第14話 閑話。アーセン、アギラカナ概略

アーセン連合王国


 最大版図、直径100光年ほどの広がりを持つ宙域を支配。アーセン王国を盟主とした数個の属国の連合体で124の星系、132の惑星、多数の宇宙コロニーからなる星間連合王国。 (8205年前)


第一次ゼノ戦争 (8205年前~8185年前)


 ゼノ第一波との戦闘。バイオノイドの多大な犠牲のもと、ゼノ第一波を撃退。


 当初のキルレシオを分析した結果、アーセンの中・大型艦が一隻撃破されるまでに、ゼノを撃破する数は約200、キルレシオは200:1


 それに対し、小型艦のキルレシオは、100:1程度であったが、有人攻撃機の場合、30:1、無人攻撃機の場合でさえ10:1の結果が出た。


 その分析結果をふまえ、軍部は有人攻撃機の大量配備を決めバイオノイドの兵員枠を大幅に拡大した。政府は現行法を改正し、バイオノイドの強制徴兵を始める。


 当時人口の三割を占めたバイオノイドのうち十五歳から六十歳までの成人バイオノイドが徴兵され、そのほとんどが、対ゼノ最前線ですりつぶされるなか、からくもゼノの撃退は成功する。


 アーセン人は、戦時中バイオノイドがその待遇について不満を持っているのではないかと危惧し、一連のバイオノイド規制を実施。そのためバイオノイドの絶対数および生産数は戦前の数割程度まで落ち込んだままで、第二次ゼノ戦争を迎えることとなった。


第二次ゼノ戦争(仮称)(8075年前~8010年前)


 ゼノ第二波との戦闘。第一次ゼノ戦争の復興途上、ゼノ第二波がアーセン版図全周より襲来。


 第一次ゼノ戦争終結後まもなく船殻技術が確立され、戦闘艦の防御力が圧倒的に向上したが、開戦時、船殻を持った戦闘艦は既存戦闘艦のうち二割に満たなかった。さらに、バイオノイド規制のためバイオノイドの絶対数も回復しておらず、バイオノイドにかわり大量に配備されていた無人兵器もやがて払底し、さらに大量に消費される反物質の生産も追いつかず苦戦。最終的に、連合王国は全星域を失陥。連合王国アーセンは滅亡する。第二次ゼノ戦争は便宜上べんぎじょうの仮称。



惑星型宇宙艦アギラカナ


 アギラカナは、第二次ゼノ戦争終盤、悪化する戦況の中、ゼノ戦争敗北による連合王国の滅亡後を見据えた、アーセン人の種の存続をかけた惑星開発専用宇宙艦として竣工。多数の護衛用戦闘艦を従えて、中心星系アーセンよりゼノの形跡がないとされる星域への航行を始める。


 アギラカナは、管理AIにより全て管理され、三百万のアーセン人受精卵を乗せ新たな天地を求め旅立った。当時のアギラカナは現在のコアに相当する部分をSS6級船殻 (直径、2560キロ)で包み、アーセン人の種が初期段階で途絶えることのないよう、自動機械と資源も満載していたが、搭乗するバイオノイドの数は比較的少数に抑えられていた。この数少ないバイオノイドは第一期バイオノイドと現在のアギラカナではいわれており、彼、または彼女には無意味となるであろう自身の生産工場を指す第二名だいになはなく、第一名だいいちなだけで呼称される。


 航行途中、艦隊はゼノの中規模集団と遭遇。護衛艦隊が全滅し、アギラカナにも、ゼノの自爆攻撃が多数直撃、船殻を一部破壊される。破壊された船殻部分でさらに、ゼノの自爆攻撃が重なり、発生した高強度中性子ビームにより、厳重に保管されていたアーセン人受精卵が全滅してしまう。数カ所に分散保管されていた受精卵が全滅してしまったのは不幸というほかない。また、激しい攻撃の中、艦内の資源の大半も喪失してしまう。


 管理AIの判断により、当時実験段階であった超空間ジャンプを緊急実施。その際超空間ジャンプ機関を喪失。ゼノの攻撃を振り切ることには成功するが、本来の目的であるアーセン人の種の保全には失敗する。その後恒星間空間を漂流することになる。漂流中の初期、アーセン所属星系からの別れを告げる広域超空間通信を受信。最終的に主星系アーセンの防衛艦隊司令部による隷下の艦船に対する玉砕命令を傍受し、連合王国アーセンは滅亡したものと判断。


 その後、測位の結果、アギラカナの漂流位置がアーセン領域から約8000光年の距離を隔てた位置であることが判明。数年後、運よく恒星間浮遊惑星を発見し取り付くことに成功。惑星内物質を資源に変換しつつ内部へ浸食し、その浮遊惑星の核と入れ替わる形で、現在のアギラカナの原型を形作る。



現在のアギラカナ


 浮遊惑星をくり抜き、特殊素材で強化して惑星自体を宇宙船化している。直径1万4000キロ コア、中間層、外周部からなる。


 コア部分には本来のコアを強化する形で、各種動力発生器、各種防御兵器、各種製造機械などが置かれている。


 中間層には、各種金属資源や燃料となる水素、ヘリウム、メタンなどを備蓄。


 外周部は100キロ間隔で十層の地表を持つ殻を形成している。内側から第一層、第二層と順に名前が付けられている。第一層と第二層までテラフォーム済み。第三層から第七層はテラフォーム中、第八層から第十層は地表化工事進行中。十一層目は船殻素材で形成された外殻で、宇宙空間に接している。


 最内層の第一層と最外殻である十一層を除く外周部各層の構造は、底面には下の層を照らす発光層、層を支える構造層10キロ、地殻層20キロ~30キロ、大気層60キロ~70キロ。各層には、コアから外周部外殻までを貫く1辺60キロほどの正六角形の断面を持つシャフトが何本もそびえ立っている。


 アギラカナは宇宙艦なので、自走できるがその巨大さゆえに加速性能は低い。


 アギラカナは、アーセン人の直接の生き残り、または宇宙開発黎明期に行方不明となったアーセン人の末裔が生き残っている可能性に賭け、艦の本来機能である惑星開発を進めている。


 その傍ら、ゼノとの接触に備え軍備の拡充を継続的に行っており、相当数の軍艦やそれを運用するバイオノイドを生産、保有している。しかし、これまでのアーセン憲章の制約によりそのほとんどが休眠中である。休眠中のバイオノイドには第一期バイオノイドも含まれる。


 新たなアギラカナ憲章の発効により、徐々にではあるが軍備の休眠状態は解かれつつある。




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