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第132話 F級の僕は、新しい武器を試射させてもらう
第132話 F級の僕は、新しい武器を試射させてもらう
5月26日 火曜日5
切り替わった映像には、富士山の火口をすっぽりと覆い隠す巨大ドーム内の風景が映し出されていた。
火口の中心部へと続く階段と、大きな荷物を輸送するための昇降リフトが見える。
そして、火口の中心部には、高さ10mはあろうかという、陽炎のように揺らめく半円形の“出入口”が存在していた。
さらに映像が切り替わった。
説明では、富士第一の1層目、入り口入ってすぐの場所のようだ。
ダンジョン内部であるにもかかわらず、1棟、灰色の建物が建っている。
「これは?」
僕の疑問に、四方木さんが答えてくれた。
「富士第一ダンジョン内部研究棟です。ダンジョン内部に由来する物質は、魔石以外はダンジョンから運び出した時点で消滅しちゃうんですよ。なので、この研究棟でダンジョンを構成する素材なんかを研究しています。とは言え、使用できる機材も限られてますからね。なかなか研究が進んでいないのが実情です」
映像は切り替わり、1層の3Dモデルが映し出された。
「実は、富士第一ダンジョン内部を直接撮影しても、その画像データを外部に持ち出そうとする際、全て消滅してしまうんですよ。なので、ここから先は、全てCGでの再現になります」
普通のダンジョンであれば、魔石を使用して特殊加工した記録装置を使用すれば、内部の映像を記録し、ダンジョンの外で確認する事が可能だ。
富士第一ダンジョンは、この点においても特殊と言える。
そのまま映像は、研究棟脇の地面をズームアップした。
そこには、巨大な魔法陣が描かれていた。
「コレ、転移ゲートなんですよ。私等は、エレベーターって呼んだりもするんですけどね。専用の機器を使用すれば、富士第一内部だったら、どの階層にも行けちゃいます。あ、ゲートキーパーが倒されていない階層には行けないですけどね」
なんだか、神樹内部の巨大ダンジョンとよく似た仕組みだ。
そう思って見てみれば、この再現CGの魔法陣、神樹第一層にあった転移ゲートに似てなくもない。
次はいよいよ、今回の調査対象、90層の再現CGが映し出された。
えっ?
そこに映し出されていたのは、陽光が降り注ぎ、どこまでも風に
少し離れた場所には森もあり、小川が流れる牧歌的な風景……
「コレって、富士第一の90層……ですよね?」
四方木さんがにやりとした顔になった。
「驚くでしょ? ところが、ココ、本当にダンジョンの中なんですよ」
四方木さんによれば、富士第一も、89層までは、他のダンジョン同様、何らかの構造物、閉鎖空間であるという。
「ですから2週間前、S級の伝田様率いるクラン『
ところが、90層にも転移ゲートが存在し、地の果てまで続くと思われた風景も、ある一定の範囲で不可視の壁で阻まれ、それ以上進めなくなる事から、特殊な形態のダンジョンと理解されるようになったのだという。
続いて、91層の再現CGが映し出された。
90層とは一転して、鬱蒼とした森の中。
「この階層も周囲を不可視の壁で囲まれています。この階層のゲートキーパー、サレオスは、1週間前に、S級の斎原様率いるクラン『
そのニュースは、ネットの記事で読んだ記憶がある。
「概略はこんなところですね。ここまでで、何か質問、ございますか?」
「特に無いです」
と言うより、何を質問したら良いのか思いつかないっていうのが本当のところだけど。
「そうそう、調査、特別手当出るんでした。2日間でなんと100万円です」
100万円は、大金だけど……
僕は、インベントリに、Aランクの魔石が58個入っている事を思い出した。
Aランクの魔石って、確か1個
そんな事を考えていると、自分の金銭感覚が狂ってきてる感じがして、なぜかヘンな笑いが込み上げてきた。
僕の様子に気付いたのか、四方木さんが少し怪訝そうな顔になった。
「どうしました?」
