴木はそのまま殴り掛かって来た。
しかし、その拳が僕の顔面を
……学習しない奴だ。
「……つつっ……てめぇ! もう許さねぇ!」
鈴木が何かの詠唱を開始した。
途端に、山本と友永が止めに入った。
「落ち着け鈴木!」
「こんな所で魔法使って喧嘩してたら通報されちまうぞ!」
二人に制止され、さすがにまずいと気付いたのだろう。
鈴木は詠唱を途中で中止した。
代わりに凄まじい形相で僕を睨みながら、法蓮寺第八ダンジョンの入り口ゲートを指差した。
「おい、お前のスキルだか魔法だか知らねぇけれど、そのバリヤーみたいなの、性能確認してやるから、中、入れや」
「いいよ」
数分後、僕と鈴木以下10名の男女は、ゲートを抜けたすぐ先の少し広くなっている場所で向き合って立っていた。
10名とも、ダンジョン攻略のための完全武装に身を固めている。
対して僕の格好はと言えば、上は白黒縞々の長袖Tシャツ、下は茶色の綿パンという完全普段着。
鈴木が僕の格好を見てせせら笑った。
「お前、本当にその格好で俺達D級10名とやりあうつもりか? 今なら土下座して俺達の足でも舐めれば、許してやらんでもないぞ?」
鈴木の仲間達がドッと湧いた。
僕は彼等に冷ややかな視線を向けながら言葉を返した。
「
「F級の分際で! 舐めたクチききやがって!」
そして鈴木が、仲間達に声を掛けた。
「あいつに身の程ってのを、思い知らせてやろうぜ!」
その言葉を合図に、彼等は一斉に飛び掛かってきた。
しかし、D級程度の素手の攻撃で、僕の
全員、次々と盛大に弾き飛ばされていった。
あちこちで呻きながら起き上がったD級達の内、何人かは信じられないモノを見る様な目になっていた。
しかし血の気の多そうな何人かは、今度は武器を抜いて襲い掛かってきた。
―――ガキキン!
しかしD級が武器を使用した所で、当然ながら僕の
僕は、鈴木達に呼びかけた。
「魔法もスキルもガンガン使っちゃっていいよ? 早く僕に土下座させたいんでしょ?」
「中村! どうやら死にたいらしいな?」
鈴木が詠唱を開始した。
そんな鈴木の様子に気付いた仲間の女が、慌てたように声を上げた。
「ねえ! 殺しちゃったらさすがにまずいんじゃないの?」
「大丈夫ですよ」
僕は、彼女に声を掛けた。
「たかがD級如きの攻撃、スキルだろうが魔法だろうが、僕には決して届かないんで」
彼女の顔がサッと紅潮した。
「なら一遍死んでみる?」
鈴木の隣で彼女も何かの詠唱を開始した。
それから10分……
その間、鈴木達は、魔法にスキルに通常攻撃に、とにかく、あらゆる攻撃で僕の
しかしそのどれもが、当然ながら、僕には全く届かない。
肩で息をしながら鈴木が息まいた。
「妙なバリヤー張れるからってイイ気になんなよ? どうせそれ以外、何も持ってないんだろ? やっぱり所詮はF級だな。自分は護れても、モンスター1匹、倒せないくせによぉ」
僕は嘆息した。
何者かに変えられてしまった僕らの世界。
やっぱり最後にモノを言うのは、“力”と言う事か……
「インベントリ……」
僕はインベントリを呼び出して、中からヴェノムの小剣(風)を取り出した。
インベントリを認識できないD級達の間にざわめきが起こる。
「お、おい。あいつ……さっきまで武器なんか持ってなかったよな?」
「あの武器、突然出現しなかったか?」
「まさかあいつ、亜空間魔法、使えるのか?」
そのざわめきを無視して僕は口を開いた。
「それじゃあ、F級の、モンスター1匹倒せないしょぼい攻撃、実際、体感してもらおうか?」
【影】を呼び出してもいいんだけど、まずは“僕個人”で彼等を圧倒して見せた方が、“脅し”としてはより効果的なはず。
僕は鈴木のすぐ脇に立つD級の女を目標にスキルを発動した。
「【置換】……」
瞬間的に僕と女の位置が入れ替わった。
そして僕は、何が起こったのか全く分かっていなさそうな鈴木の間抜け面を見ながら、ヴェノムの小剣で彼の手にする剣を破壊した。
―――ガキキン!
