第54話 秋刀魚の味

1962年の日本映画です。


小津安二郎監督最後の作品。


私が小津安二郎の作品を観まくったのは、スペイン、バルセロナにいた19歳の頃で、安いアートシアターでのことだった。


その頃は、これほど世界的な評価を受けているのだから、何か優れたものがあるのだろう、と思いながら見ていたにもかかわらず、ちっともその良さが分からなかった。


しかし今回観て、何と素晴らしい芸術品なのだろうと、初めてその素晴らしさを堪能した。


これは昭和の見事な映像美であり、心に染み入る物語である。


まず映像については、これほど全てを考え尽くされた、構図も、色彩も見事な作品であることには、19歳の私は全く気づかなかった。


本当に何と美しいのだろう!

まさに昭和の美術品のような映像である。

団地の佇まいも、団地の中も、家や料亭の中も、夜の街も、心に染み入る美しさをたたえている。


しかも今見ると、そのレトロな感覚が一層名品を際立たせている。


物語はありきたりといえばそうかもしれない。


しかし19歳の時とは違って、今見ると,登場人物一人ひとりの境遇や、想いや、人生そのものが、見事なまでに全身に伝わってきて、何とも皆が愛おしい。


これだ、これなのだ、と、今回観ながら思った。

これはここに私の拙い筆で物語を書くのは勿体なすぎる。

もしご覧になっていない方がいたら、是非ご覧になってください。


美術品のような映画です。

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