第17話 北区の悪夢、再び

 ダビング北区。

 ここは何かと因縁のある場所だな。


 かつて、シェルニが奴隷として扱われかけていたんだったよな。

 その後は居座っていた悪党たちは一層され、この北区にも平和が戻った――が、まさかここ最近になってまた変な輩が住み着いていたとはな。


 レラーヌを誘拐しようとしていた連中は、ここにいるボス格の者が指示を出したのだろう。俺たちはその正体を見極める必要があった。


 フラヴィアとケーニル。

 うちの最大戦力ふたりとともに、北区へと乗り込んだわけだが……呼んでもいないのにそれっぽい輩が集まってきた。


「なんだぁ、おまえら」

「ここへ何しにきた?」

「うん? あれ? こいつは……」

 

 武装した男が十人ほど集まってきたが、そのうちのひとりが俺の顔を見てどんどん青ざめていく。


「お、おまえ! 魔剣使いの商人か!」

「よく知っていたな。前にどこかで会ったか?」

「ここでおまえにぶちのめされた奴隷商だ!」


 バカ正直に答えてくれたけど……そういえば、シェルニを追っていた連中のひとりに顔がよく似ている。


 性懲りもなくまたここで悪さをしているのか。


「ならもうあきらめろ。俺の――いや、俺だけじゃない。こっちのふたりも俺に匹敵するくらい強いぞ」

「まあ、そう言っていただけて光栄ですわ」

「照れちゃうよね~」


 満更でもないふたりはテンションが上がり気味。

 対照的に、相手側はさらに顔色が悪くなっていく。


「ま、魔剣使いの商人一味といえば、魔王シューヴァルを倒したっていうじゃねぇか!」

「そんなヤツらに勝てるわけがねぇ!」

「お、俺は逃げるぞ!」


 先ほどの勢いはどこへやら。

蜘蛛の子を散らすように逃げていく悪党たち。


そこへ、騒ぎを聞きつけた親玉と思われる男が大勢の部下らしき者たちを連れて現れたのだが……まあ、予想通りの人物だった。


「おまえ……マーデンか?」

「げぇっ!? ア、アルヴィン!?」


 お約束というべきか、ヤツらのボスは以前ここで奴隷商をやろうとしていた元魔法兵団のマーデンだった。


「おまえも懲りないヤツだな」

「う、うるさい! 俺はあれから修行を積んでパワーアップをしたんだ! そう簡単にはやられんぞ!」

「なら……相手になってやる」

「ぐっ! や、やっちまえ!」


 マーデンの合図を皮切りに、武装した男たちが一気に攻め込んできた。


「まったく……身の程をわきまえない者たちばかりですわね」

「でも、手間が省けて楽だよ」

「その点については同意しますわ」

「よし。行こうか」


 これだけの人数を相手にするのは久しぶりだから、少し興奮しているな。

 俺は魔剣に魔力を込めると、男たちを迎え撃った。

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追放された魔剣使いの商人はマイペースに成り上がる 前世で培った《営業スキル》で、仲間と理想のお店を始めます。 鈴木竜一 @ddd777

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