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第235話 F級の僕は、アリアと一緒にノエミちゃんに会いに行く
第235話 F級の僕は、アリアと一緒にノエミちゃんに会いに行く
2021年4月28日、改稿しました。
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6月5日 金曜日5
「やはり、あの女性は私達の世界の存在では無かったのですね……」
ティーナさんが少し懐かしそうな口調でそう話した。
「彼女は、isdifuiでは支配的な種族の出身者ですか?」
「支配的?」
「多数派、と言い換える事も出来ます。つまり、彼女のように頭部に角を持つhumanoid typeが、isdifui人の姿としては一般的なのでしょうか?」
「いえ、彼女はイスディフイで魔族と呼ばれる種族の出身者です……」
僕は、イスディフイには、魔族、エルフ、獣人、そして僕達地球人とほぼ同じに見えるヒューマンと呼ばれる種族が共存している事を簡単に説明した。
もっとも、僕はエレン以外の魔族とは、“今の”イスディフイでは出会った事が無いけれど。
「なるほど。異なる人類が共存するfantasyのような世界、なのですね。機会が有れば、私もそういう世界をこの目で見てみたい……」
そう言えば、
もしティーナさんをイスディフイに連れて行くことが出来れば……
そしてティーナさんが、イスディフイと地球とを繋ぐワームホールを開く事が出来れば……
今回のような世界の壁を越えて発生する問題への対処がより容易になるのでは無いだろうか?
僕はティーナさんに提案してみた。
「それなら、ちょっと一緒に行ってみませんか?」
「一緒に?」
「はい。僕のスキルでは、残念ながら、イスディフイに住む人を僕等の世界に連れて来る事は出来ないみたいなのですが、その逆はまだ試した事が無いので」
ティーナさんの目が輝いた。
「……そうですね。行き来するだけなら、一瞬なんですよね?」
「はい」
「それでは宜しくお願いします」
ティーナさんがぺこりと頭を下げてきた。
その動きが少しユーモラスに感じられて、僕は思わず笑顔になった。
「? どうしました?」
「なんでもないです。とりあえず、試してみましょう」
僕はティーナさんの手を取った。
そして、【異世界転移】のスキルを発動した。
…………
……
「う~ん。やはり無理みたいですね……」
10分後、僕とティーナさんは、ハワイのヒッカム空軍基地内の部屋の中で、お互い首を捻り合っていた。
結論から言うと、ティーナさんをイスディフイに連れて行く試みは
理由は不明だけど、やはり世界の壁を越えて移動出来る“人間”は、僕一人という事なのだろうか?
「仕方ないですね。また何か良い方法思いついたら試してみましょう」
ティーナさんが、少し残念そうにそう口にした。
と、ふいに部屋の中の電話が鳴った。
ティーナさんは受話器を取り上げ、二言三言、英語で何かを会話した後、すぐに電話を切った。
「やはり呼び出されました」
幸い、現時点で可能な僕等の相談は、あらかた終わっている。
「分かりました。僕もアパートに戻りますね。夕方まではこっちにいるので、何か動きが有ったら、教えて下さい」
ティーナさんが少しおどけた口調で言葉を返してきた。
「ちゃんと無線機、“この世界”に出しておいて下さいね」
ティーナさんがくれた『ティーナの無線機』。
『
100時間に及ぶ留守録機能がついた、僕とティーナさんとのホットラインだけど、さすがにインベントリに仕舞いこんでしまうと、その機能を発揮できなくなってしまう。
そして僕はインベントリを手に入れて以来の“癖”で、大事な物ほど、インベントリに仕舞いこんでしまう。
僕は苦笑しながら、インベントリから『ティーナの無線機』を取り出した。
「分かりました。今日はちゃんとこうして耳に引っ掛けておきますよ」
