第50話 作戦開始
スクリーンには主星の超新星爆発で、過去存在した伴星からいったんは吹き飛んだガスや砕け散った惑星の残骸が渦を巻きながら青白い中性子星に引き寄せられていく。
形のあるものは直径20キロの中性子星に接近するにつれ、その大重力により砕かれ最終的にはプラズマガスになっていくのだが、以前観測機からもたらされた映像そのままに、プラズマガスが徐々に凝縮していき一つの形が作られてゼノが発生した。生まれたばかりのゼノは、徐々に加速しながら中性子星から離れていき前方に待つゼノの集団に溶け込んでいく。そのようなゼノが中性子星のいたるとこらから湧き出てきている。
ゼノを排除しつつ中性子星に接近し、NSコラプサーにより、中性子星4U 0142+61をブラックホールまで重力崩壊させ、速やかに撤退することが今回の作戦の流れだ。ゼノの撃破が目的ではないことと、速やかに撤退する必要があるため攻撃機隊は出さず、アギラカナとゼノブラスター搭載可能な軽巡以上の戦闘艦で作戦を進めることとした。
超空間を航行した十二年間でかなり戦力を増強できた。
機雷艦 72
軽巡洋艦 42(ゼノブラスター4基装備、正4面体の頂点数)
重巡洋艦 36(ゼノブラスター12基装備、正20面体の頂点数)
特型重巡洋艦 4(ゼノブラスター20基装備、正12面体の頂点数)
および、宇宙戦艦アギラカナ(ゼノブラスター多数+NSコラプサー)
「アギラカナに接近するゼノを排除しつつ中性子星4U 0142+61に接近する」
「アギラカナ、前進微速」
「閣下、正面から向かって来るゼノはやはり硬そうですね」。航宙軍アマンダ中将、今回も俺の副官だ。
「最後の正念場ですから、なんとか踏ん張りましょう」
「アギラカナからの距離1AU内のゼノの総数七百二十万、なおも増加しつつ、接近中」
「全シャフト開放!」
アギラカナには、船殻素材で装甲された1辺60キロの正六角柱状のシャフトが複数あり、外部と艦内に複数ある宇宙港をつないでいる。そのシャフトは、シャフト入り口およびシャフト内数カ所で、同じく船殻素材を用いた装甲板で塞がれていたが、その装甲板がたたまれシャフトが解放されていく。
「全機雷艦発進!」
七十二隻の機雷艦がアギラカナから全周に放たれた。
機雷艦に吸い付けられるように接近したゼノが対消滅弾の迎撃に会い閃光を放ち崩壊していく。アギラカナ周辺のゼノの密度が徐々に下がって行った。
「全艦、展開せよ。展開後は、速やかにゼノブラスター起動し、接近するゼノを排除せよ」
「全艦発艦完了しました。全シャフト閉鎖します」
「全シャフト閉鎖確認」
「全艦、ゼノを排除しつつ展開中」
軽巡洋艦は艦の周りにゼノブラスターの重力井戸を正四面体の頂点となるよう四個展開し釣り合いを取っており、重巡洋艦では艦の回りに重力井戸を正二十面体の頂点となるよう十二個、特型重巡洋艦も艦の周りに重力井戸を正十二面体の頂点となるよう二十個展開している。
各艦は、自艦の周りの重力井戸を複雑に回転させながら、さらに各艦ともゼノブラスターが互いに干渉しないようアギラカナの周囲を複雑な軌道を取りながら周回し、ゼノを
アギラカナ周辺の空間のいたるところで、ゼノブラスターに飲み込まれたゼノが閃光を放ちながら崩壊していく。ゼノブラスターの
「アギラカナ、全ゼノブラスター起動警告。起動五秒前、三、二、一、起動」
アギラカナ周辺でゼノを排除中の艦船に対し、アギラカナが周囲に複数の重力井戸を展開する警告をおくった。
「アギラカナ、全ゼノブラスター起動しました」
ゼノブラスターが作る重力井戸のレンズ効果で艦の全貌が揺らぐ。
その間もアギラカナは中性子星に接近を続けている。そして、
「NSコラプサー射程内に4U 0142+61中心部を捕らえました」
「アギラカナ停止。中性子星との相対位置固定」
「アギラカナ停止。位置固定しました」
……
こちらが沈む前に、NSコラプサーで中性子星を重力崩壊させることができれば勝利だ。アギラカナ、艦隊のみんな、踏ん張ってくれ。
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