4話 焼け意志に水

※注意※ これはSoul Keeper(s)本編 37話と38話の間の話になります。

     本編37話まで読んでいただくとこの作品をより一層楽しんでいただくことができます。


「あらゆる物質は…を持っている…それは物質が動くときに発生するものだ…。」

木原は言う。

「では動いていない物質に強制的に熱を与える…無論、物質は何らかの動きを伴う。」

九条は彼が何を言っているのか分からなかった。

「じゃあ逆はどうだろう、…すると物質は…。」

(…まさか!!)

「停止する。しかし理論上は不可能だ…が、この『TACETタチェット273トゥーセブンスリー』ならば可能だ…。」

「そうかぁ!!難しくて分かんねぇがありがとな!!」

「何!?」

木原は振り向く。

熱暴僧ねつぼうそう!!蒸熱じょうねつ第一キャノン!!!」

「ぐぼぁっ!!!」

高熱と蒸気を纏った高速のパンチが氷の鎧ごと木原をふっ飛ばす。

(本田か…!)

「界人さん!」

本田は九条に近づき、その身に触れる。

「…っ!…動ける!」

「大丈夫ですか?」

「…ああ、それより…。」

九条の視線の先、はるか遠くから木原がやって来た。

「奴を止めます!!熱体!」

本田は九条の前に立ち、地面に両手をつく。

「培熱…。」

地面が温まる。

なおも木原は近づいてくる。

「むむ…!」

本田の体は濃く、赤黒くなり、地面も同様に煮えたぎる。

「…からの大爆熱!!!」

「!?」

本田の前方が噴火のような大爆発を起こした。

「…よし!」

「…いや!まだだ本田!」

溶岩の中からツヤツヤしたたまご型の物体が姿を現した。

「『proto-Z』!!」

霊力の弾丸、砲丸、ミサイルがたまごへ向かって飛ぶ。

鳴り響く射撃音。

「クソ…!」

全て命中したが、無傷であった。

否、傷は付いた。

付いたそばから

「じゃあこれなら!!二の陣形フォーメーション・ツー護る者ガーディアン!」

目の前のたまごにが迫る。

甲高い音が響く。

「何…!」

傷こそついたがそれも修復された。

「…俺が行きます!!熱暴僧!!はああああああああああ!!」

本田は無防備になったたまごに突っ込む。

「蒸熱…!!第三!!」

蒸気が濃縮され、更に速度を上げる。

キャノン!!」

さっきよりも高い破壊力と温度をもって拳はたまごに衝突した。

たまごはひび割れ、蒸気で辺りは覆われる。

何かが飛び出した。

「本田!気をつけろ!」

「「「まさか僕の冷柩と卵殻アイス・エッグを破るとはな。」」」

木原が3人になっていた。

「!?」

氷点下の蜃気楼フローズンミラージュ…。」

3人の木原は息の合ったコンビネーションで本田を空中に浮かせ、次々と攻撃を与える。

「ぐあああああっ!!」

本田は地に落ちる。

3人の木原は九条の方を向く。

キュキュ、と音を立てて一瞬のうちに九条の左右後ろ側、そして正面に迫っていた。

「チッ!」

背後の2人はで防ぎ、前方には前蹴りをかました。

が、正面の木原は消えた。

「やっぱりな。」

は拳へと姿を変え、木原はふっ飛ばされた。

「何…!?」

九条は本田の所へ駆け寄る。

「大丈夫か?」

「…はい。」

「奴は…冷気、それもミタマを使う。つまり…」

「俺と真逆のタイプ…ですね。」

「そう。あと俺の霊力探知ではっきりした…。」

倒れ込む木原を指さす。

「お前…限界だろ?」

「…!?」

「さっきの休憩に霊力の乱れ、そして高速移動能力で生じた残像と蜃気楼を使ったちゃちな分身攻撃…。」

九条は鼻で笑う。

「前半で飛ばし過ぎたんだな。」

「…ッ!!!どいつもこいつも…!!僕のことを馬鹿にしやがって!!!」

霊力が膨れ上がり、辺りに冷気が立ち込める。

氷点下の蜃気楼フローズンミラージュ…!!」

九条と本田の周りを6人の木原が囲む。

「こいつ…まだいけたか…。本田!!」

「はい!『ライデンシャフト』熱体!!」

ミタマを出し、自身の体を極限まで温める。

「「「「「「馬鹿にするなよ…今の僕に熱など効かない!!虚像と鏡像フリージングミラー!!」」」」」」

鏡のような氷が何枚も何枚も周囲に張り巡らされた。

幾人もの木原が迫りくる。

「食らえ!!」

「本田…右だ!!」

「はいッ!!培熱!熱機玖ねつききゅう!!!」

本田は右方向にミタマと共に殴りかかる。

「何!?…だが避けてしまえば…!」

人間の体というのは自動車や船と同じように急場において軌道を変えることは難しいものである。

しかし木原はその刹那、精いっぱい体を動かし紙一重で本田の拳の軌道から逸れた。

だがその目に映ったのはマグマの魔人が人間ほどのサイズの鉄拳を手にし、こちらへと迫ってきているところだった。

「何いいいいいいいいいいいいいいい!!!??」

高熱を伴った鉄塊がミタマごとその身を押しつぶす。

「ぐぁはっ!!」

『ライデンシャフト』が手を放すと、5m…10m…いやそれ以上の距離を拳ごと飛んだ。

瓦礫にぶつかり、止まる。

「ハァ…ハァ…、なんとか…衝撃を吸収できた…凝固する強化氷壁ダイラタンシー・シャーベット氷と熱膨張アイス・エアバッグがなければどうなっていたか…ハァ…逃げよう…危険だ…。」

スピードスケートのスーツのような鎧は部分的にだが砕けていた。

「ハァ…人間工学に基づいた氷像アイス・クラフト…。」

木原は立ち上がり、鎧を修復する。

「なッ!」

その時視界に飛び込んできたのは蒸気を纏った男だった。

「蒸熱…第六…!!」

「アァ…『TACET273』!!!!!守ってくれ!!!!」

氷の鎧、壁、クッションなどありとあらゆるものを展開する。

しかし拳はそれらをものともせず、熱と蒸気をもって木原の腹部にめり込んでくる。

キャノン!!!!!!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る