「うぇっ!?」
鈴木がヘンな声を上げて仰け反った。
よし、次!
こうして僕は1分も経たないうちに、10人のD級達が持つ武器全てを破壊した。
あっという間に剣を折られ、斧を割られ、杖を砕かれたD級達は、何が起こっているのか分からないといった様子で、棒立ちになっている。
「まだやる? これ以上って事は、お互い、命の保証無くなっちゃうけど?」
僕の言葉に皆一様に怯えたような表情になった。
「お、お前、F級じゃ無かったのか!?」
「まさか、ステータス、【隠蔽】してた?」
「わ、私達をどうする気?」
僕は出来るだけ悪そうな顔をしながら、言葉を返した。
「どうもしないよ。君等が
僕はスキルを発動した。
「【影分身】……」
僕の影がせりあがり、その中から、10体の【影】が出現した。
僕は【影】達に、D級達を羽交い絞めにして自由を奪うよう指示を出した。
【影】を目にしたD級達の内何人かは、恐怖心からか、パニックを起こして走り出そうとした。
しかしそんなD級達も含めて全員が、
「今後も僕に何かしようって言うのなら、今の内に教えといて。今ここでやっちゃうから」
“やっちゃう”って言ったけれど、何をやるのかは、D級達の想像力に任せよう。
案の定、D級達がガタガタ震え出した。
「ご、ごめんなさい。もう二度とあんたの事、馬鹿にしたりしないから、殺さないで……」
「お、俺は元々、お前の事、馬鹿になんかしてなかったぞ? 今日だって、鈴木が勝手にお前を呼び出して……」
「な、何言ってんだよ!? お前が中村呼び出そうって言い出したんじゃないか!」
少々、見苦しい内輪もめ起こしているD級達に構わず、僕は鈴木に近寄った。
「ひっ!? やめ……」
「なあ鈴木。これで僕のスキル、斎原さんは無関係って理解してもらえたかな?」
鈴木が猛烈な勢いで頭を何度も縦に振った。
「じゃあ、今日はこの辺で勘弁しておいてあげるよ」
僕は【影分身】の発動を停止した。
【影】達が、滑るように僕の影へと戻って来た。
体の自由を取り戻したD級達は、ある者は地面にへたり込み、またある者は、呆然自失と言った風で立ち尽くしている。
そんな彼等を一瞥した後、僕は法連寺第八ダンジョンを後にした。
カウルが割れてしまったスクーターに跨り、僕が再びアパートに戻って来たのは、午前10時前。
やれやれ、あとでスクーター、バイク屋に持って行って、修理して貰わないと……
ぼやきながら自分の部屋の中に戻って来た僕は、改めてスマホをチェックした。
すると、関谷さんからメッセージが届いている事に気が付いた。
『中村君も今日、均衡調整課に呼ばれてるんでしょ? 均衡調整課に行く前、皆でお昼ご飯、一緒に食べない?』
そう言えば今朝、電話を掛けて来た四方木さんは、中国の情報機関のエライ人が、『中村さん“達”から直接話を聞きたい』って話してたっけ?
つまり僕以外、関谷さんや井上さん、それに茨木さん達、あの『
僕は関谷さんに電話を掛けてみた。
数回の呼び出し音の後、関谷さんのいつもの柔らかい声が聞こえて来た。
『もしもし、中村君?』
「関谷さん、今、電話大丈夫?」
『大丈夫よ。ちょうど洗濯機回していて、終わるの待ってる所だから』
「お昼、誘ってくれてありがとう。もしかして、井上さんや茨木さん達も均衡調整課に呼ばれてる?」
『うん。みんな、お昼1時半に来てくれって』
「僕もだよ。じゃあ、どうしようか?」
『この前一緒に行った、『
「ああ、あのちょっとお洒落なフレンチのお店?」
『あそこでランチ食べようかって話になってるんだけど、どうかな?』
「いいよ。何時集合?」
『ふふ、ちょっと離れてるし、車出すわよ? 11時過ぎに迎えに行ってもいい?』
スクーター、カウル割れちゃってるし、関谷さんが車出してくれるなら、有り難い話だ。
「それじゃあ、お言葉に甘えさせて頂きます」
『じゃあ、また後でね』
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