第10話 火星からの制裁

 毎回投稿ボタンをおすときは不思議な緊張感に襲われる。


 火星に住むお偉いさんたちと戦おうとしている感覚がリアルに感じられるからだ。


 いつ、火星側から制裁が下されてもおかしくないし、同じ地球にいるアシダー党さえも敵に回している。俺たちは大きなことをしようとしている。そう感じる瞬間だ。


 前回の投稿のときは自分たちのアカウントのフォロワーの伸びと拡散度が大切だったので自分たちのアカウントを確認していた。


 だが今回は、火星側のアカウントやHPに成果が出る作戦なので、俺らは手分けしてチェックすることにした。


 投稿から五分もたたずにたくさんの拡散、反応、そして作戦への協力があった。


 「やっぱり、俺たちが長期間何もしなかったから注目は大きかったみたいだな。」

 「まぁ長期間何もしなかったら次は何をするのか気になるのが筋ね。」

 「何はともあれ計画は順調だ。」


 果たして火星側は何をしてくるのか。


 今回の計画で一番の失敗パターンは火星側が何もしてこないことだ。少しでも行動を起こしてくれないと、俺たちは次の計画に入れない。なのでできるだけ火星側に認知させるために多言語で、かつたくさん投稿しているのだ。


 「また私達暇になっちゃったわね。」

 「火星側が行動を起こして来たらまた忙しくなるけどな。」

 「ふふ。そうね。」

 

 続けて紗耶香さやかが口を開いた。


 「私、この間に家で休む期間を作ろうとと思うわ。作戦会議でずっと誰かといたし、この計画を考え始めてからほぼ友達とも連絡取れてないし。」

 「そうか。じゃあ俺も家で休もうかな。」


 本当のことを言えばこの世界に友達なんかまだいるはずもないし、ほかの友達は俺がタイムスリップする前の世界にいるので実際紗耶香が家でまったりとしている間することもないのである。


 「そうなのね。じゃあその期間が終わったらまた会いましょう。」

 「あぁ。」



 残念ながら紗耶香が家でまったりしている間、俺はここで語れるようなことは何も起きなかった。



 数日後、火星が地球に対して圧をかけてきた。俺たちのアカウントの一つが特定されたらしい。


 火星側からは、


 “これ以上活動を続けるようならそれ相応の対応をさせてもらう。今回は脅しでしかない”


と来た。


 「今回は」というのはおそらく地球上で確認された十体前後の警備型ロボットのことだろう。今日のお昼ごろSNSに上がっていた情報を目にした。


 不具合か何かで一体しか起動しなかったらしいが、不具合ではなく脅すためにわざとしたのだろう。


 回収できればそこから火星側の技術を抜き取れたが、残念ながら今回のロボットはすべてアシダー党に回収されてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る