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第185話 F級の僕は、以前もらった“秘密道具”を試しに使ってみる
第185話 F級の僕は、以前もらった“秘密道具”を試しに使ってみる
5月30日 土曜日11
―――バリバリバリ……
呼び出した【影】1体は、男に飛び掛かる
井上さんも白いゴーレムの召喚を図ったようだったけれど、こちらは出現させた瞬間に粉砕されてしまった。
雷撃の威力が凄まじすぎる。
まさかこの男、国も把握していないS級なのでは!?
しかし例えそうであったとしても、これ程の攻撃、そう長くは続けられないはず。
僕はとりあえず、女神の雫を飲み干しながら、自分のMPを『エレンの腕輪』に注ぎ込み、
1分…2分……3分………
しかし、いつまで経っても吹き荒れる電撃の嵐は衰える様子を見せない。
どうする?
僕一人なら、いかようにも戦える。
【置換】で男と僕の位置入れ替えて、自分の雷撃、自分で味わって貰っても良いし、さっき逃げて行ったヘビメタファッションの男達の所まで走って行って、“同士討ち”させてやっても良い。
或いはMP尽きそうになったら【異世界転移】繰り返して
だけど今は護るべき仲間達がいる。
取れる手段は限定的だ。
500年前の世界で使用可能だった、{転移}があれば……
或いはエレンやクリスさんが
……
あっ!
いる。
でも、呼べば後々、もっと面倒な事になりそうな……
考えてる内にも、視界の左隅、
悩んでる場合じゃないな……
僕はインベントリを呼び出した。
そして収納してあった『ティーナの重力波発生装置』を取り出した。
アメリカのS級、ティーナさんがくれた継ぎ目の無いルービックキューブのような形と大きさの黒い立方体。
この装置にMPを込めれば、ティーナさんにだけ感知できる重力波を発生させる事が出来るそうだ。
そしてそれを感知した彼女は、僕の元に駆け付けてくれると言っていた。
とりあえず、MP50程込めてみよう……
装置が込められた魔力に反応するように、
それに目ざとく気付いたらしい井上さんが問いかけて来た。
「何それ? まさか、また新しい秘密道具?」
井上さんが、僕を人気アニメに登場する耳無し猫型ロボット扱いしているように感じられるけれど、きっと気のせいだろう。
「まあそんな所」
「今それ使ってるって事は、この状況を打開できそうって期待して良いのかな?」
井上さんの言葉に、関谷さんと茨木さんの視線も僕に向けられた。
「実は今回初めて使うんだけどね」
「初めて? どうやって手に入れたの? って、どうせ、出所詮索するな、でしょ?」
うん。
井上さんの物分かりがだいぶ良くなってきているようで、良い傾向だ。
しかし、肝心のティーナさんが現れる気配が感じられない。
もしかして、
僕は、
それに比例するかの如く、視界の左隅の数字の減少速度が跳ね上がった。
しかし、ティーナさんは現れない。
込めるMPの量、足りなかったのかな?
今度はMP100を込めてみた。
再び装置が発光した。
しかし、やはりティーナさんは現れない。
ティーナさん、今カリフォルニアのはず。
日本とアメリカ、時差って何時間位あるんだろ?
時間帯によっては、寝てるかシャワー浴びてるか、とにかくすぐには動ける状況にない?
それともまさか、
井上さんが、怪訝そうな顔で問いかけて来た。
「何も起こってないように見えるんだけど」
「そうだね」
「それ、想定では何が起こる事になってるの?」
一応、ティーナさんを呼べるって事になってるはず。
しかし現状、ティーナさんがここに出現していない以上、余計な話をしてぬか喜びさせてもいけないし……
「一応、ここから脱出出来る可能性があるんだけど」
「脱出? テレポートみたいな?」
「どうだろう?」
「どうだろうって……もしかして、中村クンも正確には何が起こるか把握してない、とか?」
「ごめん。実はそうなんだ」
僕は正直にそう答えた。
こんな事なら、『ティーナの重力波発生装置』、事前に色々試しておけばよかった。
いや、それで、もしティーナさんを呼ぶ事が出来たら、それはそれでややこしい事になっていたかな……
「すまない。俺が不甲斐ないばかりに」
「違います。私が簡単に捕まったりしなかったら……」
茨木さんと関谷さんが、次々と悔悟の言葉を口にし始めた。
「大丈夫です。あいつの雷撃、永遠に発動させ続けるのは不可能だと思いますし、雷撃途切れた時点で、僕と井上さんで、あいつを倒しますから」
そうは言ったものの、状況は全く好転していない。
焦る気持ちとは裏腹に、視界の左隅の数字が2桁に突入してしまった。
このままでは、こっちの
僕は慌てて女神の雫を飲み干すと、『エレンの腕輪』に自分のMPを充填していく。
まずいまずいまずい……
イチかバチか、
焦りから、少々乱暴な方向に思考が向き始めた矢先、突如関谷さんが悲鳴のような叫び声を上げた。
「見て!」
彼女が指さす方向に目をやると、
仲間達の緊張感が一気に高まるのが肌で感じられた。
「まさか、あいつの新しい攻撃!?」
井上さんが上ずった声を上げる中、歪みは渦となり、急速に拡大していく。
そして忽然と銀色に輝く穴が出現した。
あれは……?
ワームホール?
しかし、以前見たティーナさんが創り出したワームホールと違い、向こう側と思われる景色は見えない。
呆然とその銀色に輝く穴を見つめていると、ふいに右の耳元で囁きかけられた。
「相当な危機に陥っている、という理解で正しいですか?」
「ティーナさん!?」
しかし、僕の右側には誰もいない。
いや、よく見ると、殆ど透明な人型の何かがゆらゆら
「
自身の姿を隠す、【隠密】系のスキルを使用しているのだろうか?
ちなみに、他の仲間達は、突如出現した銀色に輝く穴に気を取られているようで、僕とティーナさんの会話には気付いていない。
「それで、私に何をして欲しいですか? あの男を倒すのを手伝いましょうか? それとも、皆さんを安全な場所まで送り届けましょうか?」
あの男?
ティーナさんは今、ワームホールを潜り抜けてこの場所にやって来たばかりのはず。
なのになぜ、外で雷撃の嵐を操っているのが“男”だと分かったのだろう?
もしかして、エレンみたいに、事前にこの場所の様子を“視て”からやってきた?
それはともかく、女神の雫も残り少ない。
まずは皆の安全確保が最優先だ。
その後、あの男を……
「僕の部屋にワームホールを繋いでもらえますか? それで僕の仲間達が潜り抜けた後、再びワームホールを閉じて欲しいのですが」
「It's a piece of cake」
次の瞬間、銀色に輝く穴が再び変化を見せ始めた。
今度は、“向こう側”の景色がゆっくりと見えてきた。
つい数時間前までそこにいた、だけどなぜかとても懐かしく感じる
勝手知ったるその場所が、魚眼レンズを通すような感じで穴の向こう側に出現した。
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