【コミカライズ版】最底辺であがく僕は、異世界で希望に出会う~自分だけゲームのような異世界に行けるようになったので、レベルを上げて、みんなを見返します【発売中】
第100話 F級の僕は、アリアを神樹内部の巨大ダンジョンへ連れて行く
第100話 F級の僕は、アリアを神樹内部の巨大ダンジョンへ連れて行く
5月22日 金曜日8
アリアの部屋の中に転移してきたエレンが、声を掛けて来た。
「今からレベル上げに行く?」
「うん。ただちょっと今夜は提案があるんだ」
「提案?」
「今日は、最初の2時間位、アリアのレベル上げ、手伝って欲しいんだ。その後、2時間位、僕のレベル上げするって方向で行きたいんだけど」
僕の言葉を聞いたエレンが、やや困惑したような顔になった。
「アリアのレベル、何の為に上げるの?」
「それは一緒に、神樹の第110層を目指すためだよ」
エレンは、少し考える素振りを見せた後、口を開いた。
「それは、アリアもあなたの仲間だから?」
「そうだよ」
「ヒューマンは、異世界人であっても、仲間を大事にする?」
「まあ、そうだね。って、ヒューマンどうこう以前に、エレンも仲間は大事にするでしょ?」
「仲間……私に仲間はいない」
そう口にしたエレンは、寂しげな表情になった。
「エレンには仲間いるよ」
「いない、なぜなら私は……」
エレンは、何かを言いかけて口を噤んだ。
その様子に若干の違和感を抱いたけれど、僕は、そのまま言葉を続けた。
「前にも言ったけど、僕とノエミちゃん、それに君は、一緒に神樹第110層を目指す仲間だ。で、今日からアリアもその仲間の一人になる」
「えっ?」
「だから、これからも宜しく」
僕は、右手でエレンの左手を、左手でアリアの右手を取った。
「ほら、アリアもエレンの手を取って」
「私も!?」
アリアは、素っ頓狂な声を上げながらも、空いてる手で、おずおずとエレンの手を取った。
ちょうど三人で、かごめかごめをするような態勢になった。
あれ?
なんか、若干、コミカルな事になってる??
僕の戸惑いを他所に、アリアが、今更な感じでたずねてきた。
「タカシ、これ、何のおまじない?」
「仲間だって事を確認するおまじない、かな?」
「何それ」
僕とアリアの会話を聞いていたエレンの雰囲気が
「仲間……私の……」
話が一段落ついた所で、僕は、改めてエレンに話しかけた。
「そんなわけで、今夜はまず、第62層に連れて行って欲しいんだ」
「第62層? ドラゴンパピーとまた戦う?」
「うん。まあ、今夜はとどめをアリアに差してもらうんだけど」
アリアが、僕等の会話に割り込んできた。
「ちょ、ちょっと! ドラゴンパピーって、確かレベル62のモンスターでしょ? 本当にそんなのと戦うの?」
「そうだよ。実は、神樹第62層で戦う時に限って、効率よく倒す方法があって……」
僕の説明を聞いたアリアが、半信半疑な顔になった。
「そんなにうまくいくの?」
「ま、論より証拠で」
僕は、エレンとアリアの手を取った。
「エレン、宜しく」
エレンは、
次の瞬間、僕は、見慣れた第62層に転移していた。
白っぽい大理石のような素材で構成された回廊。
「じゃあ、連れて来る」
アリアが、キョロキョロ周囲を見回す中、エレンは、すたすたと奥へ歩いて行った。
やがて数分後……
―――ズシン……ズシン……
「来た!」
地響きを立てながら、ドラゴンパピーが、ゆっくりとこちらに
いつも通り、背中の翼を小さく折り畳み、窮屈そうな姿勢のまま、尻尾を振り立てている。
「【影分身】……」
僕の意思に従って、僕の影の中から、【影】が一体、出現した。
そのまま、僕は、【影】と共に、一番手前のドラゴンパピーの背中に飛び乗った。
そして、【影】と二人がかりで、ザクザク、ドラゴンパピーの肉を
「ピギィィィイイイ!!」
響き渡るドラゴンパピーの絶叫。
僕のレベルが、75になっている事、おまけに例のエレンの加護によるステータス底上げも影響しているのだろう。
ものの2~3分で、最初の1頭を瀕死に追い込むことに成功した。
「アリア、今だ!」
僕の叫びに応じるように、アリアが、エセリウムの短弓で文字通り、矢継ぎ早に矢を放ち始めた。
4本目の矢がドラゴンパピーの背中に突き立った瞬間、ドラゴンパピーは、光の粒子へと姿を変え始めた。
「ピギィィ……」
哀愁漂うドラゴンパピーの断末魔の悲鳴と共に、耳慣れた効果音が聞こえてきた。
―――ピロン!
