第3話 紗耶香との出会い

 家にあったハイテク機器を一通り見てもう驚くことはないだろうと思っていた。どうせ屋外も近未来化していて、想像できないほど栄えているのだろうと思っていた。


 だがそんな想像は大きく裏切られた。


 道は地上だけではなく、ちゅうに配置されたチューブのようなものの中にも通っていた。建物も元の世界に形は似ているが、様々な色の鮮やかな映像広告がいくつも輝いていた。ここまでは予想どうり。


 しかし人影は思っていたほどいず、目についたのは一二台しか通ってない車と、歩道を歩く10人くらいの人だけだった。


 地球の未来はもっと栄えているものではなかったのだろうか。


 映像広告がニュース映像に切り替わった。


 “国会では今日、アシダー党が主導権を握り、火星へ移住した人々に対する措置について、「厳重化された警備を強行突破するために各国との連携を強め、引き続き軍事開発に多額の投資をするべきだ。」と述べました。ランダロ党に代わりアシダー党が力を強め、軍事費が大幅増加した予算変更案が可決されるとみられます。”



 近代化ってこんなにも進んでるのかよ。火星移住ってなんだよ。アシダー党ってなんだ。


 体力が完全に回復していない状態で家を出てきたのもあってめまいがしてきた。自分が思うように足を動かせない。


 「大丈夫ですか?」


 数少ない通行人の中にいた一人の女の子が俺に話しかけてきた。背格好は俺とほぼ同じなので高校生だろうが、顔がとてもかわいかった。いや、可愛いなんて言葉で片付けられるものではなく美しいという言葉が一番似合う美しさだった。


 顔立ちは端整で人形みたいで、頭からは茶色のさらさらとした髪が、肩より下まで伸びていた。


 「大丈夫です。少しめまいがしただけです。」


 それを聞くと相手の女の子は安心したように笑みを浮かべ


 「それならよかったです。この辺では見かけない顔ですね。お名前は?」

 「家門夏彦やもんなつひこといいます。」

 「家門やもんさんですか。最近ここら辺に引っ越してきたんですか?」


 タイムスリップの話を大真面目な顔をして説明しても頭が成仏した人だと思われてしまうだけなので嘘をつくことにした。

 しかし、今俺は情報が喉から手が出るほど欲しいのだ。だから嘘をつきつつ情報が手に入りそうな方法を考えた。


 「えぇ。最近越してきたというよりも、長期で入院してまして。その関係でここ最近の政治とかには疎いうといんですよ。」

 「どうりで全然お見掛けしない顔だと思いました。長期入院明けのめまいも心配ですし、よろしければ家までお連れしてこれまで何かあったかお教えしましょうか?」


 それはとてもありがたい。嘘をついたのが功を奏したこうをそうした


「あなたがよろしければぜひ。あなたのお名前は?」

叶井紗耶香かないさやかといいます。私の家がこの辺にあるので行きましょう。」


 俺は話を聞くために叶井さんについていくことにした。

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