エキセントリックと百合少女
ろいにー
第1話
「いやぁ〜、やっぱりこの季節の午後は穏やかだなぁ〜」
ヨーロッパのある街。新緑の季節ということもあって木々には緑が茂り、建物に絡みつく蔦にはレースのような花びらが開いていた。石畳が敷き詰められた道の上には、陽を浴びて嬉しそうに咲く花々が植わったプランターが点々と置かれている。
そんな道に、いくつもの店が軒を連ねていた。
絹のように繊細なクリームの上に、宝石のように鮮やかな果物が盛られたケーキが所狭しと並ぶ
ショーケースをちらりと見れば、今年の新作はペリドットのように輝く葡萄とさっぱりしていながらコクのあるクリームチーズを合わせたタルトらしい。
職人が朝早くから仕込み、黄金色に焼き上げた香ばしいパンが並ぶパン
パンだけではなくバターをたっぷり使ったクッキーや、キャラメリゼしたナッツがごろりと入ったパウンドケーキなど、職人の腕や感性が活かされた焼き菓子も木のトレーに乗せられて客に手に取ってもらえるのを今か今かと待っているようだ。
他にもこじんまりとしていながら趣のあるカフェや食事店、紅茶の店や花屋などが立ち並ぶ街中で、奇抜な容姿の青年がひとり伸びをした。
木々の緑にも劣らないほど鮮やかな緑の髪をオレンジと黄色のリボンで適当に結っており、片方は不思議なことにハートの形をとっていた。
結いきれなかった髪はおろされゆるりと巻かれている。
左目にはぱさりと前髪がかかっており瞳の色は分からないが、右目は街に注ぐ陽を映してきらりと紅く光っている。
みずみずしい青リンゴのような色をした外套は、青年のその髪の色、雰囲気にとてもよく似合っている。
緑と花に溢れた街をのんびりと歩く青年の元に、風に乗ってふわりと花びらが舞ってきた。青年は一度立ち止まりそれを片手でキャッチする。手をゆっくり開いた青年は、ふっと笑った。
「白いガーベラか…ほんっとにこの街の人は植物を愛でるのが好きだね、まぁ僕はそんな君たちのことが大好きなんだけど♡」
ふうっと軽く息をかけて花びらを飛ばすと、青年はまたゆっくりと歩き出した。
「あぁ、そういや昼飯がまだだったね。今日はパンの気分なんだ、付き合ってくれポムベルト」
自身が羽織る外套にそう呼びかけて、青年は昼食の方向へ向かった。
エキセントリックと百合少女 ろいにー @Roiny612
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