5話 牛に引かれて善後寺参り
※注意※ これはSoul Keeper(s)本編 37話と38話の間の話になります。
本編37話まで読んでいただくとこの作品をより一層楽しんでいただくことができます。
「ぐぼはっぁ!!」
冷気が熱気となる。
異常な速度の拳は蒸気さえも置き去りにし、衝撃は木原の身を貫き、向こう側の地面まで抉る。
そして血反吐を吐きながらぶっ飛び、地面にバウンドしながら落ちる。
開いた口からは煙が抜け出ていた。
「…!!!」
本田もその場に倒れた。
九条が駆け寄る。
「おい!大丈夫か!熱ッ!!」
本田の体は熱したやかんのように熱かった。
「
「…はっ!!!」
見覚えのない天井。
「えっ!!…痛っ…。」
見渡そうと起き上がろうとするが全身が痛い。
「起きたか…お前の熱暴僧…文字通り弱点は長時間使用の過加熱による熱暴走だ。それはお前の肉体をも破壊しかねない。特に脳。」
九条の声。
「…界人さん…ここは…あと俺は…。」
九条を見て目が潤む。
「ああ、だが不思議とミタマによって守られているみたいで問題はないみたいだ。あとここは病院。」
「え、じゃあこの痛みは…?」
「お前が対処法として急場で発明した蒸熱だ。」
ポケットから取り出した飴を口に放り込む。
「あれは車で言うギアのようなシステムで出力を調節しつつ弱点を克服してるものだ。そうだろ?」
「はい、敵の冷却がいいヒントになりました。」
「ただあれは
九条は本田の目を見る。
「…はい。それは身体で理解していたので
「いや、第一や第三はまだ問題なかったんだ。その中でも全開放の第六、あれはギアのオーバートップを超えた状態。今回はこの程度で済んだが…。」
九条はそっと息を吐き、拳を握る。
「…やめてくれ。」
「…すいません。」
九条は立ち上がる。
「だがアイデアは良かった。もっと工夫をするといいな。」
「はい!…あれ?界人さん、どこへ?」
「いろいろとやることがあってな、また来る。」
九条は病室を出ていった。
「…そうか。ここ数ヶ月頻発していた自動車のスリップ事故は奴が原因か。」
大きなハンマーを背負った少女に九条は報告する。
「はい。つまり木原の引き起こしたスリップによって本田が事故を起こし、それに廻も巻き込まれたということの様です。」
「なるほど…廻くんの身元判明に役立ちそうな情報ありがとう。…それで?「木原 賢治」は?」
「そのことなんですが…とりあえず。この間は…本当にすみませんでした。」
九条は頭を下げる。
「え!?頭を上げてくれ!どうした?」
「ミタマ協会入りの勧誘を断った時に酷いものの言い方をしてしまったので…。」
九条は頭を上げ、息を吸う。
「…あんたらの力になりたい。ミタマ協会に加入させてくれ。」
再度頭を下げる。
「…大歓迎だ!!」
「ありがとうございます。」
顔を上げるとそこにはバッジがあった。
「…これは。」
「加入の証だ。」
九条はバッジを受け取る。
「それで木原のことなんですが…」
翌日
久々のこの玄関ドア。
一晩いなかっただけなのにどこか懐かしい。
渡されていた合鍵で開ける。
「ただいま帰りました!」
「お、帰ったか。」
九条が出迎える。
「早かったな。」
「ええ、早乙女さんに直してもらったので!」
本田は手に持ったバッジを突き出す。
「お、お前も入ったのか…!」
「おかえりなさいませ…。」
細身の男が九条の後ろから出てきた。
「え…お前は!!!」
本田は指をさす。
「木原!!」
「…は、はい。すいません…!」
木原はペコペコと頭を下げる。
「どういうことですかぁ!??界人さん!」
「あー…こいつ、これまでに何度も事故を引き起こしててお前含め物的被害も人的被害もやばいことになってんだよ。」
木原を親指でさす。
「んで、法的にもどうしようもないから俺の元で保護観察処分…。そして、」
九条はポケットからバッジを出す。
「その為のミタマ協会だ。」
「そうなんですね。じゃあしばらくは…3人?」
「あぁ…困ったことにな。」
九条は頭を掻く。
「ご厄介になります…すいません、本当に…。」
またしても木原は頭を下げる。
その時
ぐぎゅるるるるるるるるるるるぅ
と腹が鳴る。
「へへ…すいません。」
笑ってごまかす本田。
「僕もお腹…空きました。」
木原は手を挙げる。
「チッ、仕方ねぇ…飯にするか…。」
それから数年後、本田と木原の2人は店を出し、人気店となって巨万の富を築きあげるのはまた別のお話。
第1弾 Another Moon
完
Soul Keeper(s) 外伝 HalTo @HalTo
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