「すみません、結構大金貰えるんだなって、少し嬉しくなっちゃいまして」
僕は咄嗟に取り繕いながら、そう答えてみた。
四方木さんが、試すような視線を向けて来た。
「喜んでもらえるとこちらとしても嬉しいですね。あと装備品は、希望すれば、こちらから貸し出しますよ? あの特別室に展示している装備も含めて」
特別室の装備……
僕は一昨日、カタログの中で目にした『魔導電磁投射銃』の事を思い出した。
性能は素晴らしいが、値段がべらぼうに高かった。
「例えば、『魔導電磁投射銃』、お借りしたりする事は、可能でしょうか?」
「そうおっしゃると思いまして、実はお持ちしてます」
四方木さんはそう答えると、更科さんに声を掛けた。
「アレ、中村さんにお渡しして」
「はい、所長」
更科さんは、部屋の隅に置かれていた細長い黒いケースを手に取ると、それを僕の所まで持ってきてくれた。
長さ120~130cm位のそのケースの縁に、直径1cm位の丸いボタンのような物が取り付けられている。
更科さんは、その部分を指差しながら、僕に話しかけて来た。
「中村さん、この部分が青く発光するまで、人差し指の先を押し当てて下さい」
言われるがまま、僕は右手の人差し指を、その丸いボタンに押し当てた。
指先が次第に暖かくなってきたかと思うと数秒後、丸いボタンが青く発光した。
それを確認した更科さんが、にっこりと微笑んだ。
「これでこの『魔導電磁投射銃』は、今から72時間は、中村さんだけが使用できるようになりました。時間が過ぎましたら、その青い発光が消えて、使用不能になるので、お気を付け下さい」
なるほど、時限性の認証機構が組み込まれているという事らしい。
僕は、チラリと時刻を確認した。
今が18時前だから……
5月29日の18時が、僕にとってのこの武器の“賞味期限”って事になる。
僕は、更科さんに聞いてみた。
「中を確認しても宜しいですか?」
「どうぞ」
ケースを開けてみると、見掛けはライフルだけど、銀色の不思議な材質で出来た武器が収められていた。
これが、『魔導電磁投射銃』……
手に取ってみると、思ったよりも
「試し撃ちって、さすがに無理ですよね?」
僕の問い掛けに、四方木さんが答えてくれた。
「出来ますよ。射撃場にご案内しましょうか?」
説明会はこれで終了らしく、僕は、四方木さん達に、地下2階へと案内された。
射撃場と書かれたプレートが貼り付けられた分厚い扉を開くと、その向こう側は、思ったより天井の高いかなり大きな室内射撃場になっていた。
更科さんが、『魔導電磁投射銃』の具体的な使い方を教えてくれた。
「あの的に向けて構えて頂いて、引き金に指を触れたら、充填したいMPの量を念じてみて下さい。あ、充填するMPは、10程度にしておいて下さいね。射撃手の方の知恵のステータス値によっては、この射撃場が蒸発しちゃいますから」
更科さんが、さらりと何か怖い事を口にした気がするけれども、とにかく、僕は言われた通りに操作してみた。
MP10充填するように念じると、銃身が僅かに発光し始めた。
「そのまま、的目掛けて引き金を引いてみて下さい。照準は自動で補正が掛かるので、余程でなければ外れませんよ」
四方木さん、真田さん、そして更科さんが見守る中、僕は引き金を引いてみた。
―――ドシュ!
鈍い音と共に、銃口から発射された不可視の何かが、瞬間的に的を破壊した。
同時に、的の上の電光掲示板に、数値が表示された。
『980』
何の数字だろう?
それを目にした四方木さん達が、
少し不安になった僕は、四方木さんにたずねてみた。
「あの……どうしました?」
四方木さんは、満面の笑みを浮かべたまま、僕の方を振り返った。
「ソレ、今日から持って帰って貰って結構ですよ。その代わり……」
四方木さんが、僕の目をじっと見つめながら、言葉を続けた。
「もう一回、中村さんのステータス、測定させて貰えないですか?」
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