アリアが、ドラゴンパピーを倒しました。
戦闘支援により、経験値3,676,846,800を獲得しました。
「よし、次行こう!」
…………
……
2時間後、アリアは、24頭のドラゴンパピー達にとどめを刺し、レベルも50に到達した。
「おめでとう、アリア」
しかし、アリアは、いつぞやのように、妙に納得のいかない顔になっていた。
「確かに楽って言えば楽なんだけど……」
「レベル50でしょ? カイスよりも高いし、これでアリアが、ルーメル最強の冒険者だね」
「数字上は、そうなんだけど……」
「何か心配な事でも?」
「なんだか、本当の意味での戦闘経験も無いまま、レベルだけ上がっても、レベル相応の戦闘技術が、全然追い付いてない感じがして……」
なるほど。
僕は、今のレベルに到達するまでに、それなりにモンスターと死闘を演じる機会があった。
けれど、アリアの場合は今の所、黒の森でも、ここ第62層でも、殆ど動かない的目掛けて弓を射る事しかしていない。
レベルだけ50になっても、気持ち的には、レベル10のままって事だろう。
「その内、モンスターとちゃんと戦ってもらう機会作るからさ。まずはレベル上げる事に専念しようよ」
「うん。分かった」
気を取り直したのか、アリアは、少し笑顔になった。
僕等が手分けしてドラゴンパピーの落とした魔石を回収していると、エレンが近付いて来た。
「次はどこ行く?」
僕は、少し考えてから、返事をした。
「一旦さ、西の塔に行って、ノエミちゃんを連れてまた戻って来ない?」
「西の塔に?」
「うん。昨日と状況変わってなければ、ノエミちゃんは、王宮の西の塔にいると思うんだ。ノエミちゃんがいた方が、僕のレベル上げ、効率良くなるでしょ?」
ノエミちゃんの精霊魔法による戦闘支援は、とても強力だ。
なんとなれば、代償は伴うものの、僕のステータスを一気に二倍にしてしまう事すら可能だ。
僕の言葉に、エレンが
「分かった。じゃあ、西の塔の傍に転移する」
僕は、インベントリから、袋を取り出した。
「アリア、ごめんだけど、またこの袋に入ってて」
アリアを袋に
途端に、自分の姿が、手に抱える袋ごと周囲に溶け込んでいくのが感じられた。
エレンが、僕の服の裾を掴み、何かを呟いた。
次の瞬間、僕等は、西の塔傍の物陰へ転移していた。
「エレンはどうする?」
「私は、ここで待ってる」
「じゃあ、行って来るよ。もし、巡回する精霊がいたら教えてね」
「分かった」
僕は、袋に
そして月明かりの中、そのまま西の塔へと足を踏み入れた。
そのまま最上階まで登っていくと、ノエミちゃんの閉じ込められている部屋の扉の前には、イシリオンが立っていた。
僕は、アリアを床に下ろし、【隠密】状態を解除して、イシリオンに話しかけた。
「こんばんは」
「勇者殿では無いか。どうした?」
「ノエミちゃんに会いに来たんですが、取り次いで貰えますか?」
イシリオンは頷くと、扉をノックした。
内側から扉がそっと開けられ、エルザさんが顔を出した。
彼女は、僕の顔を見ると、少し驚いた表情になった。
「勇者様! もう王宮を離れられたとばかり思っておりました」
「正式には、今朝、王宮を立ちました。ですが、仲間の転移魔法で、こっそり戻って来たところです」
「そう言えば、昨晩もそのようなお話、されてましたね」
エルザさんは、僕とアリアの来訪をノエミちゃんに告げた後、僕等を部屋に招き入れてくれた。
「タカシ様! アリアさん!」
ノエミちゃんが、嬉しそうな表情で駆け寄ってきた。
「どうされたのですか? こんな夜更けに」
「実は、さっきまで神樹内部の巨大ダンジョンでアリアのレベル上げしていてね。今から僕のレベル上げしようと思うんだけど、良かったら、ノエミちゃんもちょっと抜け出して、一緒に行かない?」
僕の言葉を聞いたノエミちゃんは、目を輝かせた。
「是非、ご一緒させて下さい。やはり、タカシ様を第110層に導く事が出来るのは、私をおいて他にはいないはずですから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます