ももたろうとギルド

桃太郎ももたろうはあくるいぬのおんなのをしたがえておおきなまちへとやってきました。



桃太郎ももたろうさん桃太郎ももたろうさん!ここがエレンシア城下町じょうかまちですよ!!」

すっかり元気げんきになったいぬのおんなのは、をおおきくひろげてくるくるまわって、とてもうれしそうにしました。


「へえ。こりゃあいい。なんだってあるんだ。」


そこはいしだたみのゆか馬車ばしゃしろつちかべのいえがきれいにちならんでいるきらきらとしたまちでした。とおくのほうにはれわたった青空あおぞらしたでみごとな、桃太郎ももたろうたこともないようなおおきなおおきなおしろえました。


いろんなかみいろをしてふしぎなふくているひとたちが、みんなニコニコしてまちをゆきっていて、大通おおどおりの左右さゆうにある露天ろてんで、わあわあとおいものをしていました。


桃太郎ももたろう鬼退治おにたいじるまで、おじいさんとおばあさんのいるむらからあまりとおくまでたことはありませんでした。

はじめてまちに、桃太郎ももたろうをまんまるくしておどろきました。


「はい!!ここはこの国の王都ですから!」

いぬのおんなのは、むらからはなれていてめったにることがない王都おうと大好だいすきでした。


「おうと。はて、すめらのおわすみやこは、ぼくのむらから五十里ごじゅうりひがしだというけども。」

そのときに「ヒヒィーン」とちかくをとおったうまがいなないて、いぬのおんなのには桃太郎ももたろうこえはとどきませんでした。


「桃太郎さん、じゃあギルドに行きましょう!確か…こっち、だっけ?」


ギルドというのは、ちからじまんのひとたちが怪物かいぶつわるひとをこらしめたり、まちのみんなをたすけたりするお仕事しごと紹介しょうかいしてくれるおみせのことです。


「ぎるど、ぎるど、そうだったな。」


桃太郎ももたろうはきのう、いろんなとうと宝物たからもの盗っ人ぬすっとからぶんどりましたけど、おもいのではやくっぱらいたいとおもいました。するといぬのおんなのがギルドへこうとったのでした。


「私、ギルドははじめてだけど、この街のことは分かるんですっ!まかせて下さいね!えへへ…」

いぬのおんなの元気げんきいっぱいで、桃太郎ももたろうもつられてニコニコしました。


◆◇◆


ギルドにつくと、鎧兜よろいかぶとをきたいさましいおとこひとや、おおきなおの背負せおったいのししのような大男おおおとこ、はだがくさらされている革鎧かわよろいのおねえさんや、としのころが桃太郎ももたろうたちとそうちがいがないひとたちが、たくさんました。


 みんなかみがいろいろないろをしていたり、みみとがっていたりで、たこともないようなためをしていました。


「はいは~~い♪荷車のお二人さんこちらへどうぞ~♪」

よけをするにしてはちいさな帽子ぼうしをかぶっているおねえさんは、をあげて桃太郎ももたろうたちをよびました。


「あ、あの!これ、全部売りたいんですけど…」


「へ~?ギルドははじめて?お二人さん」


「ええ、ぎるどとやらはたことがないです。」


「ふむふむ、じゃ冒険者登録もなしっと…。んで、荷車の中身は何かな~?お芋かな~?それ…と…も……って…!!!」


荷車にぐるまにかけてあったぬのをめくったギルドカウンターのおねえさんは、かたまってしまいました。


「………………!!!」


桃太郎ももたろういぬのおんなのは、くびをかしげました。


すると、きゅうにしずかになってこわいかおをしたギルドカウンターのおねえさんは、けもののようなすばやさで、おくとびらおおきなおとててあけました。


「…こ、こちらへどうぞ…。」


桃太郎ももたおるたちは、ギルドカウンターのおねえさんのようすに、しん、としずかになったギルドを、ゴロゴロという台車だいしゃおとといっしょになってとびらこうへすすみました。


◆◇◆


とおされた部屋へやには緑色みどりいろのふかふかのこしかけが4つと、のつくえがある部屋へやでした。

「…し、失礼しました、わたくし、王都エレンシアのギルド副理事を務めさせて頂いております、サラ=スーンと申します。以後お見知りおきを。」


「ふぇ!?わ、私はトナタ村のエリシア=ライルですっ!」

犬のおんなの子は、よくわからずに名乗りました。


「これはごていねいに。わたくしは、吉備之 安倍倉川之 山之上之 桃太郎ともうす者です。」

桃太郎ももたろうは、きちんとした名前なまえ名乗なのりました。


「「は?」」

おねえさんとエリシアはかたまってしまいました。


桃太郎ももたろうは、吉備きびというくににある、安倍倉川あべくらがわという土地とちやまうえんでいる、桃太郎ももたろうですと名乗なのったのです。


そうです。桃太郎ももたろうやおじいさんおばあさんは農民のうみんですから、名字みょうじがないのです。ですから、どこにんでいるひとなのかをきちんとわなければいけないのでした。



「し、失礼しました。確認をさせて下さい。キビノ=アベクラカワノ=ヤマノ=ウエノ=モモタロウ様…ですか!?」


おねえさんは、そういいながら桃太郎ももたろう見事みごと刺繍ししゅう陣羽織じんばおりやハチマキをると、きっとエルフのとうといおかたのお使つかいさまなんだとおもいました。でもそれは間違まちがいで、もっととうといおかたなんだとかんがえなおしました。


この世界せかいでは名字みょうじながいほどお家柄いえがらがよく、4つの名字みょうじつのが各地かくち王族おうぞくしかないのでした。ギルドカウンターのおねえさんは、桃太郎ももたろうはきっとどこかとおくの王族おうぞくとうといおかたなんだとかんがえました。


「はい。しかしただの桃太郎ももたろうです。そうんでください。」

「キビノ様…いえ、モモタロウ様、ですね。承知しました。」


「桃太郎さま…!?」

(あわわわわわわそんな方のこっここっこ告白いえいえ求婚を受けてしまった私ってばお妃様であばばばばどどどどうしようどうしよう…お父様お母様…お兄様お祖父様お祖母様…わ、わたくしってばお姫様になっちゃいますことよおおおおお!!!)


エリシアはがたがたとふるえだしました。


二人ふたり様子ようすて、桃太郎ももたろう自分じぶん日本一強にほんいちつよくてとっても有名ゆうめいなんだとおもいました。


「それで、当ギルドにどのようなご用件で…?あ、あ、売却でしたね、も、申し訳ございませんでしたっ!!」


「そうだ。きっとたかってください。鬼退治おにたいじにはどうもおかねるのかもしれないですから。」


「ははっは、はいっ!!」

(お、オーガ退治!?それって一体!?いや待てよサラ、考えろ考えろ~~…あ!この王族様はきっと王様になるための通過儀礼かなにかでオーガを退治したいんだわ!そうに違いないワ!そそ、そうとなったら王都ギルドの副理事として全力でアシストしなきゃ私のキャリアが…危ういかも!?)


「で、では少々しょうしょうください…!」


 ギルドのおねえさんは、のテーブルやそこらじゅうに、とうといおたからならべていきました。

 どれもたことがないような素晴すばらしいしなで、サラはこえつづけていました。


「ぜ、全部で…聖金貨53枚になります…!」

 このくにのおかねいま日本にっぽんのおかねだと、聖金貨せいきんかが1まいで100万円まんえん金貨きんかが1まい10万円まんえんになります。

 盗っ人ぬすっとからぶんどってきたおかねとあわせれば、聖金貨せいきんか73まい金貨きんか300まい合計ごうけいで1おくと300万円まんえんぶんのおかねでした。



「へえ。どうしよう。」

桃太郎ももたろうにはこの世界せかいのおかね価値かちがよくかりませんでした。

エリシアにこうとおもいましたが、なにやら「お姫様お姫様お姫様…」とずっとつぶやいていて、みみをもっていなさそうでしたから、けませんでした。



「そ、それかもしくは、あの、オーガ退治をされるのでしたら、ご自分で使われてみてはいかがでしょうか…?見たところ、お連れ様は何も武器もなく…」


「ほう、それはどうやってですか。なにぶんいえたばかりでして、わたくしはあまり世間せけんをしらないみたいで。」

桃太郎ももたろういました。


「は、はい!まずはこのミスリルの大剣をそちらのエリシア様が装備される事をお勧めします!人族には大きすぎて取り扱いに困ることもある剣ですが、きっと獣人族でモモタロウ様のお連れ様なら適しているかと!!」


「お姫様お姫様お姫様お姫…ハェッ!?え、は、はい私、え、剣!?まままままさかそんな!?持ったことすら無いですよぉそんなの!!」


「エリシア、ふってみせて。」

桃太郎ももたろういました。


「はい!?え、も、桃太郎さんが言うのでしたらまあ…えーと、こう?」

エリシアはほほにててくびをかしげながらも、オリハルコンの大剣たいけんをふってみました。

するとビュンッとおとをたてて、けんはおおきなかぜ室内しつないかせました。


「わわわ!?わわたしってばどうしちゃったの!?」


そういってからエリシアは、きびだんごをべてレベルアップしたことおもして、ピンとうえいたいぬみみをぱたぱたとうごかして、きびだんごがなんだったのかをかんがえはじめました。


