ROUTE12 なんだかわかんないけど、走れ!

 先に学校へ戻ってみることになった。


 先生に話を聞いたり、あと写真をあちこちに貼らせてもらおう。


 と思ったら、学校の横の路地にたむろってるお兄さんたちがいる。


 たぶん、片水崎かたみさき高の人たちだ。最近、よくこの辺でなぜか運動会の練習をしてる。私たちの邪魔にはならないようにしてくれてるけど、なんかちょっと苦手。


「今年こそ! 憎き赤組を血の海に沈めるのだ!」


「悪魔の白組に正義の鉄槌てっついを!」


「青組はおのれの敗北に青くなれ!」


 ……やっぱ苦手。


 折賀おりがくんもさすがに見過ごせなくなったっぽい。


「お前ら、言葉がスポーツマンシップに程遠いぞ。近隣にも児童にも悪影響だ。改めろ」


「貴様、その装備から察するに我ら『黒』の同志かっ!?」


 折賀くんがお兄さんたちと同じ黒ジャージ着てるからって、勝手に仲間にしないでほしいな。


 折賀くんもそう思ったらしく、いかにも不機嫌そうな顔でいちばん偉そうな顔してる人の前にすいっと歩み出た。


「俺ももと片水崎だ。お前らの競技はなんだ? 全員まとめて、二度となめた口をきけなくなる程度に遊んでやるよ」


 なんかイミフだけど、カッコいい!!



  ◇ ◇ ◇



 お兄さんたちが特訓しようとしてたのはリレーだった。リレーって、あんな変なセリフ言いながらやるもんだっけ?


 遊んでやると言った折賀くんは、風のように一瞬で路地を駆け抜けて、まさに全員を軽く吹き飛ばしてしまった。足まですんごく速い!


「ぐうわあああッ!!」「何故だ! 速すぎるッ!」


 次々に闘気が失せて倒れ伏していく黒組メンバーに、折賀くんは振り返って


「どんな言葉も、ひたむきな汗にはかなわない。高潔な精神を忘れるな」


「さーせんっしたァーー!!」


 全員を路上で土下座させてしまった。


「俺たちは…特訓が行き詰まるあまりに大事なことを忘れていた……!」


「待ってください! 後輩たちにも語り継ぎます、せめてお名前をっ……」


「時間を無駄にした、行こう」


 わたしと折賀くんは、名前も告げずにさっさと走ってった。


 次は動物病院の方、行ってみよう。



  ◇ ◇ ◇



 病院へ行くと、獣医さんに、一週間前からずっと眠り続けているという「セレ」という名前の柴犬のところへ案内された。


「この『セレ』について、何かご存じありませんか」


 残念だけど、何も知らない。でも何か、ケンタに通じるものを感じる。


 そのとき、病院に知らない茶髪の男の人が入ってきて声を上げた。


「折賀! その子は……」


 なんでだろう。今やってきたのは、茶髪のお兄さんだけなのに。


 、なんだか懐かしい誰かがやってきたような気がする。



●・○・●・○・●・○・●・○・●・○


つぎは

⇒ROUTE14 ケンタが消えちゃった!

https://kakuyomu.jp/works/1177354054897049162/episodes/1177354054897258478

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