ワームホールを潜り抜け、アパートの部屋に戻って来た時、時刻は午前10時半を回ったところであった。
関谷さん達との約束では、昼からのダンジョン攻略、淀川第五に午後1時集合だったから……
アリアとの約束通り、いったんイスディフイに移動して、とりあえず一緒にノエミちゃんに会いに行って、1時間位でこっちに戻って来れば十分間に合うはず。
お昼ご飯は、どこかコンビニでおにぎりでも買って食べればいいし。
僕は頭の中で今日の予定を再確認すると、【異世界転移】のスキルを発動した。
20分後、僕とアリアは無事西の塔でノエミちゃんと再会する事が出来ていた。
イシリオンは部屋の外で警護に当たっているので、部屋の中にいるのは、僕、アリア、エルザさん、そしてノエミちゃんの4人。
ノエミちゃんに会うのは、神樹第80層での
「タカシ様、まずはアールヴへの無事の御到着、お疲れ様です」
僕等がルーメルからアールヴまで強行軍の馬車で移動してきた事を事前に聞いていたらしいノエミちゃんが、
「転移して来れば、行き来は一瞬なんですけどね~」
僕自身はそうした能力を持っていないが、仲間のエレンやクリスさんは、転移能力を持っている。
ただし、僕は彼女達の存在について、ノエミちゃんの幽閉に関わっている可能性の高いノエル様達には、当然ながら伝えていない。
それはともかく、エルザさんが淹れてくれた紅茶を口にしながら、地球とイスディフイ双方を巻き込んで現在進行中の事態について、どこから話し始めようか考えていると、ノエミちゃんが先に口を開いた。
「タカシ様、外の世界でその……何か変わった事は起こっていないでしょうか?」
「変わった事、ですか?」
「はい」
実際には、変わった事という言葉だけでは片付けられないような、大変な事態が進行中なんだけど。
そんな事を考えながら視線を向けた先のノエミちゃんの表情に、僕は少し違和感を抱いた。
彼女の表情が、いつになく険しいもののように感じられたのだ。
なので、僕は逆に聞いてみた。
「何か気になる事でもありました?」
「気になる事と申しますか……ここ数日、急に光が弱まり、闇が増大しているように感じ取れますので……」
「闇、ですか?」
「はい。より具体的に挙げれば、魔王エレシュキガルの力、とも言い換える事が可能です」
ノエミちゃんは光の巫女だ。
光の巫女としての能力が、魔王エレシュキガルの力が何らかの要因で増大しつつある事を感知しているのかもしれない。
やはり、あの黒い結晶体の出現には、魔王エレシュキガルが関与しているという事だろうか?
「実は、その事と関係しているかもしれないのですが……」
僕はおもむろに話を切り出した。
どうやらその黒い結晶体が一種の転移ゲートとして働いて、嘆きの砂漠で
不幸にも偶然その場に居合わせたテトラさん達の身体に異変が生じている事、
黒い結晶体は、臥竜山、最果ての海にも出現している事、
確証は無いけれど、今後、霧の山脈にも黒い結晶体が出現するのでは無いか、と考えている事……
僕の話を聞き終えたノエミちゃんの顔が蒼白になった。
「魔王宮の……四守護結界……」
「四守護結界?」
「タカシ様はご存じ無いかもしれませんが、四守護結界とは……」
ノエミちゃんはそこで言葉を切ると、少し不思議そうな表情になった。
「お待ち下さい。タカシ様、霧の山脈に今後、黒い結晶体が出現する、と
「はい。もちろん推測ですが」
「どうしてそう思われました?」
「それは……」
かつて嘆きの砂漠に拠り、今チベットに出現しているベヒモス、
かつて臥竜山に拠り、今ミッドウェイに出現しているバハムート、
かつて最果ての海により、今北極海に出現している(であろう)レヴィアタンとくれば……
「僕がかつて霧の山脈でフェニックスを斃したからです」
僕の言葉を聞いたノエミちゃん、そしてその傍に立っていたエルザさんの目が大きく見開かれた。
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