「あッは、あッは。あっぱれあっぱれ。」

桃太郎ももたろうは、二人ふたりには不思議ふしぎこえるわらごえげました。


「おっおお…お連れ様なら使いこなせそうですね…?」


「で、では次に…」

ギルドのおねえさんは、テーブルに10まい絵札えふだならべていきました。


「カルタだ。」

桃太郎ももたろうはつぶやきました。


「え?あ、これはスキルカードです。まさか、ご存知ぞんじありませんか?」

「ええ。ぞんじませんね。」


「あ!私知ってます!魔法が使えるようになったり、剣がいきなり上手くなったりする道具ですよね!使ったことはないですけど…」

「はい!その通りです!!」


「へえ。魔法まほう。」

桃太郎ももたろう二人ふたりをみて、まだまだぼくがらないことが日本にほんにはいっぱいあるなあ、とおもいました。


「まずは、えーとそうですね。エリシア様、この【N:ライト】のスキルカードを持って、『ラーニング』と唱えていただきますか?」


「あ、はい。『ラーニング』!って、こうかな…」

スキルカードは、シュッとエリシアの手元から消えました。


「はい!上出来です!それでは、【ライト】と言ってみて下さい。」

「ら、【ライト】!」


すると、部屋へやなかのひらサイズのおさまのような、みんながをつぶっていないといけないくらいのひかりまれました。


「わあああああああ!!私、魔法が使えてる!すっごーーい!」


「ほう、部屋へやちいさなおさまが。」


パチパチパチ、とギルドのおねえさんはをたたきました。


「いや、すごい。このふだ使つかえば、あやしきまじないができるのですね。」

「はい!その通りです!今のは照明魔法ですけど、お持ちいただいたカードの中には攻撃魔法もたくさんありますよ!!」


まほう、というきなれないまじないに桃太郎ももたろうたのしくなってきて、なんだか自分じぶんでも使つかってみたくなりました。


「いろいろな魔法まほうがあるのでしたら、わたくしたちっていそうなものを、どうかそれぞれつくろってください。」


「はい!喜んで!」

ギルドのおねえさんはニコニコして、桃太郎ももたろうに5まい、エリシアに4まいのスキルカードをわたしました。


「桃太郎様は、この中で一番レアリティが高い、攻撃魔法の【SSR:爆砕炎エクスプロージョン】と【SR:水斬アクアカッター】、あとは防御魔法の【SR:メガプロテクション】と回復魔法の【SR:メガヒール】と探索魔法の【R:エリアサーチ】がいいですかね!」


「そしてエリシア様は攻撃魔法の【SR:風爆エアバースト】と大剣スキル【SR:閃空せんくう】、あと捕縛魔法の【SR:黒縛ダークバインド】と回復魔法の【R:ヒール】と…先程の【N:ライト】の合計5つですね!あ、お二人とも、MPの消費量が多い魔法ですからお気をつけくださいね!あ、あと魔法は発動させるつもりでスキル名を言わないと効果出ませんので、ご安心くださいね!」


きなれないことばがおおいなあ。」

(よくわからないがみやこらしきところなだけある。ぼくのらないことがいっぱいだ。)

桃太郎ももたろうふところから和紙わしふでし、筆先ふでさきをなめていま内容ないようきしたためつつ、ギルドのおねえさんであるサラに色々いろいろとたずねるのでした。


ふでも和紙わしも、どちらもエリシアとサラははじめて道具どうぐでありましたが、二人ふたり桃太郎ももたろうがどこかの王族おうぞくだとおもっているので、きっととうと道具どうぐなんだろうなあとおもってなにもいませんでした。


そうして二人ふたりは、手渡てわたされたスキルカードをそれぞれぜんぶって『ラーニング』ととなえました。カードはやっぱり、まれるように二人ふたり手元てもとからえるのでした。



「はい!オッケーですね!あとは実践でカード名を唱えて使ってみてくださいねっ!お二人なら、きっとオーガなんていつかケチョンケチョンにしちゃえますよ♪って、あ、ごほん…失礼致しました…。以上がスキルカードのご説明と習得になります。」



ギルドカウンターのおねえさんはおしえることがたのしくって、いつものかたをついしてしまいました。


「お二人がお使いになれそうな武器とスキルカードはこれで以上として…あとの残りは高級なものですが素材だらけですので、やはり買い取りを致しましょうか?」


「ええ、よろしく。」


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桃太郎さんは、異世界転移に気付かない!~犬・キメラ・ドラゴンと鬼(まおう)退治~ 狐沢コン蔵 @kitsunezawa_konzou

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